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【裁判事例】1200万円強のAmazonギフト券が無効化 裁判所の判例をもとに解説します

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【裁判事例】1200万円強のAmazonギフト券が無効化 裁判所の判例をもとに解説します

Amazonギフト券は、ちょっとしたプレゼントや景品にも便利で、一度は購入したことがあるという方が多いのではないでしょうか。


しかし、このギフト券の登録してあったアカウントが停止または無効化され、ギフト券残高が使えなくなってしまったという悲しい経験談が時おり聞かれます。


Amazonを相手として、アカウント無効化や消滅したギフト券相当の損害賠償請求、返還請求等が争われた最近の裁判例から、こういった事例で裁判所がどのような判断を下したかを解説します。

Amazonギフト

【事案1】未使用残高分1,200万円強の損害賠償請求(令和2年11月5日東京地裁判決)

概要


Aさんは、Amazonのアカウントを取得・利用していましたが、理由なくアカウント閉鎖措置をとられたとして、アカウントを利用できる地位の確認と、閉鎖により使えなくなってしまった未使用残高分1,200万円強の損害賠償請求を求めました。


Amazon側は、Aさんのアカウント閉鎖措置は利用規約に基づき適法と主張し、ギフト券の有償譲渡取引を許容することは不正取得を助長することになることから、細則でギフト券の再販売その他対価をもって譲渡することを一律に禁止するとともに、不正行為により取得されたギフト券や対価をもって譲渡されたギフト券の使用を制限できること、ギフト券が不正行為により取得された場合にはアカウントを閉鎖することができる旨定めている旨主張しました。


また、クレジット会社からの報告により、Aさんのアカウントにクレジットカードの不正利用により購入されたギフト券が多数登録されていることが判明したから、Aさんがクレジットカードの不正利用者であるか、不正利用者と密接な関係を有するものであることを強く推認させるとの主張もされました。


裁判所の判断

公平な判断

裁判所は、Aさん自身、正規販売店以外からギフト券を購入したことがあり、アカウント残高にも正規販売店以外で購入されたものが含まれていると認めていること等を認定しました。


そして、譲渡禁止規定の趣旨に照らすと、Aさんの行為はAmazonのサイトの適正な運営を阻害する重大なものであるとして、Aさんのアカウントも不正行為により取得されたギフト券に関連する顧客のアカウントとして、細則に基づきAmazonがアカウントの閉鎖をできるとし、閉鎖は不当な措置ではないと、結論としてAさんの請求を棄却しました。


【事案2】未使用残高100万円以上の返還請求(平成30年3月9日東京地裁判決)

概要


Bさんは、Amazonのアカウントを10個以上開設し、Amazonの未承認のギフト券買取販売サイトを利用していましたが、アカウントの停止措置をとられたことから、未使用残高100万円以上をAmazonが法律上の原因なく利得したとして返還を求めました。


Amazon側は、法律上の原因のない利得を争うとともに、Bさんが特価品の購入数量制限に違反して複数アカウントで警告を無視して大量に特価品を購入していたこと、警告の際、関連アカウントを含めたアカウント閉鎖措置とそれによるギフト券の無効化につき通知していたこと、譲渡禁止規定の存在等を主張しました。


裁判所の判断


裁判所は、Amazonギフト券はアカウントに登録されて残高が表示されていても、ギフト券に係る権利又は法的利益を有することを示すものではなく、Amazonからの正規の購入・受取人からの承継が必要だが、Bさんのギフト券につきこの点の来歴は不明であることに加え、Bさんの数量違反によるアカウント閉鎖措置はやむを得ないものとし、請求を棄却しました。


ギフト券がアカウントを通じて行うことが細則で明示されており、返品・返金や登録解除等が認められていないことから、アカウントの停止によりギフト券の喪失を伴うことは了知可能であるとも判示されています。


【解説】規約や細則等に違反すると基本的には救済はない

請求は却下

これらの事例からは、Amazon側の利用規約や細則に沿うアカウントの停止や無効化措置を争い、ギフト券残高分の返還や損害賠償を求める裁判まで行ったとしても、残念ながら請求が認められることというのは難しいとわかります。


Amazonのアカウントにつき停止・無効化措置がなされると、ギフト券はアカウントを通じてのみ利用が可能なものであるため、残高がいくら高額であったとしても残高の使用は事実上不可能となり、このような場合でも未使用残高の返金は受けられなくなります。


この結論だけみると不当とも思えますが、Amazonギフト券は、資金決済に関する法律の適用対象である前払式支払手段(あらかじめお金を支払っておきお買い物などの支払いに使用することができるもの。


商品券や磁気・ICでのプリペイドカード等)にあたり、原則として払い戻しが禁じられている(資金決済法20条5項)こととの兼ね合いで、Amazonのアカウントが閉鎖や利用停止された場合に、たとえば正規購入した分に限り未使用残高の返金に応じるという措置をとった場合、逆に本来受けられないはずの払い戻しが受けられるという資金決済法の潜脱になることを防ぐという趣旨もあるようです。


また、サイト運営者にとっては、多数の人が利用するサイトの適正な運営はなにより不可欠です。


ギフト券が不正取得される可能性を防ぐために譲渡禁止規定や、特価品の購入数量制限を設けることは、真実の権利者からの権利行使によるサイト側の二重負担を避ける、特価品販売を円滑に進めるという重要な目的のもので、このような規約、細則を設け、信頼してもらえる適正な運営をすることは非常に大切なものとなります。


正規に承認されていない転売サイトでのギフト券購入や、複数アカウントによる数量制限を潜脱する購入といった行為は、いずれもインターネット上で簡単に、少しお得だからと深く考えることなく行われがちなものですが、規約や細則等に違反すると基本的には救済を受けることはできません


お得なお買い物はサイト上の規約・細則を守った上で楽しんでいただきたいと思います。(執筆者:弁護士 古賀麻里子)

《古賀 麻里子》
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執筆者:弁護士 古賀 麻里子 古賀 麻里子

東京弁護士会所属。2010年弁護士登録。2019年から東京都品川区にて古賀法律事務所を開業し、中小企業法務、不動産問題、交通事故等の賠償問題を多く扱う。マネーに関わる興味深い裁判例や法律をわかりやすく発信。 <保有資格>弁護士 寄稿者にメッセージを送る

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