遺族厚生年金を受給している人が、自分の老齢厚生年金を受給できるようになった場合

配偶者などのご家族が亡くなってしまったことにより、遺族厚生年金を受給されている方がいらっしゃいます。

その方が、自分の老齢厚生年金を受給できるようになった場合、遺族厚生年金と老齢厚生年金の両方を受給することができるのでしょうか。

今回は、遺族厚生年金を受給している人が、自分の老齢厚生年金を受給できるようになった場合について、詳しく解説していきます。

遺族厚生年金とは

遺族厚生年金とは、厚生年金の被保険者や被保険者であった方で一定の条件を満たした方が死亡した場合に、死亡した方に生計を維持されていた一定の遺族の方が受給できる厚生年金の給付です。

一定の遺族の方とは、優先順位の上位から以下の方になります。

1位：子のある妻

1位：子のある55歳以上の夫

1位：子

2位：子のない妻

2位：子のない55歳以上の夫

3位：55歳以上の父母

4位：孫

5位：55歳以上の祖父母

ここで言う子とは、以下のどちらかの条件を満たす場合です。

・ 18歳になった年度の3月31日までの間にあること

・ 20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級であること

老齢厚生年金とは

老齢厚生年金とは、厚生年金の被保険者期間がある方で、老齢基礎年金の受給資格期間を満たした方が原則65歳になったときに、老齢基礎年金に上乗せして受給できる年金です。

ただし、当分の間は、生年月日によっては65歳前であっても、特別支給の老齢厚生年金を受給できます。

遺族厚生年金を受給している方が、老齢厚生年金を受給できるようになった場合

公的年金では、支給事由（老齢、障害、遺族）が異なる2つ以上の年金を受給できるようになったとしても、一人一年金が原則のため、どちらかの年金を選択しなければなりません。

そのため、遺族厚生年金を受給していた方が、60歳から64歳までの間で特別支給の老齢厚生年金を受給できるようになった場合は、一人一年金の原則によりどちらかの年金を選択する必要があります。

遺族厚生年金を受給していた方が、65歳以降に老齢厚生年金を受給できるようになった場合は、自身の老齢厚生年金を受給することになります。

ただし、今まで受給していた遺族厚生年金が、自身の老齢厚生年金の受給額よりも高い場合は、一人一年金の原則の特例として差額分の遺族厚生年金を受給できるのです。

このことにより、65歳以降もそれまでの遺族厚生年金の受給額が保証されます。

一方、自身の老齢厚生年金の受給額が、遺族厚生年金の受給額よりも高い場合は、遺族厚生年金は全額支給停止になります。

今までの受給額は保証される

このように、遺族厚生年金を受給している方が、65歳以降に老齢厚生年金を受給できるようになった場合は、今までの受給額は保証されます。

60歳から64歳までの間で特別支給の老齢厚生年金を受給できるようになった場合は、どちらかを選択しなければなりませんので、税金も加味してどちらの受給額が高いのかをよく検討する必要があるのです。（執筆者：社会保険労務士、行政書士 小島 章彦）