フリーマーケットアプリのメルカリでは、昨年からメルカリShopsというサービスが開始されています。

メルカリ内にネットショップを開けるサービスで、同一商品に複数の在庫や、色・サイズ等の種類を設定できる、値下げ交渉が不要など、メルカリとは異なる機能が実装されています。

サービス開示から日が浅いこともあり、キャンペーンが頻繁に行われています。

昨年のスタート時には、購入者側への購入額の50%、30%相当のポイントが還元されるキャンペーンが行われ、2022年1月現在は、出店者側に、販売手数料が売上の一定額まで無料とされるキャンペーンが行われているようです。

還元キャンペーン中は、ユーザーがメルカリShopsから購入する可能性は増えますし、手数料無料キャンペーンでもメルカリでかかるはずの手数料分が利益となるため、この機会に出店を検討される方も多いかもしれません。

メルカリShopsでは月々の出店料もかからず、スマホで出品できるメルカリと出品の手間が変わらないことも、出店の心理的なハードルを下げる一因となっています。

しかし、メルカリShopsは、お互いが消費者の個人間取引といういわゆるCtoCの立場ではなく、事業者として購入した個人との取引を行うBtoCの取引とされ、これまで意識する必要はなかった特定商取引法、消費者契約法等の消費者保護規定の適用をはじめ、様々な法律や規制が問題となってきます。

以下で代表的なものを解説します。

メルカリShopsの詳細

メルカリShopsの法律

特定商取引法との関係

特定商取引法では、消費者への適正な情報提供等の観点から、通信販売事業者に氏名(名称)、住所等の表示等を義務付けています(特定商取引法11条)。

メルカリShopを出店する際には、運営者情報として氏名(名称)、住所、電話番号を入力することとなりますが、これら情報は利用者に開示されます(請求があった場合に限りますが、取引関係に入る前でも利用者が求めればメールで開示される運用です)。

メルカリは匿名配送が使え、売主も買主も匿名配送の利用で住所や氏名等のプライバシーが保たれていましたが、メルカリShopsに出店する場合、このようなプライバシーの保護を受けることはできなくなります。

メルカリでの販売であれば、販売者への連絡手段は購入前であれば商品へのコメント機能、購入してからは取引メッセージ機能を通じての連絡しかできず、販売者の氏名、住所、電話番号は、匿名取引を使わず配送がなされた際など、限られた場合にしか伝わることはありませんでした。

メルカリShopsでの出店をした場合、商品に興味がある人から商品内容の問い合わせ、購入者からのクレーム等で電話がかかってくる事態もありうると想定しておく必要があります。

携帯電話番号を登録した場合、SMSでメッセージが送られてくることもあるでしょう。

高額商品でのトラブルが発生し、購入者の満足できる対応をしなかった場合など、登録住所宛に通知書や内容証明等が送られてくるような事態もありえます。

なお、特商法上表示義務のある事項に虚偽の記載をすること、たとえば販売者の住所を実際には業務を行わない場所にしたり、名称や電話番号を偽って記載することは許されません

消費者契約法との関係

プラットフォームを利用しての販売では、購入者との関係を規律するルールを独自に作成することはないため、消費者契約法は、主に、対購入者ではなく対プラットフォーム(メルカリ)との関係で意識すべきものとなります。

これまで消費者としてメルカリを利用している立場であれば受けることができた消費者契約法による保護が受けられなくなるのです。

たとえば、メルカリShopsの加盟店(出店者)利用規約では、アカウント情報の善管注意義務違反、第三者への利用・譲渡等の禁止規定に違反したことで、「アカウント情報が第三者によって不正に利用され、出店者に損害が生じた場合であっても、弊社らは、責任を負わないものとします。」という規定があります。

これに対し、メルカリの利用規約では、アカウント情報の管理義務はユーザーに課されていますが、「アカウント情報の管理不十分による情報の漏洩、使用上の過誤、第三者の使用、不正アクセス等による損害の責任はユーザーが負うものとし、弊社の故意又は過失に起因する場合を除き、弊社は責任を負わないものとします。」と一定の場合には、メルカリ社も責任を負う旨の規定となっています。

これは、事業者の損害賠償の責任を免除する条項等の無効(消費者契約法8条)によるものです。

損害賠償の範囲についても異なる規定があります。

メルカリShopsでは、出店者とユーザー、第三者との間で生じた紛争に起因して、メルカリ社・ソウゾウ社(メルカリにおける新規事業の企画・開発・運営を担うグループ会社で、メルカリShopsの運営者)がユーザーその他の第三者に損害賠償義務を負う場合には、

「出店者はその全額を支払うとともに、その解決のために要した弁護士費用その他一切の諸経費を支払うものとします」

賠償範囲が幅広く定められた条項があります。

これに対し、メルカリの利用規約では、ユーザーと第三者間で生じた紛争について、「当該紛争がユーザーの故意又は過失に起因して生じた場合には、ユーザーは、当該紛争により弊社(メルカリ社)に生じた損害を連帯して賠償するものとします。」とユーザーの故意又は過失が要件として追加され、賠償範囲もいわゆる相当因果関係のものと限定された規定となっています。

景品表示法との関係

不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)との関係も問題となります。

「景品表示法の景品規制に違反する行為」は禁止され、商品におまけをつけるといった場合、景品表示法で許される範囲を超える額の景品をつけて商品を販売するようなことのないよう留意する必要があります。

オマケも気を付けて

その他の規制

メルカリShopsに出店する以上、仕入れた古着、古本、中古CD・DVD・レコード、中古自動車、骨董・古美術品等の中古品(古物)を販売する場合、事業として反復継続して行うことが推定されることから、古物商許可を取得しておく必要もでてきます。

他にも、細かいことですが、利用規約でメルカリではない禁止事項が設けられている部分もあります。

たとえば、メルカリShopsの禁止事項は一部メルカリShopsガイドに委ねられているところ、このメルカリShopsガイドでは、「他通販サイトや他社の商標、ロゴ等の利用」も禁止されており、具体例として、他通販サイトの商標、ロゴ等が表示された箱などをメルカリShops商品の発送に使用することが挙げられています。

他通販サイトの商標、ロゴ等が表示された箱をエコの観点から梱包材として再利用して発送することは、メルカリでは比較的よくされていますが、メルカリShopsの商品を発送する場合、これはできないということになります。

メルカリShopsの出店では、売り上げや利益が上がる可能性はありますが、注意すべき法律や規制も多くなります

これらに留意したうえ、従来通りメルカリでの取引にとどめるか、メルカリShopsに出店するのかは、ご自身の利用実態に即してご検討してください。(執筆者:弁護士 古賀麻里子)