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「医療費控除」よりも「高額療養費」を優先した方が良い3つの理由

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「医療費控除」よりも「高額療養費」を優先した方が良い3つの理由

会社員の給与に課税される所得税を算出する時の、大まかな手順を紹介すると、まずは次のような計算式で「給与所得」を算出します。

(A) 1~12月に勤務先の会社から支払われた給与(月給、賞与)の合計額-給与所得控除額=給与所得

一方で老齢年金(老齢基礎年金、老齢厚生年金など)に課税される所得税を算出する時の、大まかな手順を紹介すると、まずは次のような計算式で「公的年金等に係る雑所得」を算出します。

(A) 1~12月に日本年金機構などから支払われた老齢年金(年金で支払われたiDeCoの老齢給付金なども含める)の合計額-公的年金等控除額=公的年金等に係る雑所得

※遺族年金(遺族基礎年金、寡婦年金、遺族厚生年金など)や、障害年金(障害基礎年金、障害厚生年金など)は非課税になるため、これらの金額を計算の中に含める必要はありません。

この後はどちらの所得であっても、(B) → (C) という順番で所得税を算出するのです。

(B) 給与所得(または公的年金等に係る雑所得)-所得控除(配偶者控除、扶養控除、医療費控除、雑損控除など)の合計額=課税所得

※「給与所得」と「公的年金等に係る雑所得」の両者がある方は、これらを合計した金額から、「所得控除の合計額」を差し引きます。

(C) 課税所得×税率(課税所得に応じて5~45%)-税額控除(住宅ローン控除など)の合計額=所得税

「医療費控除」よりも 「高額療養費」を 優先した方が良い理由

所得税の確定申告が必要になるケース

給与や老齢年金の金額がまったく同じでも、課税される所得税が違ってくるのは、(B) に記載した所得控除の影響が大きいのです。

例えば扶養する親族がいる方は、「配偶者控除」や「扶養控除」によって課税される所得税が安くなるのです。

これらの所得控除を受けたい場合、会社員であれば勤務先の会社に対して、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出します。

また老齢年金の受給者であれば日本年金機構などに対して、「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」を提出します。

一方で「医療費控除」や「雑損控除」によって、所得税の還付を受けたい場合には、会社員と老齢年金の受給者のいずれであっても、所得税の確定申告が必要になるのです。

前者の「医療費控除」の金額は、次のような計算式で算出しますが、各種の所得から控除できる金額には、200万円という上限があります。

(1~12月に支払った医療費の合計額-保険金などで補填された金額)-10万円

また控除を受ける年の総所得(「給与所得」や「公的年金等に係る雑所得」などの合計額)が、200万円未満という方の場合、10万円ではなく総所得の5%を控除します。

自己負担限度額を超えた分が「高額療養費」として還付される

70歳未満の公的医療保険(健康保険、国民健康保険など)の加入者が、医療機関で診療を受けた時の自己負担の割合は、原則として3割(義務教育就学前は2割)になります。

ただ1か月(1日~月末)あたりの自己負担が高額になり、一定の上限額(自己負担限度額)を超えた場合、所定の申請手続きをすると、その超えた部分が「高額療養費」として、後日に還付されるのです。

この自己負担限度額は年齢や収入によって変わりますが、公的医療保険の加入者が70歳未満の場合には、次のような金額になります。


≪画像元:厚生労働省保険局(pdf)≫

例えば「年収約370~約770万円」の方が入院して手術を受け、100万円の医療費がかかった場合、自己負担限度額は「8万100円+(医療費:100万円-26万7,000円)×1%」により、8万7,430円になるのです。

そのため医療機関の窓口に、30万円(100万円の医療費の3割分)を支払っている場合には、「30万円-8万7,430円」により、21万2,570円が「高額療養費」として還付されるのです。

ただ次のようなケースでは医療機関の窓口に対して、自己負担限度額の8万7,430円だけを支払えば良いので、後日に還付を受ける必要はありません。

入院する前に申請して、「限度額適用認定証」の交付を受けた場合

・ 健康保険証の登録を済ませたマイナンバーカードを持っている方が、それを使える病院に入院した場合

なお「医療費控除」を受ける時は、生計を一にする配偶者や、その他の親族のために支払った医療費を合算できます。

これと同様に「高額療養費」でも、同じ世帯に属する親族(同じ公的医療保険に加入している方に限る)の医療費を、合算できる場合があります。

また同一月の異なる医療機関の医療費を合算したり、同じ医療機関の入院と外来の医療費を合算したりすることも、可能になる場合があります。

こういった合算によって医療費の自己負担が、自己負担限度額を超えた場合にも、所定の申請手続きをすると、後日に還付されるのです。

その他に「高額療養費」による還付を受けた月が、1年間に4回以上ある場合には、「多数回該当」という制度により、自己負担限度額が引き下げられるため、最終的な医療費の自己負担は更に軽くなります。

「高額療養費」を優先した方が良い3つの理由

「医療費控除」と「高額療養費」は家計の役に立つため、どちらも忘れずに手続きしたいところです。

ただ次のような3つの理由により、「医療費控除」よりも「高額療養費」を優先した方が良いのです。

(1) 「高額療養費」の方が手続きできる期間が短い

年末調整を受けた会社員や、確定申告不要制度が適用される老齢年金の受給者が、「医療費控除」によって所得税の還付を受ける場合、医療費を支払った年の翌年の1月1日から5年が、手続きの期限になります。

一方で「高額療養費」は診療を受けた月の翌月の1日から2年が、手続きの期限になります。

このように「高額療養費」の方が、手続きできる期間が短いため、「医療費控除」よりも「高額療養費」を優先した方が良いのです。

(2) 「医療費控除」の金額を間違ってしまう場合がある

「医療費控除」の金額を算出する時は上記のように、1~12月に支払った医療費の合計額から、保険金などで補填された金額を差し引きます。

また「高額療養費」として還付された金額は、保険金などで補填された金額の中に含める必要があります

そのため「医療費控除」を受けた後に、「高額療養費」によって還付を受けると、「医療費控除」の金額が間違ってしまう場合があるため、「高額療養費」を優先した方が良いのです。

「高額療養費」を優先した方が良い

(3) 「高額療養費」は還付される金額が多くなりやすい

「医療費控除」は所得控除のひとつになるため、上記のような計算式で算出した金額が、そのまま還付されるわけではありません。

また収入が少ないため、所得税の税率が低い方は、所得税の税率が高い方より、還付される金額が少なくなってしまうのです。

一方で「高額療養費」は自己負担限度額を超えた分が、そのまま還付されるだけでなく、公的医療保険の加入者の収入が少ない方が、自己負担限度額が低く設定されているため、還付される金額が多くなります。

こういった仕組みになっているため、「医療費控除」よりも「高額療養費」を優先した方が良いのです。(執筆者:社会保険労務士 木村 公司)

《木村 公司》
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執筆者:社会保険労務士 木村 公司 木村 公司

1975年生まれ。大学卒業後地元のドラッグストアーのチェーン店に就職。その時に薬剤師や社会福祉士の同僚から、資格を活用して働くことの意義を学び、一念発起して社会保険労務士の資格を取得。その後は社会保険労務士事務所や一般企業の人事総務部に転職して、給与計算や社会保険事務の実務を学ぶ。現在は自分年金評論家の「FPきむ」として、年金や保険などをテーマした執筆活動を行なう。 【保有資格】社会保険労務士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、DCプランナー2級、年金アドバイザー2級、証券外務員二種、ビジネス実務法務検定2級、メンタルヘルス・マネジメント検定Ⅱ種 寄稿者にメッセージを送る

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