多くの人は「銀行に預けておけば大丈夫」と思っています。

自分名義の口座に預けておけば、好きなときに好きなだけおろして使うことができるとも思っているかもしれません。

しかし、自分名義の口座や自分が堂々と使えるはずの口座であっても、ある日突然預金がおろせなくなることがあるのです。

今回は、「預金がおろせない理由」と「対応策」についてお話しします。

「預金がおろせない理由」 と「対応策」

例え配偶者や親の口座であっても故人名義の預金はおろせない

これは、筆者が銀行で実際に目にしたことです。

銀行の窓口で、60代の男性が通帳を持って窓口担当者ともめていました。

耳をすませてみると、客である男性は「僕がこの場で正直に言わなければよかったということ? それは変だよね」と言っています。

筆者はピンときました。

この男性は、自分の親が亡くなり親の口座からお金を引き出そうとしたのです。

そのときに、窓口担当者が本人確認を行い、口座名義人と窓口に来ている人が一致しないことに気がついたのです。

最近の銀行はとても厳しく、例え本人名義の口座であっても一定金額以上の預金を引き出すときには窓口で自動車免許証などを使って本人確認をします。

口座名義人と窓口に来ている人が違う場合は、もちろん理由を聞きます。

そこで男性は「この口座名義には私の親ですが、亡くなったため私がおろしにきました」と言ったのでしょう。

「口座名義人が亡くなった」と聞いた段階で、銀行はその口座を凍結します。

銀行が故人の口座を凍結する理由は、故人であっても口座名義人の財産を守り、正当な相続人に引き継がせるためです。

例え、配偶者や子どもたちであっても正式な手続きを踏むまでは口座は凍結されます。

窓口に来ていた男性が「正直に言わなければよかったのですか」と質問していました。

窓口担当者は、ただひたすら「申し訳ありません」と答えるだけでした。

ここまでの話を聞くと「それなら黙って故人になりすましておろしてしまえばいい」と思うかもしれません。

年齢や顔が似ている親族がいれば「なりすまし」は可能かもしれません。

しかし、相続人の中で「何かが変だ」と思う人がいた場合は大変です。

実は、各相続人(財産を相続する人)は他の相続人に相談なしで被相続人(故人)の預金口座の入出金履歴をみることができます。

「なりすまし」で銀行からお金をおろせたとしても、その後に不正に引き出しをしたことが発覚したときには大きなトラブルになるでしょう。

口座名義人が亡くなったときには、相続人を探し出し遺産分割協議書(実印押印)を作成し、被相続人の生まれたときから最後までの戸籍謄本や除籍謄本や改製原戸籍謄本、被相続人が最後に住んでいた住民票、相続人全員の戸籍謄本と住民票、を用意して銀行に提出します。

遺産分割協議書に使用した印の印鑑証明も必要です。もしも遺言書があれば、遺言書に従います。

故人名義の口座は凍結されますが、きちんと手続きを行えば引き出すことができるようになります。

払うべきものを払っていないと自分名義の口座でもお金はおろせない

自分名義の口座であるにもかかわらず、お金がおろせなくなることもあります。

例えば、払うべきお金を払っていなかったときには「差押」でおろせなくなるのです。

差押といえば「税金や住民税の不払い」をイメージするかもしれません。

しかし、意外と多い差押が「養育費の未払い」です。養育費の未払いが大きな問題としてニュースで取り上げられています。

養育費の未払いで子どもが困ることがないように「差押」があるのです。

養育費の未払いにより強制執行が行われれば、銀行口座だけでなく給与も差し押さえられる可能性が高いです。

昔は、差し押さえる銀行口座がわからなければ強制執行ができませんでしたが、法改正によって口座がわからなくても調べることができるようになりました。

つまり、税金や養育費のように「払うべきお金」を支払っていない場合は、自分名義の口座であってもお金がおろせなくなるのです。

払うべきお金の未払いで一度でも口座が差押されてしまうと、お金がおろせないだけでなく社会的にもマイナスの影響が大きくなります。

とくに養育費の未払いは、給与も同時に差し押さえられることがほとんどのため、会社にも居づらくなるでしょう

対応策は「払うべきお金はきちんと払う」ということしかありません。

一度に引き出す金額が大きいとおろせない可能性大

これも筆者の実体験です。

筆者の親が人ごみを避けるために、当面の生活費として100万円をまとめておろしに銀行に行きました。

窓口で手続きをしていると「100万円を引き出す目的は」と聞かれたそうです。

「とくに決まっていないです」と答えたところ、窓口担当者の顔色が変わり「このお金を引き出してどうするつもりですか」「少しずつおろしたらどうですか」と言われました。

つい親は「自分のお金を何に使おうが勝手でしょ」と思い、「とにかく100万円をおろしたい」と言ってしまったのです。

しばらく窓口担当者と押し問答になり、ついには警察が呼ばれてしまいました。

親は急に怖くなり、銀行から筆者に電話をしてきたのです。

電話の向こうからは、おびえた親の声と警察の声が聞こえ、まもなく警察が電話を変わりました。

筆者は警察から「あなたは誰ですか」と聞かれ「娘です」と答えました。

すると「多額のお金を引き出そうということで我々は来ています。あなたはどこに住んでいる人ですか」と強い口調で再び質問されました。

筆者は「私を振り込め詐欺師だと疑っている」と感じ、怒りが込み上げてきました。

つい「銀行の窓口で高齢者を目の前にして多額のお金を引き出そうとしていると大きな声で話す方が危険でしょ」と言いました。

続けて「場所を選んで話をしてください」とも言ってしまったのです。

警察の方も、あまりの迫力に「これは本当の娘だ」と信じてくれたようです。

結局、お金をおろして警察に守られながら帰宅することができました。

その後、筆者も同じような経験をしました。

警察を呼ばれることはありませんでしたが、使用目的をこまかく聞かれました。

銀行の立場になれば、あとから「どうしてあのときに気がつかなかった」と責められることがないように念には念を入れているのでしょう。

むしろ、簡単に多額の現金をポンポン出してくれる銀行の方が心配なのかもしれません。

対応策は、やはり必要なときに適度な金額をおろして使うことではないでしょうか。

銀行の預金がおろせない理由には根拠があります。

故人名義の口座からお金がおろせなくなる理由は、故人の財産を守るためです。

口座が差し押さえられてお金がおろせなくなる理由は、払うべき義務を果たさせるためです。

そして自分の口座から多額のお金がおろせない理由は、その人のお金を守るためです。

理由と対応策を知り、正しい方法でお金を守っていきましょう。(執筆者:クリエイティブな節約家 式部 順子)