「不動産を個人間売買により取得しましたが、売主が売却利益を申告するとは考えにくいです。無申告の場合、税務署は税務調査を実施するのでしょうか?」

とのご質問をいただきましたので、今回は税務署が不動産売買に関する情報を把握する手段について解説します。

読者の質問に回答

不動産業者から提出される法定調書による情報収取

不動産を購入または不動産売買の仲介手数料を受け取った業者は、税務署に対して法定調書を提出することとなっています。

法定調書とは所得税などの法律により提出が義務付けられている書類をいい、たとえば不動産を購入した業者は、法定調書に不動産の住所・数量・金額、相手方の住所・氏名等を記載しなければなりません。

法定調書は提出義務のある書類なので、業者に対して売却した場合や、仲介業者を介して売却した不動産に関する情報は税務署が把握できるような仕組みになっています

法務局に不動産登記情報の照会を行う

偶発・突発的に発生した所得は申告漏れとなりやすく、不動産の売却に対する譲渡所得税は無申告となることが多いです。

個人間売買であれば法定調書から不動産の売却情報を把握できないことも考えられますが、不動産は登記名義の変更をしなければいけないため、税務署は法務局に登記照会を行うことで売買事実を把握することができます。

不動産の売却を申告しなかった場合の税務署の対応

不動産の譲渡所得が無申告の場合でも、すぐに調査担当者が自宅に訪れて税務調査を行うことは少なく、最初は売買事実を確認するために「お尋ね書」を送付してきます。

「お尋ね書」とは不動産売買に関する内容を確認する書類であり、お尋ね書への回答は義務ではありません。

しかしお尋ね書への返答がなく、譲渡所得税の発生する見込みが高い納税者に対して来署依頼をすることもあります

無申告に対する来署依頼は「実地調査以外の調査」として行われることがあり、実地調査以外の調査も税務調査の一つですので、一般的な税務調査と同様に加算税・延滞税が発生するためご注意ください。

不動産を売却しても申告不要になるケース

不動産を売却した際に対象となる譲渡所得税は、利益に対して課される税金なので、不動産を購入した金額より売却金額の方が高い場合には赤字となり、譲渡所得税は発生しません

ただ売却不動産に建物が含まれている際は、減価償却費相当額を取得費から控除する計算が必要になりますし、自宅を売却した際に適用できる「3,000万円特別控除の特例」は申告手続きを行うことが要件の一つとなっています。

不動産の売却金額は高額なので納める税金も多くなる可能性は高く、無申告の状態で税務署から指摘を受けた場合、多額の加算税・延滞税を支払うことになりかねません。

そのため不動産を売却した際は売却利益が発生しているか確認し、申告が必要となる場合には期限までに手続きを済ませてください。(執筆者:元税務署職員 平井 拓)