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年金生活者支援給付金の受給者が「医療費の負担」を軽減するための手続き

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年金生活者支援給付金の受給者が「医療費の負担」を軽減するための手続き

新年度が始まる4月になると、次のような3種類の公的年金は、賃金や物価の変動率を元にして、年金額を改定します。


・老齢基礎年金、老齢厚生年金などの「老齢年金」

・障害基礎年金、障害厚生年金などの「障害年金」

・遺族基礎年金、遺族厚生年金などの「遺族年金」

こういった年に1回の定期的な改定によって、公的年金の実質的な価値を維持しているのです。


ただ3種類の公的年金は原則として、偶数月(2月、4月、6月、8月、10月、12月)の15日に、2か月分が支給されます。


そのため年金額が変わったことに気が付くのは、4月分と5月分の公的年金が支給される、6月という場合が多いのではないかと思います。


また6月上旬に日本年金機構から、「年金額改定通知書・年金振込通知書」が送付された後に、気が付く方もいると思います。

医療費の負担を軽減する

2022年度の年金額は前年度より0.4%少なくなる

3種類の公的年金のうち、原則として65歳から支給される老齢年金については、次のようなルールで年金額を改定するのです。


67歳以下の新規裁定者(賃金の変動率)】

過去3年度における賃金の変動率の平均を算出し、これが上昇(下降)した分だけ、前年度より老齢年金を増やしたり、減らしたりします。


68歳以上の既裁定者(物価の変動率)】

総務省から1月頃に発表される、前年の全国消費者物価指数が上昇(下降)した分だけ、前年度より老齢年金を増やしたり、減らしたりします。


以上のようになりますが、2022年度は賃金の変動率が-0.4%、物価の変動率が-0.2%だったため、既裁定者の方が少しだけ有利になりそうな感じがします。


しかし賃金の変動率と物価の変動率がどちらもマイナスで、賃金の変動率(-0.4%)が、物価の変動率(-0.2%)を下回る場合は例外的に、新規裁定者と既裁定者の両者について、賃金の変動率で改定するのです。


こういったルールのため、2022年度に支給される老齢年金は、新規裁定者と既裁定者の両者について、前年度より0.4%少なくなります


なおマイナスの改定になったため、賃金や物価の変動率から、スライド調整率(現役人口の減少や平均余命の伸びを元に算出)を控除するマクロ経済スライドは、2022年度は発動されませんでした。


そのため2022年度のスライド調整率である-0.3%は、翌年度以降に繰り越しになったため、賃金や物価の変動率がプラスになった年度に、控除されることになります。

基礎年金に上乗せされる「年金生活者支援給付金」


公的年金の金額が少なくなると不安を感じますが、低所得の年金受給者の生活を支援するために、年金生活者支援給付金が支給されるので、支給要件を満たす方は、漏れなく請求したいところです。


また年金生活者支援給付金は「老齢基礎年金、障害基礎年金、遺族基礎年金」という3種類の基礎年金に上乗せされますが、老齢基礎年金に上乗せされる老齢年金生活者支援給付金の支給要件は、次のような3つになります。


165歳以上で老齢基礎年金を受給している

例えば繰上げ受給を選択し、老齢基礎年金の受給を60歳~65歳未満の間に始めた方は、65歳まで待つ必要があります。


2)世帯全員の市町村民税が非課税である

収入が老齢年金だけの65歳以上の単身者については、「前年の老齢年金の合計が155万円以下」というのが、市町村民税が非課税になる目安額です。


また収入が老齢年金だけの、扶養する配偶者がいる65歳以上の方については、「前年の老齢年金の合計が211万円以下」というのが、市町村民税が非課税になる目安額です。


そのため収入が老齢年金だけの、65歳以上の夫婦2人世帯で、夫が妻を扶養している場合、次のような2つの条件に当てはまると、(2)の支給要件を満たします。


夫:前年の老齢年金の合計が211万円以下

妻:前年の老齢年金の合計が155万円以下

3)前年の年金収入と他の所得の合計が881,200円以下である

障害年金や遺族年金などの非課税収入は、前年の年金収入の中に含める必要はありません。


以上のようになりますが、老齢年金生活者支援給付金として支給される金額は、月額5,020円(2022年度)を基準にして、国民年金の保険料を納付した月数や、免除を受けた月数などで決まります。


このように金額が少ない点はデメリットですが、支給要件を満たしている間は継続的に支給されるため、一時的な支援策ではないという点は、メリットではないかと思うのです。

住民税非課税世帯は自己負担の上限額が低くなる


公的医療保険(健康保険、国民健康保険など)に加入している70歳~75歳未満の方が、医療機関で診療を受けた時の自己負担は、3割になる現役並み所得者を除き、原則として2割になります。


また後期高齢者医療に加入している75歳以上の方が、医療機関で診療を受けた時の自己負担は、3割になる現役並み所得者や、202210月から2割になる一定の所得がある方を除き、原則として1割になります。


ただ70歳以上に該当する方の、1か月あたりの自己負担が高額になり、次のような表の右側にある、「ひと月の上限額(世帯ごと)」を超えた場合には、高額療養費が支給されるため、この金額までを支払えば良いのです。

70歳以上の上限額

≪画像元:厚生労働省保険局(pdf)≫


例えば「一般」の適用区分に該当する方が、入院して手術を受けた場合、1か月あたりの自己負担の上限額は、5万7,600円になります。


また老齢年金生活者支援給付金を受給できる、世帯全員の市町村民税が非課税の世帯に属する方は、「住民税非課税世帯」の適用区分に該当するため、1か月あたりの自己負担の上限は、24,600円か15,000になります。


ただ「住民税非課税世帯」の適用区分に該当する方でも、事前に「限度額適用・標準負担額減額認定証」の交付を受け、これを医療機関の窓口に提示しないと、「一般」の適用区分に該当する方と、同じ上限額になってしまうのです。


また入院時の食事や生活に要する費用についても、「住民税非課税世帯」の適用区分に該当する方は負担が少ないのですが、認定証の提示がなければ「一般」の適用区分に該当する方と、同じ負担になってしまうのです。


そのため老齢年金生活者支援給付金の受給者が、入院時の医療費などの負担を軽減したい時は、入院する前に「限度額適用・標準負担額減額認定証」の交付を受けるための手続きを、市区町村の窓口などで実施した方が良いのです。


もし手続きを忘れた場合には、後で所定の申請をすると、「一般」と「住民税非課税世帯」の差額の還付を受けられますが、入院時の食事や生活に要する費用の還付は、原則として受けられません。


なお障害基礎年金に上乗せされる障害年金生活者支援給付金や、遺族基礎年金に上乗せされる遺族年金生活者支援給付金の受給者も、「住民税非課税世帯」の適用区分に該当すれば、同じような優遇を受けられます。(執筆者:社会保険労務士 木村 公司)

《木村 公司》
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執筆者:社会保険労務士 木村 公司 木村 公司

1975年生まれ。大学卒業後地元のドラッグストアーのチェーン店に就職。その時に薬剤師や社会福祉士の同僚から、資格を活用して働くことの意義を学び、一念発起して社会保険労務士の資格を取得。その後は社会保険労務士事務所や一般企業の人事総務部に転職して、給与計算や社会保険事務の実務を学ぶ。現在は自分年金評論家の「FPきむ」として、年金や保険などをテーマした執筆活動を行なう。 【保有資格】社会保険労務士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、DCプランナー2級、年金アドバイザー2級、証券外務員二種、ビジネス実務法務検定2級、メンタルヘルス・マネジメント検定Ⅱ種 寄稿者にメッセージを送る

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