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「税方式の年金」と「積立方式の年金」を、収入に合わせて使い分けよう

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「税方式の年金」と「積立方式の年金」を、収入に合わせて使い分けよう

賃金が多いほど徴収額が増える厚生年金保険の保険料、賃金や物価の変動率で金額を改定する国民年金の保険料を、現役世代の方が納付すると、その大部分は現在の年金受給者に対して、年金として配分されます。

こういった年金支給に必要となる財源を、その時々の現役世代が納付した保険料で賄う仕組みは、賦課方式と呼ばれております。

一方で納付した保険料を積立しておき、老後を迎えた時に積立金と、その運用益を受け取る仕組みは、積立方式と呼ばれており、年金制度が始まったばかりの日本は、こちらを採用しておりました。

前者の賦課方式を採用している場合、例えばインフレ(継続的な物価上昇)の影響で現役世代の賃金が全体的に上昇すると、その分だけ年金のために使える財源が増えるため、物価上昇に応じて年金額を増やせるのです。

しかし現在の日本のように少子高齢化が進むと、年金財政のバランスをとるために、現役世代の保険料の負担を増やしたり、年金額を減らしたりする必要があるのです。

また当面は年金額を少しずつ減らして、年金財政のバランスをとっていく方針なので、若い世代の方は現在の年金受給者より、受給できる年金が少なくなります。

2021年9月に実施された自民党の総裁選挙に立候補した河野太郎氏は、このようなデメリットを解消するため、次のような公的年金の二階部分を、積立方式の所得比例年金に移行する案を主張しました。

・二階部分:厚生年金保険の加入者に支給される「老齢厚生年金」

・一階部分:全国民共通の国民年金から支給される「老齢基礎年金」

これに加えて河野氏は公的年金の一階部分を、税方式(税金を財源にする)の最低保障年金に移行する案を、主張していたと思います。

最終的に河野氏は新総裁に選ばれなかったので、両者の案は幻に終わりましたが、既存の制度の一部に税方式と積立方式の年金があるため、これらを利用することはできるのです。

年金を使い分ける


老齢基礎年金は40年(480月)の納付で満額になる

20歳以上60歳未満の方は国民年金に加入し、この保険料を納付しなければなりません。

ただ賃金から控除されている厚生年金保険の保険料の一部は、国民年金の保険料として使用されているのです。

そのため厚生年金保険に加入している、20歳以上60歳未満の会社員や公務員は、各自が国民年金の保険料を納付しなくても、納付したという取り扱いになります。

また会社員や公務員に扶養されている、年収130万円未満の20歳以上60歳未満の配偶者も、所定の届出によって第3号被保険者になると、各自が国民年金の保険料を納付しなくても、納付したという取り扱いになります。

もし20歳以上60歳未満の間に、国民年金の保険料の未納期間が1月もなかった場合、2022年度額で77万7,800円(月額だと6万4,816円)となる、満額の老齢基礎年金を受給できます。

このように国民年金の保険料を40年(480月)納付すると、満額を受給できるため、未納期間が1月増えるごとに、1,620円(77万7,800円÷480月)くらい、老齢基礎年金が減額されるのです。

納付猶予や学生納付特例の期間は税方式ではない

国民年金の保険料を自分で納付する、自営業者、フリーランス、農林漁業者、無職者などが、所定の申請によって全額免除を受けると、1月あたりの老齢基礎年金の減額は、810円(1,620円÷2)くらいで済みます。

この理由として老齢基礎年金の税源の2分の1は税金であり、かつ全額免除を受けた場合は未納と違って、税金が投入されるからです。

つまり老齢基礎年金は完全な税方式ではないのですが、半分は税方式なのです。

国民年金の免除には全額免除の他に、4分の3免除、半額免除、4分の1免除があり、これらを受けた時の老齢基礎年金に対する反映は、次のような割合になります。

・4分の3免除:国民年金の保険料を全額納付した場合の「8分の5」

・半額免除:国民年金の保険料を全額納付した場合の「8分の6」

・4分の1:国民年金の保険料を全額納付した場合の「8分の7」

また各種の免除を受けられる、前年の所得の目安(括弧内は勤務先から給与を得ている方の年収の目安)は、次のような金額になります。

令和4年度免除となる所得の目安

≪画像元:札幌市「免除等の種類」≫

例えば一人暮らしで、扶養者がいないフリーターの場合、年収が251万円以下くらいであれば、いずれかの免除を受けられる可能性があるのです。

なお50歳未満の方が、審査を受けたくない免除などを指定しないで、免除申請を行った場合には、「全額免除→納付猶予→4分の3免除→半額免除→4分の1免除」という順番で、審査が実施されます。

この中の納付猶予を受けた期間や、学生納付特例を受けた期間は、税方式ではない、つまり税金の投入がないため、老齢基礎年金の金額に全く反映されないのです。

そのため老齢基礎年金を満額に近付けるために、10年以内に追納を実施するなら、納付猶予や学生納付特例を受けた期間を、優先した方が良いのです。

積立方式のiDeCoは公的年金の弱点を補える

既存の制度の中にある、積立方式の年金の代表的なものは、iDeCo(個人型の確定拠出年金)になると思います。

2017年1月から加入資格が拡大されたため、公的年金に加入している60歳未満の方であれば、国民年金の保険料の納付を免除された方などの一部を除いて、誰でも加入できるようになりました。

これに加えて2022年5月からは、厚生年金保険に加入している方や、国民年金に任意加入している方であれば、65歳まで加入できるようになりました。

実際にiDeCoに加入すると、掛金の拠出によって税金が安くなる、または掛金の運用益が非課税になるといった、税制上の優遇を受けられます。

また積立方式のiDeCoは、少子高齢化の影響を受けにくいので、賦課方式のため少子高齢化の影響を受けやすいという、公的年金の弱点を補えるのです。

ただiDeCoの掛金を運用する商品に、定期預金などの元本確保型商品ばかりを選んでいる場合は特に、インフレによって積立金の価値が目減りする可能性があります。

そのため「100-自分の年齢」くらいの割合を目安にして、株式やREIT(不動産投資信託)が組み入れられた投資信託を、選んだ方が良いと思います。

収入に合わせて税方式と積立方式の年金を使い分ける

国民年金の各種の免除を受けられる所得の範囲は、上記のようになっているため、かなりの所得があったとしても、何らかの免除を受けられる可能性があります。

また納付猶予や学生納付特例以外の免除であれば、老齢基礎年金の減額を抑えられるので、収入が減った時には半分が税方式の老齢基礎年金を、上手く利用した方が良いのです。

一方で収入が増えた時には、公的年金の弱点を補ってくれるiDeCoを、利用した方が良いと思います。

iDeCoの掛金は年末調整や確定申告の際に、小規模企業共済等掛金控除として所得から控除できるため、収入が多くて所得税の税率が高い方ほど、節税効果が高くなります。

ただiDeCoの積立金は、脱退一時金の受給要件を満たしている、所定の障害状態になった、死亡したなどの理由がない限り、最低でも60歳になるまでは引き出せないのです。

そのため60歳になるまでに必要となる資金を貯める時は、つみたてNISAや勤務先の財形貯蓄など、税制優遇のある他の積立制度を利用した方が良いと思います。(執筆者:社会保険労務士 木村 公司)

《木村 公司》
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執筆者:社会保険労務士 木村 公司 木村 公司

1975年生まれ。大学卒業後地元のドラッグストアーのチェーン店に就職。その時に薬剤師や社会福祉士の同僚から、資格を活用して働くことの意義を学び、一念発起して社会保険労務士の資格を取得。その後は社会保険労務士事務所や一般企業の人事総務部に転職して、給与計算や社会保険事務の実務を学ぶ。現在は自分年金評論家の「FPきむ」として、年金や保険などをテーマした執筆活動を行なう。 【保有資格】社会保険労務士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、DCプランナー2級、年金アドバイザー2級、証券外務員二種、ビジネス実務法務検定2級、メンタルヘルス・マネジメント検定Ⅱ種 寄稿者にメッセージを送る

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