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年金を守るために「次の誕生月まで」は賞与の明細書を保管しておこう

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年金を守るために「次の誕生月まで」は賞与の明細書を保管しておこう

求人票などに社会保険完備と記載されている場合の社会保険とは、「労災保険、雇用保険、健康保険、厚生年金保険」の4つを、示している場合が多いようです。

これらの加入要件を満たしている場合、勤務先が全額を負担する労災保険以外の保険料が、月給や賞与から控除されていると思います。

保険料を負担に感じる方がいるかもしれませんが、社会保険に加入していると、病気やケガになった時、高齢になった時などに、未加入者より手厚い保険給付が支給されるのです。

例えば公的年金(厚生年金保険、国民年金)の保険料の納付済期間や、国民年金の保険料の免除期間などを合わせた期間が、原則10年以上ある場合、65歳になると国民年金から老齢基礎年金が支給されます。

ずっと国民年金に加入していた方の場合、この老齢基礎年金のみになりますが、厚生年金保険に加入した期間が1か月以上ある方には、老齢基礎年金の上乗せとなる老齢厚生年金が、厚生年金保険から支給されます。

後者の老齢厚生年金の金額は、勤務先から受け取った月給や賞与の平均額と、厚生年金保険に加入した期間(月数)で決まるのです。

例えば月給が20万円で、賞与は受け取っていない方が、厚生年金保険に12か月加入した時に支給される老齢厚生年金の目安は、次のような金額になります。

20万円×5.481/1,000×12か月=1万3,154円

一方で15万円の月給に加えて、30万円の賞与を年2回受け取った方が、厚生年金保険に12か月加入した時に支給される老齢厚生年金の目安は、次のような金額になります。

・ 15万円×12か月+30万円×年2回=240万円

・ 240万円÷12か月=20万円

・ 20万円×5.481/1,000×12か月=1万3,154円

このように月給と賞与の金額にかかわらず、年収が同じ(どちらも240万円)であれば、支給される老齢厚生年金も同じになるため、月給だけでなく賞与も大切なのです。

次の誕生月までは 賞与の明細書を 保管しておこう

退職する時は社会保険によって取り扱いが変わる

賞与から徴収される厚生年金保険の保険料は、「賞与の金額×9.15/100」で算出するのです。

例えば賞与の金額が30万円だった場合、厚生年金保険の保険料は2万7,450円(30万円×9.15/100)になります。

注意点としては計算する時に、1,000円未満を切り捨てるため、例えば賞与の金額が31万2,500円だった場合、厚生年金保険の保険料は2万8,548円(31万2,000円×9.15/100)になります。

また賞与の金額には「1か月あたり150万円」という上限があるため、例えば賞与の金額が200万円だったとしても、厚生年金保険の保険料は13万7,250円(150万円×9.15/100)で済むのです。

健康保険や厚生年金保険の保険料が徴収されるのは一般的に、これらの資格喪失日(原則として退職日の翌日)が属する月の、前月までになります。

そのため賞与の支給日が属する月の途中に退職、つまり月末まで在籍しないで退職した場合、賞与からは健康保険や厚生年金保険の保険料は徴収されません

また賞与の査定期間に在籍していれば、支給日に在籍していなくても賞与を支給すると、就業規則などに定めている会社を退職し、退職した後に賞与が支給された場合にも、同様の取り扱いになります。

なお雇用保険の保険料については、いずれのケースでも徴収されるので、社会保険の種類によって取り扱いが変わるのです。

事務処理のミスなどで受給できる老齢厚生年金が少なくなる

従業員の賞与から厚生年金保険の保険料を控除した勤務先は、各人の賞与の金額などが記載された「被保険者賞与支払届」という書類を、日本年金機構に提出します。

書類を提出した後に勤務先は、従業員の賞与から控除した厚生年金保険の保険料と、ほぼ同じくらいの金額を拠出し、両者を合わせたものを日本年金機構に納付します。

こういった過程の中で勤務先が、次のような事務処理のミスをした場合、受給できる老齢厚生年金が少なくなってしまうのです。


・ 「被保険者賞与支払届」の提出を忘れた

・ 提出したけれども一部の方が抜けていた

・ 賞与の金額を実際よりも低く届出した


また勤務先の資金繰りの問題などにより、きちんと保険料を納付できなかった場合にも、同様の事態になってしまうのです。

勤務先だけでなく日本年金機構が事務処理をミスした場合にも、同様の事態になる可能性があるため、賞与から厚生年金保険の保険料が控除されているから大丈夫だと、思わない方が良いと思います。

次の誕生月までは賞与の明細書を保管しておく

こういった事態から各人の年金を守るための、もっとも手軽な手段は、誕生月(1日生まれの場合は誕生月の前月)になると、日本年金機構などから送付される、ねんきん定期便ではないかと思います。

基本的にはハガキで送付されますが、公的年金に加入している方が節目年齢(35歳、45歳、59歳)を迎える時はA4判の封書になり、ハガキよりも詳しい年金記録が記載されているのです。

例えばハガキ形式のねんきん定期便が送付された場合、「最近の月別状況です」と記載された所の下部にある、「厚生年金保険」の部分を見てみます。

この中の「標準賞与額(千円)」の欄に、各人が受け取った賞与の金額が記載されていれば、勤務先と日本年金機構が事務処理を正しく実施し、保険料も納付されていたことになります。

慣れると簡単に確認できると思いますが、賞与を受け取った月と、ねんきん定期便が送付される誕生月が離れている場合には、注意する必要があります。

その理由としては賞与の金額に関する記憶が曖昧になってしまい、ねんきん定期便に記載された金額が正しいのか否かを、判断できない場合があるからです。

こういった事態が起きないようにするため、賞与の明細書を受け取ったら、次の誕生月までは保管しておいた方が良いのです。

パソコンやスマホで年金記録を確認できる、ねんきんネットにログインした場合にも、「標準賞与額(千円)」がわかるため、ねんきん定期便が送付される前に確認したい方は、ねんきんネットの利用を検討してみましょう。

なお月給だけでなく賞与も含めて、年金額を算出するようになったのは、2003年4月からになります。

そのためこれより前の期間の「標準賞与額(千円)」の欄に、賞与の金額の記載がなくても良いのです。(執筆者:社会保険労務士 木村 公司)

《木村 公司》
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執筆者:社会保険労務士 木村 公司 木村 公司

1975年生まれ。大学卒業後地元のドラッグストアーのチェーン店に就職。その時に薬剤師や社会福祉士の同僚から、資格を活用して働くことの意義を学び、一念発起して社会保険労務士の資格を取得。その後は社会保険労務士事務所や一般企業の人事総務部に転職して、給与計算や社会保険事務の実務を学ぶ。現在は自分年金評論家の「FPきむ」として、年金や保険などをテーマした執筆活動を行なう。 【保有資格】社会保険労務士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、DCプランナー2級、年金アドバイザー2級、証券外務員二種、ビジネス実務法務検定2級、メンタルヘルス・マネジメント検定Ⅱ種 寄稿者にメッセージを送る

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