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年金額を増やすために努力を続けると、損をする可能性がある3つの制度

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年金額を増やすために努力を続けると、損をする可能性がある3つの制度

年金を受給中の方でも、その金額が地域、年齢、世帯人数などで算出した最低生活費を下回っている時には、生活保護を受けられる場合があります。

そのため二つの制度は共存関係にあると思うのですが、ニュースサイトに掲載された年金に関する記事の、コメント欄などを見ていると、年金受給者の方が生活保護を批判している場合があるのです。

生活保護費として行政から支給されるのは、最低生活費と年金の差額になるため、年金額を増やすために保険料の納付を続けても、未納を続けて年金額が少なくなった方より、多くの金額を受給できるわけではありません。

年金の保険料をきちんと納付してきた方が、こういった未納者が不利にならない事実を知ったら、おそらく納付した保険料の分だけ、損をしたという気持ちになると思います。

そうなると納得できなくなるため、年金の保険料をきちんと納付してきた年金受給者ほど、生活保護を批判したくなる可能性があるのです。

ただ生活保護だけでなく、年金に関連した次のような3つの制度も、年金額を増やすために努力を続けると、損をする可能性があるため、注意する必要があるのです。

年金額を増やすために努力を続けると 損をする可能性がある3つの制度

制度1:加給年金

公的年金の保険料を納付した期間や、国民年金の保険料の納付を免除(学生納付特例、納付猶予も含む)された期間などの合計が、原則10年以上ある場合、65歳になると国民年金から老齢基礎年金が支給されます。

また老齢基礎年金が支給される方のうち、厚生年金保険の加入期間が1月以上ある方には、老齢基礎年金の上乗せとなる老齢厚生年金が、厚生年金保険から支給されます。

このように厚生年金保険に加入していると、65歳から受給できる老齢年金が、二階建てになるというメリットがあるのです。

その他に厚生年金保険の加入期間が原則20年以上ある方が、65歳に到達した時に、その方に生計を維持されている次のような家族がいる場合、加給年金が加算されるというメリットもあるのです。


・ 65歳未満の配偶者

・ 18歳到達年度の末日までの間にある子(1級か2級の障害状態にある子の場合、20歳まで対象になる)


例えば妻が社会保険の扶養から外れ、勤務先で厚生年金保険に加入した場合、65歳から受給できる老齢厚生年金は増えていきます。

ただ妻の厚生年金保険の加入期間が原則20年以上になると、夫に加算される加給年金が支給停止になる場合があるため、妻が老齢厚生年金を増やすために厚生年金保険への加入を続けると、損をする可能性があるのです。

妻を対象にした加給年金は、2022年度額で38万8,900円(夫が1943年4月2日以降生まれの場合)になるため、けっこう影響はあると思います。

制度2:繰下げ受給

65歳から支給される老齢年金の受給開始を、1か月繰下げするごとに、75歳になるまで0.7%の割合で老齢年金が増えていく、繰下げ受給という制度があります。

繰下げによって老齢年金が増えるのは良いことですが、税金(所得税、住民税)、公的医療保険(国民健康保険、後期高齢者医療)の保険料、公的介護保険の保険料なども、増えてしまう場合があるのです。

これに加えて公的医療保険や公的介護保険を利用した時の自己負担が、増えてしまう場合もあるのです。

繰下げによって老齢年金の金額が増えて、住民税(都道府県民税、市町村民税)非課税世帯の要件を満たせなくなると、こういった傾向が強くなります。

また65歳以上の夫婦のみで暮らしており、かつ妻が夫の税法上の扶養に入っている場合、住民税非課税世帯になる前年の年収の目安は、次のような金額になります。

夫:収入が老齢年金だけの場合、その合計額が211万円以下である

妻:収入が老齢年金だけの場合、その合計額が155万円以下である

なお新型コロナ対策などで支給される、1世帯あたり10万円の臨時特別給付金は、住民税非課税世帯を支給対象にしているので、年金額を増やすために繰下げを続けると、色々な面で損をする可能性があるのです。

制度3:老齢年金生活者支援給付金

老齢基礎年金の受給者のうち、次のような3つの支給要件を満たす方には、老齢年金生活者支援給付金が支給されます。

・ 65歳以上である

・ 請求される方の世帯全員について、市町村民税が非課税である

・ 前年の公的年金(障害年金、遺族年金などの非課税収入は除く)と、その他の所得の合計額が78万1,200円以下である

また国民年金の保険料を納付した期間を基にした、2022年度の老齢年金生活者支援給付金は、次のように算出します。

5,020円×国民年金の保険料を納付した月数/480月

そのため20歳から60歳までの40年(480月)に渡って、一度も未納にしないで、国民年金の保険料を納付した場合、老齢年金生活者支援給付金は「5,020円×480月/480月」により、月額で5,020円になるのです。

一方で所定の申請を行って、国民年金の保険料の全額免除、4分の3免除、半額免除を受けた期間を基にした、2022年度の老齢年金生活者支援給付は、次のように算出します。

1万802円×いずれかの免除を受けた月数/480月

また所定の申請を行って、4分の1免除を受けた期間を基にした、2022年度の老齢年金生活者支援給付金は、次のように算出します。

5,401円×4分の1免除を受けた月数/480月

そのため極端な例になりますが、20歳から60歳までの40年(480月)に渡って全額免除を受けた場合、老齢年金生活者支援給付金は「1万802円×480月/480月」により、月額で1万802円になるのです。

このように免除を受けて保険料を納付しなかった人ほど、老齢年金生活者支援給付金の金額が増えるため、年金額を増やすために国民年金の保険料の納付を続けると、損をする可能性があるのです。

また給与などの収入を得ると、「78万1,200円以下」という支給要件を満たせない場合があるため、65歳以降も頑張って働き続けると、損をする可能性があるのです。

年金額を増やすための努力で損をしないための対策

3つの制度で損をしないための対策は、例えば繰下げ受給であれば、住民税非課税世帯に該当する範囲内で、老齢年金を増やすことだと思います。

また老齢年金生活者支援給付金であれば、国民年金の保険料の納付が難しい時は未納にしないで、いずれかの免除をすぐに受けておくのです。

一方で加給年金については、厚生年金保険の加入期間を原則20年未満に抑えるなどの対策を、今後は実施しなくても良いと思うのです。

夫の老齢厚生年金に加給年金が加算されている場合、その加算が止まるのは、厚生年金保険の加入期間が原則20年以上の妻が、例えば60歳~65歳までの間に、特別支給の老齢厚生年金の受給を始めた時になります。

つまり妻の厚生年金保険の加入期間が原則20年以上でも、特別支給の老齢厚生年金の支給が始まるまでは、夫の老齢厚生年金に加給年金が加算されるのです。

また特別支給の老齢厚生年金の支給開始年齢は、段階的に引き上げされていき、1961年4月2日以降生まれの男性、1966年4月2日以降生まれの女性は、特別支給の老齢厚生年金を受給できなくなります。

こういった理由から今後は、厚生年金保険の加入期間を原則20年未満に抑える必要性が、かなり低くなると思います。(執筆者:社会保険労務士 木村 公司)

《木村 公司》
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執筆者:社会保険労務士 木村 公司 木村 公司

1975年生まれ。大学卒業後地元のドラッグストアーのチェーン店に就職。その時に薬剤師や社会福祉士の同僚から、資格を活用して働くことの意義を学び、一念発起して社会保険労務士の資格を取得。その後は社会保険労務士事務所や一般企業の人事総務部に転職して、給与計算や社会保険事務の実務を学ぶ。現在は自分年金評論家の「FPきむ」として、年金や保険などをテーマした執筆活動を行なう。 【保有資格】社会保険労務士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、DCプランナー2級、年金アドバイザー2級、証券外務員二種、ビジネス実務法務検定2級、メンタルヘルス・マネジメント検定Ⅱ種 寄稿者にメッセージを送る

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