2019年10月からは消費税率の引き上げ分を財源にした、次のような年金生活者支援給付金が、基礎年金(老齢基礎年金、障害基礎年金、遺族基礎年金)の受給者に支給されます。

・ 老齢基礎年金の受給者を対象にした「老齢年金生活者支援給付金」、または「補足的老齢年金生活者支援給付金」

・ 障害基礎年金の受給者を対象にした「障害年金生活者支援給付金」

・ 遺族基礎年金の受給者を対象にした「遺族年金生活者支援給付金」

「年金生活者支援給付金」が生活保護より優れている点と劣っている点

このような年金生活者支援給付金の中で、もっとも受給者が多いのは老齢年金生活者支援給付金になりますが、これを受給するには次のような3つの支給要件を満たす必要があります。

 

・ 65歳以上で老齢基礎年金を受給している

・ 同じ世帯に属する方の全員について、市町村民税が非課税である

・ 前年の公的年金の収入金額と、その他の所得(例えば給与所得や利子所得)の合計が、老齢基礎年金の満額相当(2022年度は78万1,200円)以下である

 

また2022年度に支給される老齢年金生活者支援給付金の、1か月あたりの金額は、次のように計算するのです。

【国民年金の保険料を納付した期間に基づく金額】

5,020円×保険料を納付した月数/480月

【国民年金の保険料の全額免除、4分の3免除、半額免除を受けた期間に基づく金額】

1万802円×各種の免除を受けた月数/480月

【国民年金の保険料の4分の1免除を受けた期間に基づく金額】

5,401円×4分の1免除を受けた月数/480月

例えば20~60歳までの40年(480月)のうち、360月は国民年金の保険料を納付し、120月は全額免除を受けた場合、老齢年金生活者支援給付金の1か月あたりの金額は、次のように6,466円になります。

・ 5,020円×360月/480月=3,765円

・ 1万802円×120月/480月=2,701円(50銭未満の端数は切り捨て、50銭以上の端数は切り上げ)

・ 3,765円+2,701円=6,466円

これだけの金額が継続的に支給されますが、生活保護から支給される金額と比較すると、かなり物足りないという印象があります。

しかし次のような点においては、年金生活者支援給付金は生活保護より優れていると思うのです。

年金生活者支援給付金は保有する資産に対する制限がない

日本の持ち家率(住宅総数に占める持ち家数の割合)は平均して、60%くらいになるようです。

この持ち家(家屋、土地)のうち、資産価値の高いものを保有している方は、生活保護を受けられない場合があります。

また自動車を保有している方も、公共交通機関の利用が著しく困難な地域に住んでおり、かつ通勤や通院に必要などの事情がないと、生活保護を受けられない場合があります。

その他に貯蓄性の高い生命保険は保有できない、有価証券(株式、債券、投資信託など)は売却しなければならない、必要以上の預貯金はできないなど、保有する資産に対する色々な制限があるのです。

一方で年金生活者支援給付金は前年の所得が一定額を超えると、受給できない場合がありますが、保有する資産に対する制限はありません

この点は年金生活者支援給付金が生活保護より、優れている点のひとつではないかと思います。

なお資産価値の高い持ち家を保有していると、生活保護を受ける際には不利になりますが、次のような制度を利用する際には、有利に働く可能性があります。

【リバースモーゲージ】

持ち家を担保にして金融機関などから生活資金を借り、亡くなった後にその持ち家を売却して、借金を返済する制度です。

【リースバック】

持ち家を不動産会社に売却した後に定期借家契約を結び、その持ち家に住み続ける制度です。

いずれの制度を利用する場合であっても、住み慣れた持ち家から離れる必要はないため、生活保護を受けるために持ち家を売却し、新たな住居に引っ越しするよりは、負担が少ないと思うのです。

年金生活者支援給付金は手続きの難易度が低い

生活保護を受けるために相談に行った方が、色々な理由をつけて追い返される、いわゆる「水際作戦」が問題になったことがあります。

また生活保護の申請手続きができるのに、扶養照会(3親等内の親族に対する、援助できるか否かの問い合わせ)に抵抗を感じて、申請手続きをしない方もいるのです。

一方で例えば老齢年金生活者支援給付金については、65歳を迎える直前になると、支給対象者に必要な書類が送付されるため、こちらから相談に行く必要はありません

そのうえ扶養照会のような制度はないので、年金生活者支援給付金を受給する時に、親族に負担をかけることはないのです。

こういった手続きの難易度の低さは、年金生活者支援給付金が生活保護より、優れている点のひとつではないかと思います。

年金生活者支援給付金は年金と同じ受取口座に、同じ日(原則として偶数月の15日)に振り込まれるため、お金の受け取り面でも難易度は低いのです。

生活保護から支給される扶助の代わりになりそうな制度

生活保護を受けられた場合、日常生活費のために支給される生活扶助の他に、医療費のために支給される医療扶助、家賃のために支給される住宅扶助、葬儀代のために支給される葬祭扶助を受給できます。

あまり金額が多くない年金生活者支援給付金は、生活扶助の代わりに使うくらいしかできず、医療費などは自己負担になってしまう点は、生活保護より劣っていると思います。

そのため年金生活者支援給付金の受給者は、生活扶助以外の扶助の代わりになりそうな、次のような制度の知識を身に付けておき、必要になったタイミングで利用してみるのです。

【医療扶助の代わりになりそうな制度】

全日本民主医療機関連合会が低所得者などの生計困難者を対象に、全国各地の病院などで実施している、無料または低額な料金の診療事業は、医療扶助の代わりになりそうな制度です。

【住宅扶助の代わりになりそうな制度】

自治体が実施している家賃補助、所得によっては家賃補助がある高齢者向け優良賃貸住宅、失業した時などに支給される住居確保給付金は、住宅扶助の代わりになりそうな制度です。

【葬祭扶助の代わりになりそうな制度】

国民健康保険や後期高齢者医療から支給される葬祭費は、葬祭扶助の代わりになりそうな制度です。

以上のようになりますが、これら以外にも自治体などから、現金や無料のサービスを受けられる場合があります。

こういったものは自分から手続きしないと、受けられない場合が多いので、自治体のウェブサイトなどで利用できそうなものを見つけたら、忘れずに手続きしたいところです。(執筆者:社会保険労務士 木村 公司)