インターネットが浸透し高齢者も含め誰もがデジタル資産を持っています。

本人に万が一のことが起これば、デジタル資産はデジタル遺品・遺産となります。

残された遺族に分かる様にしておかなければ、その対応で苦労することになります。

対応策について

1:デジタル浸透度

【総務省:通信利用動向調査2021年度】を筆者が加工しています。

<グラフ1>

情報通信機器の世帯保有率

情報通信機器の世帯保有率%の推移:2021年のモバイル端末保有率の合計は97.3%、ここ10年程大きな変化はありません。

スマートフォン(スマホ)は「iPhone」発売後急増、タブレットも増加、パソコン・固定電話は減少傾向です。

2021年 スマホ(88.6%)>パソコン(69.8%)>固定電話(66.5%)>タブレット(39.4%)

<グラフ2>

年齢別機器保有状況

年齢別の保有状況(2021年):スマホは全体で約90%、70歳代で約80% パソコンは全体で約70%、70歳代で約60%です。

全世代を通じて スマホ>パソコンとなっています。

<グラフ3>

毎日一回はインターネット使用

「毎日少なくとも1回はインターネット使用」(2021年):全体約87%、70歳代約70%で、高齢者の利用者も多いです。

2:デジタル遺品・遺産の種類と対処法

デジタル機器とデータ、ネット上のデータ、ネット上のお金に関連するデータについて考えます。

<表1>

デジタル遺品・遺産の種類と対処法

1. デジタル機器とデータ

・パソコン、スマホ、タブレット、携帯、USB、SD、外付HD、カメラ等とデータ

ほとんどの場合、財産的価値がないので相続手続はありません

デジタル遺品・遺産を集め中身を確認後、初期化して処分します。

2. ネット上のデータ

・メールアドレス、アカウント(Google、Microsoft、Apple等) SNSデータ(ブログ、HP、Facebook、Twitter、LINE等)

ほとんどの場合、財産的価値はなく相続手続はありませんが、サービス事業者の利用規約の判断に従います

デジタル遺品・遺産を集め中身を確認後、荒らされるのが心配であれば、解約、退会します。

3. ネット上のお金に関連するデータ

【ネット金融口座】

ネット銀行、ネット証券・・財産的価値が有り、相続手続が必要です。

デジタル遺品・遺産を集め、中身をよく確認後、ネット口座の相続手続きをします。

FX、暗号資産(コインチェック、ビットコイン等)

財産的価値が有り、相続できますがサービス事業者の利用規約の判断に従います。

【ネットサービス】

ポイント、有料サービス(書籍、新聞、音楽、動画、メルマガ、ゲーム等)電子マネー、ショッピングモール(アマゾン、楽天市場等)、アフィリエイト

財産的価値や相続できるかは、サービス事業者の利用規約の判断に従います。

【NFT(非代替性トークン)】

デジタルアートの価値の証明やゲーム内のキャラクター、トレーディングカードの売買に使われたりしていますが、NFTの性格がそれぞれ違うため、個別での判断が必要となります。

3:残したいものと残したくないものに分けて管理

残したくないものは、処分するか 「自動削除ソフト」を考えます

一定期間アクセスしないと、死亡したものとみなしてデータを完全削除します。(死後の世界、僕が死んだら 等)

残したいものは、遺族に迷惑がかからない様、遺族が分かるレベルで一覧表にして整理します。

・ デジタル遺品・遺産の種類(この際、デジタル以外の資産も含めて)とパスワード一覧表を作成します。

・ 生体認証を通常使用している場合でも、遺族はパスワード認証を使います。

・ パスワードの管理は非常に大切で、iPhoneはパスワード10回連続間違えると「初期化」しますので注意が必要です。

パソコン等は専門業者によるデジタル遺品・遺産からデータを復元する方法もありますが、iPhoneは難しい様です。

パスワード整理例

A:重要 B:まあまあ重要 C:重要でない

重要度に応じて「電子ファイル」「パスワード管理ソフト」「メモ」などで管理します。

デジタル時代にアナログ的ですが紙による「メモ」は結構便利です。

重要でないパスワードは簡単なもので、使いまわしで十分でしょう。

4:法律上の解釈や注意点

(1)法律上の解釈

デジタル遺品・遺産の相続について明確に定めている法律はなく、デジタル技術の進歩に遅れているのが現状で、相続手続は一般の遺品・遺産と同じ扱いとなります。

(2)特徴

デジタル遺品・遺産は、本人しか全体像が分からず、遺族が相続できるかどうか分かりにくい部分があります。

(3)遺族によるデジタル遺品・遺産整理の順番

遺族になった場合、まず「デジタル遺品・遺産を集め中身を確認」します。

次に「解約、退会の手続」や「ネット金融機関やサービス事業者で相続手続き」などを行い、最後に「デジタル機器を初期化して売却や譲渡・廃棄」します。

「解約、退会の手続、初期化」は中身の確認を十分した上で行いましょう。

(4)注意点

1. デジタル機器とデータ

・ 民法では、デジタル機器(パソコン、スマホなど)は「動産」で「物」として持主の所有権が認められ、所有権が相続の対象となります。

データは形を持たないため「物」ではなく、「物」に対する所有権は対象外となります。

著作権等の知的財産権の対象となるデジタルデータは、その権利を相続できます。

しかし、それ以外のデジタル遺品・遺産に対する権利の性質はあいまいなところがあります。

2. ネット上のデータ

・ アカウント等の相続は、ほとんどの場合認められませんが、消去手続きは可能です。

無断でアカウントを使用すると利用規約違反の可能性があります。

・ 「不正アクセス禁止法」に注意すべきですが遺族がデジタル遺品・遺産にアクセスするなら問題はありません。

・ SNS、ブログ・HPは荒らされたり、個人情報が流出したりするリスクがあります。

3. ネット上のお金に関連するデータ

ネット金融口座:

・ 先物取引、FX、暗号資産では、負債発生の可能性があります。

・ ネット銀行や証券会社、暗号資産サービス業者では、HP上に相続手続の問い合わせ窓口を設置しています。

手続きは、一般的な銀行と同じで・・遺言書、死亡確認の戸籍謄本、相続人の印鑑登録証明書、遺産分割協議書などの書類一式を提出します。

例:当社口座をお持ちのお客さまが亡くなられた場合、相談窓口へお電話ください。

必要なお手続きをご案内いたします。

・ 暗号資産で、現在の法律で注意が必要な項目は、「遺産分割の対象にはならない」、「暗号資産のパスワードが分か
らなくても相続税の対象になる」などです。

暗号資産は「遺産分割できる可分債権」とは考えられていない様です。

ポイント:商品・サービス購入時にもらえる「ポイント」は「おまけ」の性質が強いため、発行会社によって相続できるか判断が異なるようです。

JAL、ANAマイレージは規約で承継を認めていて死後6か月以内に手続きが必要です。

有料サービス:クレジットカード凍結で支払いは止まりますが、会費は継続され契約不履行で請求がくる可能性もあります。

電子書籍は、コンテンツ販売ではなく一定条件での閲覧権限のライセンス契約となっています。

電子マネー:「相続人への払戻しなどでの形で引き継ぐことができます」と定めている場合が多い様です。

アフィリエイト(ネット上の広告収益):発生済み報酬は相続可能ですが、アカウント相続は出来ませんので引き続き
アフィリエイトサイトを運営するには、相続人個人の名前で契約が必要となります。

NFT:非代替性トークン(Non Fungible Token)は、証明書、著作権、鑑定書付きの偽造できないデジタルデータの意味です。

デジタルアートの価値の証明やゲーム内のキャラクター、トレーディングカードの売買に使われたりしていますが、NFTの性格がそれぞれ違うため、個別での判断が必要となります。

まとめのグラフ下部分

以上。(執筆者:1級FP技能士 淺井 敏次)