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「つなぎ国債」発行は「インボイス制度」での増税を想定か 中小零細企業に増税の波

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「つなぎ国債」発行は「インボイス制度」での増税を想定か 中小零細企業に増税の波

実施賃金が4か月連続でマイナスになる中で、政府は、10月にも新たな総合経済対策を策定し、11月中に臨時国会に提出すると言います。

庶民に対しての目玉政策は、住民税非課税世帯に対して1世帯に5万円の給付金を配るという政策。

総額9,000億円の支出だと言いますが、傷んでいるのは住民税非課税家庭だけではないのですから、本来ならもっと広範囲に給付金を配るべきでしょう。

なぜなら、2021年度は、20年度よりも税収が6.2兆円も増えて67兆379億円とバブル期を超える史上空前の税収でした。

しかも、今年はそれをさらに上回りそうな勢い。

中でも、消費税の税収が大きく、すでに所得税を上回っています。

所得税というのは、稼いだ人から稼いだ額だけ取る税金ですが、消費税は、お金のない人からも確実に徴収する税金。

しかも、物価が上がれば上がるほど、価格に対する消費税額は増えますから、所得が少ない人には無慈悲な税金と言ってもいいでしょう。

こんな中で、「低所得家庭には5万円差し上げます」と言われても、あまりありがたくない気がします。

増税の波

「つなぎ国債」発行は、「インボイス制度」での増税を想定?

こうした中で、さらなる増税を予感させるような話が飛び出してきました。

9月13日の記者会見で、鈴木俊一財務大臣が、岸田内閣の防衛力強化のために「赤字国債」ではなく「つなぎ国債」の発行を示唆したと見られています。

「つなぎ国債」は、将来的に増税することを前提として発行する国債で、過去に消費税増税による税収増を担保として、基礎年金の国庫負担の引き上げをこれでまかなったことがありました。

そのいっぽうで、来年10月からは、消費税の「インボイス制度」がスタートする予定。

「インボイス制度」が導入されれば、消費税をもれなく徴収できるだけでなく、複数税率が可能になるので、政府は増税がしやすくなります。

食料品は8%だが、電気代は10%、レイトランでの食事などは15%といったかたちで、最終的にはヨーロッパのように、たいていのものは税率20%以上ということにすることも可能です。

ですから、「つなぎ国債」と「インボイス制度」で増税か? と思ったのは、私だけではないでしょう。

中小零細企業には痛みの大きい「インボイス制度」

「インボイス制度」では、業者が申請して、税務署から「事業者登録番号」を発行してもらいます。

今まで、売り上げ1,000万円以下の業者には、消費税の納税義務はありませんでしたが、「事業者登録番号」をもらうとこの「免税」は使えません。

「事業者登録番号」をもらうかもらわないかは事業者が選べるので、中小零細業者は選ばなくてもいい気がしますが、実は、選ばないと商売がしにくくなるという大きなデメリットがあります。


たとえば、会社の接待で、客を行きつけのスナックに連れていったとします。

いままでなら、スナックの代金は営業マンが自分で立て替えて領収書をもらい、後日、経理に渡せば、妥当な金額なら立て替えたお金が経理から戻されました。

ところが、「インボイス制度」になると、このスナックが税務署から「事業者登録番号」をもらっていない業者なら、領収書を会社の経理に出しても、「この領収書には事業者登録番号がないので、使ったお金に消費税が含まれているかどうかがわからず、消費税ぶんを会社が丸かぶりしなくてはならなくなるかもしれないので受理できません」と突き返され、「接待するなら事業者登録番号のある店にしてくださいね」と言われてしまう可能性があります。

たぶん、大半の会社は、「事業登録番号」がない業者の領収書は受け入れられないということになるでしょう。

仕事上でも、「事業者登録番号」がないと、親会社が消費税ぶんを丸かぶりしなくてはならなくなる可能性が出てくるので、取引を断られるケースが増えるでしょう。

ですから、選択の自由があるといっても、実際は「事業者登録番号」をもらわなくてはならない人が大部分となるはずです。

しかも、「事業者登録番号」をもらった業者は、きっちりした領収書の保存や記録、税計算などの作業が求められるので、今までそれほどしっかりやらなくてもよかったという人は、自分ではとても手が回らないので、税理士など専門家に頼まなくてはならないということになるかもしれません。

もともと売り上げが少ないだけに、こうした経費の出費は大きな負担になりそうです。

ただでさえコロナで痛めつけられた中小零細企業に、ひと息つく間もなく、今度は、増税の波が押し寄せてきそうです。(執筆者:経済ジャーナリスト 荻原 博子)

《荻原 博子》
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荻原 博子

執筆者:経済ジャーナリスト 荻原 博子 荻原 博子

経済ジャーナリスト 1954年生まれ。経済事務所勤務後、1982年からフリーの経済ジャーナリストとして、新聞・経済誌などに連載。女性では珍しく骨太な記事を書くことで話題となり、1988年、女性誌hanako(マガジンハウス)の創刊と同時に同誌で女性向けの経済・マネー記事を連載。難しい経済やお金の仕組みを、生活に根ざしてわかりやすく解説し、以降、経済だけでなくマネー分野の記事も数多く手がけ、ビジネスマンから主婦に至るまで幅広い層に支持されている。バブル崩壊直後からデフレの長期化を予想し、現金に徹した資産防衛、家計運営を提唱し続けている。新聞、雑誌等の連載やテレビのコメンテーターとしても活躍中。「私たちはなぜ貧しくなってしまったのか」(文藝春秋)「一生お金に困らないお金ベスト100」(ダイヤモンド社)など著書多数。 寄稿者にメッセージを送る

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