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なぜ少子化が進むのか? さまざまな数字とお金の面から「若者の直面する現実」を考える

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なぜ少子化が進むのか? さまざまな数字とお金の面から「若者の直面する現実」を考える

岸田文雄内閣の「異次元の少子化対策」が物議をかもしています。

13日、共同通信加盟社の政治部長会議に寄せたビデオメッセージで、首相は防衛力強化や少子化対策を

「先送りがゆるされない重要な課題。内閣の方針を国民に理解してもらえるようていねいに説明する」

と言いました。

少子化については、「社会機能を維持できるかどうかの瀬戸際」と強調し、「次元の異なる子ども・子育て政策」「少子化を反転させ、子どもの笑顔あふれる社会をつくる」と訴えました。

ただ、こうした言葉に説得力がないのは、大風呂敷を広げてもリアリティーに乏しく、結果が期待しにくいからではないでしょうか。

少子化問題

「言行不一致だ」と苦言が殺到

育児休業給付の対象者を広げ、育児休業中に学び直し(リスキリング)を奨励すると言いますが、この首相の発言に世のお母さんたちは

「子供を育てるのに精一杯で、そんな余裕はない」

「夜も寝られない状況なのに、なにを学べというのか」

という批判的。「子育てで頑張っているのに、もっとがんばれというのか」という悲鳴さえ聞かれました。

児童手当の所得制限撤廃については、過去に民主党政権で所得制限なしで児童手当を支給することを決めた時に、これに反発した自民党の丸川珠代議員が「愚か者めが。このくだらん選択をした馬鹿者どもを絶対に忘れん」と発言し、「愚か者めが」とかいたTシャツを自民党の公式グッズとして販売していたことで大炎上。

首相が反省の意を示しましたが、その後も「ていねいな説明」どころか言行不一致との苦言が殺到しています。

そんな空気を敏感に察知したのか、2月4日から「こども政策対話」ということで、首相自ら全国の子育ての現場をまわり当事者の話を聞くのだとか。

これを聞いて、「もっと緊急にやらなくてはいけない事が山積みでしょう!」とツッコミを入れたのは、私だけでしょうか?

育休は育児で大変だから学び直しどころではない

これでは、安心して子供を産めない!

少子化が進んだのは、女性の社会進出が進み出産が高齢化したなどさまざまな理由はありますが、特に大きいのは、

  • 子育てできる環境整備が不十分なことと、
  • 子供を産んでもその後にお金がかかり過ぎている

という現実にあるのではないでしょうか。

環境についていえば、一見すると待機児童の数は減っていますが、ただ、保護者が何らかの理由で求職活動を中止していたり特定の子保育園のみ希望しているなどの「隠れ待機児童」は増えているという状況。

保育士不足で保育施設を増設できない状況や、昨今起きている保育士の事件の影響で、不安を感じている親御さんも多くおられます。

また、保育士の低賃金や過重労働問題も解消されていません。

お金については、さらに深刻です。

今の大学生の2人に1人が、卒業と同時に奨学金という大きな借金を背負っています

しかも今の奨学金は純然たる借金で、返済を3か月滞納すれば債権が回収業者に回り、厳しい取り立てに追われます。

結果、奨学金で自己破産した人は、2012年から2016年の間に本人が8,108人、保証人や連帯保証人(親が多い)は7,230人。

非正規で働きながら、借金に追われている若者たちの中には、結婚も子供も、諦めている人が少なくないでしょう。

奨学金の返済で首が回らない

大学卒業のニートが急増!

高校から大学までに子供ひとりにかかる教育費は、平均で942万円(日本政策金融公庫調べ)。

こんなに教育費にお金がかかるのは、政府が高等教育にお金を出さないから。

日本のGDPに占める教育機関への公的支出は、OECD(経済協力開発機構)37国中ワースト2位の36位

そのぶん、家計の出費が増えています。

新型コロナでは、収入が激減して中途退学を余儀なくされる学生も多く出ました。

今の人たちは、こうした厳しい現実に直面しています。

また、日本の社会がいまだに学歴信奉の社会であることも問題。

勉強嫌いの子供に無理やり詰め込み教育をしても、思うように成績が上がるはずはないし、人生をつまらないと思うだけでしょう。

もし、大学に行かなくても、料理人や美容師など好きな事で才能を伸ばして生きていけたら、本人にとっては幸せかもしれない。

ゲームの大会で勝ち抜ける実力があれば、学歴はなんかなくてもゲーマーとして活躍できるかもしれない時代です。

そんな子供の可能性を、社会や親が阻んでいる気がしてなりません。

文部科学省の「平成30年度学校基本調査」によれば、学を卒業しても進学も就職もしていないニートと呼ばれる人は全体の約7%で4万人近い。

親が苦労して大学に行かせても、14人に1人がニートになるのでは、親の将来も暗くなる。

こうした状況を考えると、いまLGBT問題で「多様性」が論じられていますが、教育についても「大学に行くことだけが人生ではない」という多様性が必要でしょう。(執筆者:経済ジャーナリスト 荻原 博子)

《荻原 博子》
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荻原 博子

執筆者:経済ジャーナリスト 荻原 博子 荻原 博子

経済ジャーナリスト 1954年生まれ。経済事務所勤務後、1982年からフリーの経済ジャーナリストとして、新聞・経済誌などに連載。女性では珍しく骨太な記事を書くことで話題となり、1988年、女性誌hanako(マガジンハウス)の創刊と同時に同誌で女性向けの経済・マネー記事を連載。難しい経済やお金の仕組みを、生活に根ざしてわかりやすく解説し、以降、経済だけでなくマネー分野の記事も数多く手がけ、ビジネスマンから主婦に至るまで幅広い層に支持されている。バブル崩壊直後からデフレの長期化を予想し、現金に徹した資産防衛、家計運営を提唱し続けている。新聞、雑誌等の連載やテレビのコメンテーターとしても活躍中。「私たちはなぜ貧しくなってしまったのか」(文藝春秋)「一生お金に困らないお金ベスト100」(ダイヤモンド社)など著書多数。 寄稿者にメッセージを送る

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