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物価は上がり、給料は上がらない 国は急ぎ「同一労働同一賃金」の抜け穴を塞ぎ、家計所得を上げろ!

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物価は上がり、給料は上がらない 国は急ぎ「同一労働同一賃金」の抜け穴を塞ぎ、家計所得を上げろ!

物価の上昇が止まりません。

4月には、食品・日用品約4800品目が値上げ。

昨年10月には据え置きになった政府の輸入小麦の売り渡し価格も、5.8%値上げ

電気料金は、政府からの圧力でなんとか大幅値上げは避けられたが、昨年10月に上がったばかりの雇用保険料が、またまた値上がりします。

さらに介護保険料も値上がりし、40歳から64歳の保険料は、月平均で6,216円と、過去最高になりそうです。

こうした中で、なかなか上がらないのが給料。

2023年の春闘では、大手企業の賃上げ発表が相次いだので期待したのですが、7割が働いている中小零細企業では、原材料高を見据えて、賃上げには慎重な企業が多い状況。

賃上げが物価高に追いついていない状況は依然として続いていて、ご家庭にとっては苦しい春となりそうです。

同一労働同一賃金の抜け穴

効かない、岸田内閣の賃上げ政策

岸田文雄首相は、就任早々「令和版所得倍増計画」をぶち上げ、期待をもたせましたが、いつのまにか所得倍増が方向転換して「資産所得倍増」ということになっています。

岸田政権の賃上げの目玉政策は「賃上げ促進税制」。

安倍内閣の「賃上げ税制」をバージョンアップしたもので、従業員の給料を上げた企業には、法人税をオマケしてあげるという内容。

ザックリとわかりやすいイメージで言えば、社員の給料を総額で100万円上げた企業には、法人税を40万円オマケしますという感じです。

ただ、この制度が給料アップにつながるのかと言えば疑問です。

なぜなら、今の日本では約7割の企業が赤字で法人税を払っていない。

つまり、戻してもらう税金を納めていないので、この制度には関係ない。

しかも、法人税を払っている企業でも、給料を100万円増やすと、上げた給料は簡単に下げられないのでずっと100万円払い続けなくてはなりませんが、政府から戻ってもらえる40万円は1回だけ。

これでは、割に合わないと考える経営者が多いはずです。

実際、安倍内閣の「賃上げ税制」は2013年に導入されましたが、給料はずっと横ばいのままでした。

これを多少バージョュンアップしたところで、効果が見えないのは当然でしょう。

「同一労働同一賃金」の徹底で、家計所得を上げろ!

では、どうすれば、給料は上がるのでしょうか。

夫の稼ぎに限りがある以上、妻が働かなくてはならずにパートに出ている家庭が多いですが、妻のパートでの収入が上がれば、家計は潤います。

パートの収入を上げるには、「同一労働同一賃金」を徹底させること。

まず現在の法律の抜け穴を塞かなくてはいけません。

「同一労働同一賃金」とは

正社員であろうが非正規社員であろうが、同じ仕事をしているなら賃金を同じにするということ。

2018年6月に一連の法案が成立し、2020年4月から施行されています。

対象

  • 短時間労働者
  • 有期雇用労働者
  • 派遣社員

のみで、フルタイムで働く無期雇用労働者は対象外

有期雇用など期間が限られている労働者よりも、無期雇用のほうがクビになる心配がなく働けますが、無期雇用になると正社員同様にフルタイムで働いても、有期雇用だった時の待遇が改善されないまま引き継がれている人が多い。

それを改善しなくてはいけないのですが「同一労働同一賃金」の対象外なので待遇を改善することができないまま働き続けなくてはならなくなる。

「同一労働同一賃金」の対象となる派遣社員であっても、派遣先で明らかに社員と同等の仕事をしていても、派遣された会社と派遣社員が労働協定を結んでいたら、派遣先の会社で同じ働き方、同じ仕事をしていても、「同一労働同一賃金」にはならないという抜け穴があります。

そうなると、同じ仕事をしても派遣社員のほうが安く使えるようになります。

こうした抜け穴を徹底的になくし、国が目を配れば、非正規の方の収入も上がるでしょう。

税金ドロボーと言われないように、頑張ってください!

「同一労働同一賃金」が基本の北欧などでは、給料に男女差がなく労働も育児も分担できるので、2人で働いて子育てしながら、それなりに豊かに生活ができています。

日本も、そうした環境になれば、女性の社会進出も進み、少子化を防げるでしょう。

ただ、日本の「同一労働同一賃金」は、前述のように抜け穴だらけ。

そんな中、一石を投じたのが総合スーパーの「イオン」。

従業員約12万人のうち、正社員は約2万3,200人。

パートとアルバイトが働く人の約7割という、全国的な企業で、正社員と変わらない業務話になって月120時間以上働くパートを対象に、正社員の資格に対応した三段階の資格を新たに設け、昇格できるようにします。

さらには、賞与や退職金などでも正社員との格差解消を目指すとのこと。

背景にあるのは、深刻化しそうな人手不足。

少しでも優秀な人材を、今のうちに囲い込んでおきたいということでしょう。

理由はどうあれ、政府ができない「同一労働同一賃金」を後押しする民間企業が出てくることは喜ばしいですが、政府がやるべきことをしっかりやらず、抜け穴だらけの法律でお茶を濁していることが問題でしょう。

税金ドロボーと言われないように、頑張っていただきたいものです。(執筆者:経済ジャーナリスト 荻原 博子)


《荻原 博子》
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荻原 博子

執筆者:経済ジャーナリスト 荻原 博子 荻原 博子

経済ジャーナリスト 1954年生まれ。経済事務所勤務後、1982年からフリーの経済ジャーナリストとして、新聞・経済誌などに連載。女性では珍しく骨太な記事を書くことで話題となり、1988年、女性誌hanako(マガジンハウス)の創刊と同時に同誌で女性向けの経済・マネー記事を連載。難しい経済やお金の仕組みを、生活に根ざしてわかりやすく解説し、以降、経済だけでなくマネー分野の記事も数多く手がけ、ビジネスマンから主婦に至るまで幅広い層に支持されている。バブル崩壊直後からデフレの長期化を予想し、現金に徹した資産防衛、家計運営を提唱し続けている。新聞、雑誌等の連載やテレビのコメンテーターとしても活躍中。「私たちはなぜ貧しくなってしまったのか」(文藝春秋)「一生お金に困らないお金ベスト100」(ダイヤモンド社)など著書多数。 寄稿者にメッセージを送る

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