FPオフィス ワーク・ワークス ファイナンシャルプランナー(CFP)の中村宏です。
MMF(マネー・マーケット・ファンド)という金融商品は、極めて安全性が高いと言われていますが、「元本保証」ではありません。まれに元本割れを起こす可能性があります。古くは、2001年、米エネルギー大手のエンロン社が不正経理によって破綻。そのあおりを食らって、いくつかの会社の円建てMMFに元本割れが発生しました。
MMFは投資信託です。私たちが投資した資金で、非常に安全性の高い短期の公社債が買われたり、銀行預金で運用されています。ご存知の通り、現在、ヨーロッパでは金融不安が広がっています。そのため、投資資金はリスクの高い資産から、安全性の高いフランスやドイツの短期国債などにシフト。利回りがマイナスに陥っています。
利回りがマイナスになるというのは、お金を預けたとき、預けた人が手数料を支払うという状態。ふつうお金を預けると、預けた人が金利という手数料を受け取ります。なぜなら、預かった人はそのお金を運用して儲けるから。
しかし、今は、危なくて預かったお金を他で運用することもできないありさま。おかげで、お金を預ける人が手数料を払うという、ふつうと逆の事態が起こっているのです。商品を倉庫に安全に保管してもらうのに「保管手数料」を支払うのと同じ状況が、「お金」で起こっているのです。「手数料を支払ってもいいからお金を安全に保管してほしい」というのが投資家の気持ちなのです。
このような事態に際し、ユーロMMFが元本割れに陥る可能性があることから、大和や日興のユーロMMFは、新規買い付けをストップし、運用されているユーロMMFは償還される予定です。償還というのは、運用をやめてお金を投資家に返すということ。他の会社のユーロMMFについては、そのような発表をしている様子はありません。しかし、保有している投資家としては、不安な気持ちになりますね。
ユーロMMFに限らず、外貨建てMMFを購入するときには、円→外貨→MMFという順番で買われていきます。今回の大和や日興のユーロMMFの償還は、その逆をたどることになりますが、とりあえず「MMF→ユーロ」のところまで。もちろん投資家が望めば「ユーロ→円」にすることもできますが、現時点では、円にまで戻さなくてもいいと思いますね。ユーロのまま持っていれば。
もちろん、ユーロMMFを購入した時の為替レートが今より円高局面で、これからユーロを円に換えて、為替手数料がかかっても儲かる場合には、円に換えればいいでしょう。しかしそうでないなら、しばらく様子をみるつもりで、ユーロ通貨のままにしておけば・・・・。ユーロ通貨のままで収益を得ることはできませんが、当面の不安を払拭することはできます。