民法の大幅改正に挑む法制審議会(法相の諮問機関)で、中小企業への融資に求められてきた個人保証をなくす改正案が浮上しているという新聞記事を目にしました。
私自身も中小企業経営にかかわってきた経験上、経営者自身はともかく経営者の家族やその他の第三者も巻き込んだ保証人という制度は少し金利が上がったとしてもなんとか無くせないものかと思っていましたが、やっと重い腰が上がった感があります。
皆様も身近な保証人の制度として大学の奨学金の借り入れや就職の際など親はもちろんですが、甥や姪など親戚の個人保証をした経験が少なからずおありになると思います。
企業経営においては本来は企業の借り入れですから個人には何の責任も無いわけですが、中小企業の場合はほとんどが社長個人はもちろん、社長の家族や親類・友人や従業員まで保証人になっているケースもあるようです。
経営破綻に何の責任もない第三者が多額の保証債務を背負い、借り手も追い込まれる「保証被害」が続いてきたことが背景にあると思われ長年の慣習を断ち切って個人に頼らない仕組みをどう広げていくか、今後の課題となりそうです。
中小企業が借り入れをする際に社長自身が連帯保証人となる『経営者保証』が一般的で、会社が経営破たんの際には経営者個人の自宅や預貯金など全財産が没収され、社長個人はもちろんその家族の生活にまで悪影響が及ぶことになります。
その一方、、経営に直接関与していない第三者による連帯保証については、他人の借金で生活基盤を失う人を減らそうと金融庁が11年、銀行や信用金庫への監督指針で禁止されましたが、法制審議会で貸金業者なども含めた全面禁止に向け議論されています。
保証被害がクローズアップされたのは10年以上前に銀行の貸し渋りを背景に社会問題化した事業者金融が貸出残高を伸ばし、高利で返済に行き詰まる中小企業が続出し、脅迫的な取り立てや不動産の競売で破産や自殺に追い込まれるケースが相次いだ。
背景には、経営者に「迷惑はかけないから」と頼み込まれ、経営状況や保証のリスクをよく知らないまま、家族や親類・友人や従業員など人間関係を大切にする日本人気質に依存する慣行が保証人を追い込んできました。
新しいルールが保証人保護にどこまで踏み込むかは不確定ですが、金融機関側もなるべく多くの保証人が居ることによって貸し出しがしやすかったわけですが、今後は貸し手責任として個人保証に頼らず企業の返済能力を見極める『金融機関本来の能力』が求められることになりそうです。