まさに文字通りだった今年のゴールデンウィーク
最近「中国大媽」という言葉が中国の経済紙やWEBサイトのコラムを賑やかしている。もともと、単なる「おばちゃん」または「おばあちゃん」という意味のものだったが、最近は、一般消費者特に理性に欠けている投資家のことを言うようになって来ている。
「中国大媽」が一躍注目されるようになったのは、終わったばかりの「黄金週」の時からである。ゴールデンウィークのことを中国語では「黄金週」という。マスコミは今年のゴールデンウィークはまさに「黄金週」そのものだったと分析している。
写真はテンセントファイナンスに掲載されたもので、杭州市民がゴールデンウィークの連休期間中に、宝飾店に押し寄せて押すな押すなと金(ゴールド)を買い求めている様子が撮されたものである。北京、上海、南京、香港ともにこのような風景が見られ、290万元の現金で、10㌔をまとめ買いをしたという人もいたという。
マスコミでは、国際金価格が4月12日の暴落から、ゴールデンウィークまでの10数日間で、「中国大媽」は、1000億元(約1兆6000億円)を投じて、合計300㌔の金現物を買ったとの報道も出ている。さらに一部では「中国大媽」対「国際ヘッジファンド」との見出しで、4月29日から金価格が下げから回復基調に向かったことを「中国大媽」がヘッジファンドに勝ったなどと実しやかに報じているサイトも出てきた。
「金の衝動買い」引き起こした中国独特の投資環境
こうした消費者や投資家の「衝動買い」の背景には、中国の投資及び経済の現状があることは否定できないと考える。ギャンブルは基本的に禁止されている中国では、投資と言えば、以下四つのチャンネルしかないからである。
一つ目は、貯蓄だが、現在の預金金利は、中央銀行が決めている一年物基準金利は3.0%であるが、しかし、消費者物価指数(CPI)は政府公表で3.5%あって、銀行に寝かせておけばおくほど、目減りしていくだけである。
二つ目は、株式投資だが、昨年中国のGDPは7.8%でここ数年と比べて若干落ちてはいたものの、世界的に見ても、この10年世界経済をリードしてきたことは疑いの余地はない。しかし、中国の株式市場はと言えば、2012年の上海A株の成長率は主要先進国や新興国の中では、最下位という不名誉に終わったのである。投資すればするほど損だったことでは、これも貯蓄と変わりはない。
三つ目には、いわゆる骨董品や芸術品の投資である。しかし、芸術品に関しては、市場に任せている部分が大きく、価値の鑑定も不明朗なところが多く、価格も一般消費者や投資家の手の届く範囲をはるかに超えているので、基本は対象にはなれない現状である。
そして不動産も自動車も購入制限がある中で、残りは、金(ゴールド)。グラム単位で投資できるのが楽しみで、猛烈なインフレに対抗できるという期待感が持てるのも金だけになってしまうのである。
もともとゴールドが好きな国民性で、ゴールドへの崇拝が人一倍持っていると言っても過言ではない。しかし、宝飾品としての金と投資としての金の保有はまた別物だということの分別ができていないところが「中国大媽」と言われた所以ではないかと思う今日この頃である。