目次
はずれ馬券は経費として認められるか

今年5月、競馬ファンにとどまらず非常に興味深い裁判がありました。
大阪市在住の元会社員男性は市販されている競馬予想ソフトに独自の条件を設定し、ネットで自動的に馬券を購入するシステムでほぼ全レースを購入し、2004年に元手100万円からスタートして、2007年から2009年の3年間で馬券購入費28億7,000万円に対して、払戻金総額が30億1,000万円という恒常的に大口の競馬をしていました。利益は1億4,000万円と思っていたところ国税局から思わぬ指摘がなされました。
国税局は、「競馬での払戻金は本来は所得税の一時所得。 当たり馬券の購入額1億3,000万円のみが経費として控除でき、28億8,000万円の所得を申告せず、5億7,000万円を脱税した」と主張。一方、元会社員側は、外れ馬券の購入費27億4,000万円も経費として認めてほしいと訴えていました。
競馬ファン注目の判決は?
注目の裁判で裁判長は、「一般的に競馬は娯楽でレース結果も偶然に左右されるため、払戻金は原則は一時所得としながら、本件馬券購入行為は娯楽だけでなく、資産運用のものと捉えられるため一般とは異なる。営利目的とし、一時所得には当たらない。雑所得に分類される」と説明しました。
『雑所得』扱いになったことで、脱税額は5億7,000万円から5,200万円に減額されました。
元会社員は「利益があった以上、納税の義務があるので、やむをえない。全面的に主張を認めてもらい感謝しており無申告だった責任は果たしたい。控訴しないつもりだ」と弁護士を通じて心境を明らかにしました。
今回の判決は娯楽の範囲を超えた資産運用として捉えられたもので、一般の競馬ファンの場合は依然として『一時所得』のままで、どこからが『雑所得』扱いになるのかの明確な基準は曖昧なままとなっていますので、すべてが今回の判決のように『雑所得』の扱いにならないので注意が必要です。
競馬やパチンコなどはお小遣いの範囲でほどほどに・・・
競馬の還元率は75%程度といわれています、つまり100円の馬券を購入しても払戻金は75円ということですね。競馬に限らずパチンコの還元率は80~90%、宝くじにいたっては半分以下の45%程度といわれています。
いずれも当然ながら人件費や運営費もかかることから100%を超える還元率は望めるはずも無く、購入者が”必ず損をする”仕組みになっています。
今回判決を受けた大阪市の元会社員は100万円を元手にスタートして以後一度も資金を追加せずに、当たり馬券の範囲内で購入し続け、『借金などに依存せず非常に堅実なやり方』で黒字を重ねていったということで非常に稀なケースと思われます。
一般的によく耳にするのは負けが込んでサラ金で借金、給料の大半を浪費し通常の生活に支障がでるなど止められなくなる方も多く、数少ない成功体験が次の成功を期待する『依存症』となり精神疾患と診断される報告もされています。
還元率なども参考にしながら、『夢を買う』という意識で、お小遣いの範囲で楽しむ程度にして、くれぐれも深入りは禁物ですね・・・