2014年の4月から消費税が8%に上がりますが、上がる前に購入しようと昨年住宅の駆け込み需要があったのは記憶に新しいところです。「消費税が上がる、大変だ!」とおっしゃる方は多いのですが、かなり誤解があるのも事実。そこで消費税が上がる前に、今一度、消費税の基本を確認してみませんか。
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そもそも消費税ってなに?
消費税は、商品の販売やサービスの提供などに課される付加価値税です。税金を負担する人と税金を納める人が異なるので、間接税に分類されています。お店で商品を購入する際、消費税分を上乗せして支払っていますから、自分は消費税を納めているぞと思っている方も多いのですが、税金を国に納めるのはお店であって、皆さんではありません。
お店は、皆さんから消費税を預かって、仕入れの際にお店が支払った消費税と相殺し、差額を国に納める(仕入れで支払った消費税の方が多ければ還付を受ける)ということになります。
消費税は、「消費」という行為に広く課税されるものなので、「消費」されないものには課税されません。たとえば、土地は消費されてなくなることはないので、土地の譲渡や貸付けは非課税です。マンションの価格は土地と建物の合計ですが、土地部分には消費税が課税されないので、まるまる購入価格に消費税が課税されるわけではありません。
建物の譲渡や貸付は原則として課税対象になりますが、住宅の貸付は政策的な観点から非課税になっています。つまり、事務所を借りると家賃に消費税が課税されるけれど、住むためのアパートの家賃には消費税が課税されないということです。
「消費税」で見る世界の中の日本
消費税は、1989年4月1日に導入され、当時の税率は3%でした。1997年4月からは5%に引き上げられ、このうち1%を地方消費税としました。地方消費税は、地方の重要な財源となっています。世界100か国以上で消費税が採用されていますが、スウェーデンなどの北欧諸国は25%、欧州諸国は20%前後が多く、中国17%、韓国10%と、いずれも日本よりははるかに高い税率です。
北欧諸国でこれだけ消費税が高いのになぜ文句を言わないのかといえば、社会保障制度が充実しているので、安心して暮らせるのなら、少し税金が高くても仕方ないと考えているからでしょう。この点状況が異なるので、日本では、増税する前に公務員制度の改革や国会議員の定数削減など、やることがあるのではという議論があるのは周知のとおりです。
日本の消費税
増税にあたっては、低所得者ほど税負担が相対的に重くなる「逆進性」が指摘されています。日本では、年金暮らしのお年寄りが購入するお米にも、お金持ちが購入する高級車にも、一律に同じ消費税率が適用されます。海外では、食用品など生活必需品とそれ以外で税率を分けて設定している国が多いのです。
たとえば、イギリスでは食料品に消費税がかかりません。日本では、低所得者向けに、消費税負担の一部を還付する給付付き税額控除の導入が検討されていますが、流動的です。
もっとも、住宅取得に関しては、「すまい給付金」が導入されました。すまい給付金は、8%の消費税が適用される住宅を取得する場合、引き上げによる負担を軽減するために現金を給付する制度です。適用になる収入の目安は、消費税8%時は510万円、10%時は775万円以下となっています。
「消費税UP」に振り回されないために
住宅取得時期を巡ってフィーバーした消費税ですが、冷静に考えれば、むしろ消費税が8%に上がってから購入した方が得なケースもあるわけです。消費税増税と同時に、住宅ローン控除の最大控除額が2倍の400万円に拡充されます。所得税から控除しきれなければ一定額を住民税から控除することもできますし、さらにはすまい給付金を受け取れるケースもあります。
また盲点ですが、消費税は新築住宅を購入する際には課税されますが、そもそも中古住宅を取得するのなら課税されないことが多いのです。消費税は、課税事業者が行う建物の譲渡には課税されますが、個人が自宅を売却した場合には課税されません。中古住宅では、売主が個人のケースが多いため非課税というわけです。しかも中古住宅であっても住宅ローン控除の対象になります。
ただし、中古住宅は修繕にお金がかかることも多く、修繕費には消費税が課税されますから、この部分は考えなければなりませんが。いずれにせよ、目先の消費税アップだけに振り回されるのではなく、トータルで考える視点が必要でしょう。(執筆者:草薙 祐子)