先日の営業(生命保険)先でのこと、日頃温厚な事務機械販売業の”真似達雄(まね たつお)社長”がやけに神妙な顔をして、「そろそろ息子に後を継がせたいのだが、私の退職金について色々アドバイスをしてくれないか」と言われました。
よく話を聞くと、
・どの程度貰っていいのか?
・退職金には税金がかかるのか?
といった事を知りたいようでした。
生命保険の法人契約においては万が一の保障は勿論ですが、従業員の福利厚生に関わる保険加入の相談、また役員の退職金準備についての案内を求められる事が多々あります。今回の真似達雄社長も以前にお渡ししたパンフレットを覚えていて、私に相談されたようです。
退職金の目安
先の質問についてお答えしていきましょう。まず、社長の退職金の目安ですが、いわゆる「お手盛り」(自分で自分の退職金を増やすこと)を避けるため、一般的には下記の算式で対応されています。
役位別に定める率の例としては、
•会長・社長:3.0
•専務:2.5
•常務:2.3
•取締役:2.0
•監査役:1.5
がごく一般的な数値です。真似達雄社長は、最終報酬月額100万円、勤続年数20年、役位別の率3ですから、100万円×20年×3=6,000万円 が一つの目安となります。
退職金にかかる税金
次に退職金にかかる税金ですが、退職所得として税金がかかります。しかし、退職金の全額に税金がかかるわけではありません。収入のなくなる退職後の生活を考慮して、下記の勤続年数に応じた控除の枠があります。
※平成25年から、会社の役員等で勤続年数が5年以下の場合は、1/2とする措置が廃止されましたのでご注意下さい。
ここの退職所得控除額については、退職金をもらう会社での勤続年数により、下記のように計算されます。1年未満の端数があるときは1年に切り上げます。
20年以下 : 40万円×勤続年数
〃 : (80万円に満たない場合には、80万円)
20年超 : 800万円+70万円×(勤続年数-20年)
■事例1 勤続年数が11年2ヶ月の人の場合の退職所得控除額
勤続年数は12年になります。(端数の2ヶ月は1年に切上げ)
40万円×(勤続年数)=40万円×12年=480万円
■事例2 勤続年数が30年の人の場合の退職所控除額
800万円+70万円×(勤続年数-20年)=800万円+70万円×10年=1,500万円
最後に国税庁のホームページより、退職金所得についての説明を抜粋しておきますので参考にして下さい。(下線は筆者による)
退職所得とは、退職により勤務先から受ける退職手当などの所得をいい、社会保険制度などにより退職に基因して支給される一時金、適格退職年金契約に基づいて生命保険会社又は信託会社から受ける退職一時金なども退職所得とみなされます。
また、労働基準法第20条の規定により支払われる解雇予告手当や賃金の支払の確保等に関する法律第7条の規定により退職した労働者が弁済を受ける未払賃金も退職所得に該当します。
以上です。(執筆者:松山 靖明)