アベノミクス戦略が奏して円安・株高が進行。このおかげでかなりの利益を上げることができた方が少なくないようで、女優の松居一代さんにいたってはこれまで億単位の利益を上げたと報じられています。それだけアベノミクスがもたらした功績は大きいと言えるでしょう。
ただし、忘れていけないのは、好景気が永久に続くわけではないこと。いつの日か必ず景気の ‘下降気流’ がやってきます。景気も株価も一本調子で上がることはないのです。その根拠と言えるのが10年周期のサイクル。
「ジュグラーサイクル」というのを耳にしたことがあるでしょうか? 簡単に言うと、7~10年周期で景気が循環する理論のことで、着目点は企業の設備投資。この周期で企業は自社設備に投資をするとされていて、ジュグラーサイクルによって国全体の景気が影響を受けるというわけです。
10年周期に関連してもう一つ注目しておきたいのが、「7」の数字。
◆1997年:アジア通貨危機
◆2007年:サブプライム問題表面化
末尾が7の年数には必ずと言って良いほど金融危機が発生していますね。ということは、2017年にも何らかの金融危機が…と考えられています。実際に2017年かどうかは別として、アベノミクスと日本銀行黒田東彦総裁をもってしても、いつまでも円安・株高が続くわけではありません。過去の統計がそれを物語っています。
「売り」をメインとした投資術の必要性
では、円安急進の今、どんな投資術を学んでおく必要があるでしょうか? その一つが「売り」です。株も外貨も「買い」だけでなく、「売り」をメインとした投資術をマスターしておくなら、今後に備えられます。
株式市場と為替市場には一つの共通点があるのですが、それは「登り百日、下げ十日」。どちらの市場でも上げ相場には時間を要し、逆に下げ相場では鋭角的に下落することを如実に表している格言なのです。
個人投資家から一般的に好まれるのは「買い」。特に株式投資においては「買い」を中心とした売買が好まれており、信用取引を利用しての「売り」をメインとしたトレーダーはほんの一握りです。
しかし、ちょっと考えてみて下さい。景気後退の波は必ずやってきます。少なくとも株価調整は頻繁に発生します。その時に、株式市場または為替市場において、下降局面を利用した「売り」ができたら効率よく利益を上げられると思いませんか? 「買い」の “一本釣り” では、下降局面では手が出せません。下手に手を出せば損失が膨らみますからね。
でも、上げ相場では「買い」、下げ相場では「売り」。この二刀流ができれば、道理で言えば効率良く稼ぐことができ、しかも下げ足は早いとなれば、その分短時間高収入が可能になるのです。
下降スピードは上昇スピードより何倍も速い
なぜ下げ相場は鋭角的に下がっていくのか、その根拠となる説は幾つかあるのですが、ここでは「百聞は一見に如かず」。実際の株価チャートと為替チャートを見て、下げ足がどれだけ早いか確認してみましょう。まずは株価チャートから。
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ゼンショーホールディングス(証券コード7550)の5月14日~10月3日の日足チャートとなります。画像中の数字1~5でマークしている日付と株価をご覧ください。
2:7月2日/高値1044円
3:7月31日/高値1036円
4:8月7日/安値906円
5:9月10日/1035円
1の安値960円から2の高値まで要した日数は25営業日。それに対し、2の高値1044円とほぼ同価格である3の高値1036円から4の安値906円まで要したのはたったの5営業日です。そして同じく4の安値906円から直近高値である3の1036円付近まで回復するのに24営業日(5を参照)かかっています。
そう、「登り百日、下げ十日」の格言如く、株価が上がるのには時間がかかるのに対し、下がる時は正に鋭角的に、あっという間に下がるのです。それは為替相場でも同様です。以下、9月30日AM7:00~10月4日AM5:00、ユーロ/米ドルの1時間足のチャート画像です。
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2:9月30日20:00/安値1.25700
3:10月3日3:00/高値1.26896
4:10月3日23:00/安値1.2500
為替相場の下げ足に関しても一目瞭然ですね。1の高値から2の安値まで8時間、2の安値から直近高値と同レベルである3の高値まで回復するのに55時間、そして3の高値から4の安値まで下落するのに要した時間は20時間です。
株式相場と同様に、為替相場における下降スピードは上昇するより何倍も速いことが証明されました。このスピードを活かして売買することで、短時間でそれ相応の利益を得られるというわけです。
ただし、『相場は買うもので売りはいけ好かない』、『売るという行為は投機的』、『売りは危険』などの観念が少なくとも日本では普遍的ですので、「売り」を覚えるということに対してどうしても抵抗を感じるかもしれません。
しかし、相場は基本的に需要と供給で成り立っているわけですから、売る人がいなければ買うことができません。つまり、「売る」という行為で相場に流動性をもたらしていることになり、その行為は少なからずとも相場への貢献となっているのです。基本は買いですが、売りサインがでたら売るという投資行為で短時間高収入を狙ってみるのは如何でしょうか。
ちなみに株式相場で空売りをするためには、銘柄選びだけでなく信用取引を申請する必要があります。また、最低30万円の資金を株式口座に入金することが法律で定められていますので、もう少し気軽に「売り」をしたいというのであれば、数千円~取引できるFX(為替証拠金取引)の方がニーズに適っているかもしれません。
「備えあれば憂いなし」。円安急進の今こそ、下落相場に備えておきたいところです。(執筆者:堀 聖人)