相続争いが増えてきておりますが、相続争いを避けるもっとも有効な方法は適切な遺言書を作成することだと確信しております。ただ顧客や友人に遺言書の作成を勧めますと、けっこう誤解が多いなと感じます。ここで遺言に関する代表的な誤解をご紹介いたします。
目次
誤解1. 資産が少ないから相続でもめようがなく遺言など必要ない!
司法統計によりますと、今年の1~9月の相続争いは1,000万円以下が32%、1,000万円~5,000万円が43%と遺産総額5,000万円以下が75%を占めているとのことです。(日経記事 10月28日付け)
資産家は信託銀行や顧問弁護士等を使ってあらかじめ対処しているケースが多いと考えられます。資産が少ないと被相続人は生前贈与や遺言書を作成するなどの対処をしていない場合が多く、意外ともめるのではないでしょうか。
少しでも資産があれば相続後の対策を考えておくべきでしょう。
誤解2. まだ元気だから当分遺言など考えなくていいよ!
この方は遺言と遺書を混同しています。遺書は死ぬ間際に自分の思いをしたためた文書や手紙で法的拘束力はありません。一方遺言は自分の死後の財産配分等を明記したもので、法的拘束力があります。
大事なのは「作成者は正常な判断能力を持っていなくては遺言の効力がありません」ということです。私どもで公正証書遺言に関するご相談を受ける時には、被相続人の方がたとえば認知症のように正常な判断能力が無くなってきてからでは遅すぎますとお伝えしております。
元気なうちにこそ遺言書を作成すべきなのです。
誤解3. 子供もなく家内と2人きりだから遺言書など作成する必要はない!
とんでもない。こういった子供のないご夫婦こそ遺言書作成を考えなくてはなりません。
仮にご主人の両親は他界していてまた子供もなく、ご主人の兄弟(姉妹)がいる場合は、法定相続人は奥様とその兄弟(または甥・姪)になります。遺言書がないと相続人全員が出席して遺産分割協議を開かなくてはなりません。
ただ日頃付き合いがないのに、奥様が急遽兄弟達と一堂に集まって「相続財産の配分に関する協議」を開いてスムーズに決着すると思いますか? もめてまとまらず裁判にまで進むケースも数多くあります。そんな面倒な手続きを避けるためには遺言書の作成は大変効果的です。
誤解4. 私と家内は籍は入ってないが長年一緒に暮らしていて、兄弟・親戚も認めているのだから今さら遺言など無用だよ!
籍が入っていないと法的に配偶者と認められず法定相続人にはなれません。こういた法定相続人でない人に遺産を残したい場合は、遺言書できちっと相続財産の分与(遺贈と言います)を明記しておくべきです。遺贈でも相続と実質的にほとんど変わらずに遺産を分与することができます。(執筆者:須原 國男)