少額投資非課税制度(NISA)の本年度非課税枠期限が迫っている中、NISAの新規口座開設を促すCMなどが再び目立っている。「貯蓄から投資へ」も分かるが、投資するための最低限の資格があると私は思います。
目次
投資するための最低限の資格
2. 年収の最低6~12ヶ月分の預貯金があること
1の勉強については、必勝法などの胡散臭いことではなく、
を理解しなければならない、ということです。
例えば、日経平均株価の投資信託やETFなら、日経平均株価がどのようなもので(ファーストリテイリングなど株価の高い上位24社、約1割の会社の株価が、日経平均全体の半分価格を占めるため、上位24社の株価の影響を受けやすい)、どんなリスクがあるのか(為替相場、金利、インフレ率、業績など株価に影響を与える要因と方向)、といったことです。
2の預貯金については、特に重要です。最低6~12ヶ月と書きましたが、この預貯金は有れば有るだけ良いのです。しかしながら、今の低金利時代、預貯金の金利(普通預金は年利0.02%、定期預金は年利0.1%)では、効率が悪すぎるため、年収の半年から1年分としています。
では、なぜ十分な預貯金が必要なのか?
預貯金は万能な保険
2. 口数のベースで元本を確保
投資の必勝法があるとすれば、「買った値段よりも高く売る」なのですが、投資を現金化する必要に迫られるのは(売却希望ではない)、大抵は景気が悪い時。しかしながら、景気が悪い時というのは投資資産の価格も下がっている可能性が高いのです。十分な現金を持っているという事は、値下がりした時に売却しなくて良いという事です。
また、値下がりした時に売却しなくて良いという事は、多くの口数を売却しないで済むという事です。
例えば、1株1000円の株を1万株持っていたとすると、資産総額は1000万円になります。そのうち、500万円を必要とする場合、5000株を売却しなければなりません。もし株価が800円に下がってしまうと、6250株を売却しなければ500万円を確保することはできません。
株価が1200円に上がった時、5000株残っていれば、資産価値は600万円ですが、3750株しか(1万-6250)残っていなければ、450万円にしかなりません。口数が多いという事は、それだけ値上がりした時の利益も大きくなるのです。ですから投資資産を保有し続けるためには、リストラ、予定外の支出などに資産を売却しなくても済むだけの、十分な預貯金が必要なのです。
慌てて口座開設する必要はない
NISAで非課税対象となるのは、元本100万円までの売却益と配当金です。今年度分の非課税の権利を受けるには、11月現在、残りの投資期間で売却しなければなりませんが、運用期間2ヶ月ではたいした運用益は出ないでしょうし、配当金も今年中には出ないでしょう。
その年度分のNISAの非課税枠を利用するためには、必ずその年度内に、売却益か配当益を出す必要があります。利益が出なければ、免除される所得税は発生しないのです。
慌てて口座を開設し投資をしても、非課税の恩恵を得られないばかりか、無防備なまま自分の資産を価格変動リスクにさらしてしまうのです。
投資は節税目的でするものではありません。土台がしっかりしていないと、建物はすぐに崩れます。十分な額を預貯金して、土台をしっかり築いてからから投資をしましょう。(執筆者:田島 稔之)