師走に入り、平成26年も残るところ、20日余りとなりました。消費税の増税は先送りになりましたが、年が明けると、ついに『相続税大増税』の到来です。
以前にも触れましたが、今般の相続税の増税は、「平成25度税制改正」と呼ばれており、大きく7項目において改正がなされましたが、その内、増税と言われる原因となる項目は2~3項目となり、中でも大きな影響を与えているのが『基礎控除額の4割カット』であり今般の相続税の増税の最大要因とも言えます。
また、最高税率についても世界最高税率となる等、非常にインパクトがあり、こちらも話題となっています。
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実は相続税に関する相談は3分の1以下
私のように相続専門のコンサルティング業をしていると、知人と顔を会わせる度に、「相続税の増税で大忙しでしょう?」とよく声をかけられます。御陰様で、毎日、忙しく業務に邁進させていただいているのですが、しかしながら、その忙しさの最大の要因は、『相続税の増税』ではありません。
私が理事を務める一般社団法人東京相続相談センターでは、都内の複数の住宅展示場をはじめ、商店街や、富裕層の多い駅前等でも相続セミナーや相続相談会を定期的に行っており、お盆明け以降だけでも20件以上の相談会を開催していたり、また、ホームページを拝見された方からの相談数だけでも累計で200件以上の相談を受けていますが、こちらのデータから分析しても、やはり、同じことが言えます。
多くの方の最大の悩みは何なのでしょうか?
実のところ、相談される方の、当初の相談内容が『税金』についての相談は、半分以下で、概ね3分の1程度です。…では、残りの3分の2程度の相談内容は、いったい、どのような相談内容なのでしょうか?
それは、遺言や、遺産分割、遺留分等を代表とした、所謂『遺産分割』についてです。いつから呼ばれるようになったのか、世では、遺産相続で親族同士が揉めているケースを『争族(あらそうぞく)』等と皮肉っていますが、最も、注目されている『相続大増税』に関する内容よりも、『遺産分割』に関する相談が圧倒的に多い状況にあります。
なぜ今『遺産分割』に関する相談が多いのか
要因としては、時代とともに変化してきた家族や夫婦の在り方をはじめとした文化の変化が大きなものと言えます。
昔は、長男が当然相続する『家督相続』の時代がありましたが、昭和22年5月3日以降の相続については、『均分相続』へと変化しました。法律が変わっても文化は急には、追随しません。民法改正から70年近く経過した今でも、多くの方が『長男が相続するもの』と思っていらっしゃいます。
また、昔のように、子供が多い時代、養子に出されることは珍しいことではありませんでした。しかし、この養子によって、法定相続人が、あっちにも、こっちにも…等ということが多々あり、実務では、士業の先生方が、相続人の特定作業に一苦労等という事はよくあることです。
中には、それぞれの相続が起きた度にきちんと遺産分割協議等を行っておけば、そこまで複雑にならなかったものの、上記のように、『長男が相続するもの』と思って特に手続きをしていない等、昔の文化が中途半端に残っていることも悪影響し、いざ、法定相続人の特定をしたところ、法定相続人が数十人もいらっしゃる事が判明し、遺産分割協議が難航する事も珍しくありません。
また、昔と比較すると結婚観も変化しているせいか、離婚等により、前配偶者との間の子等の所謂、『異不母兄弟』等の問題も最近では増えています。
このような複雑な状況の方々が、円満に相続できるように事前に対策を行うのが、『遺産分割対策』なのですが、其々の想いも異なり、それこそ、人の心は十人十色で、通り一遍等な解決策はありません。
最も解決したいのは『相続税』ではなく『遺産分割対策』
最近では、インターネットによって、相続に関する様々な知識を得ることができるため、多くの方が自らの『権利』を知ることができ、その『権利』を自らが持つことを知った方の大半は、当然ながら、『権利』を主張されます。
法律系の士業の先生方の地道な活動もあってか、遺言の必要性が、ようやく認知されるようになってきましたが、せっかく遺言を作成しようと思っても、『遺留分』という問題が浮上したり、遺言だけでは対応できないこともあったり、遺言を作成しようにも、ご本人の事理弁識能力に欠けているため、遺言を作成することができない等、様々な問題が存在します。
当然として、上記の『遺産分割対策』を上手に纏める事ができれば、次に来るのが『相続税』への対策として、『納税対策』であったり、『節税対策』となるわけですが、これだけ『相続大増税』等と叫ばれる中、多くの方が、最も気にされていること、最も解決したいことは、『相続税』ではなく、何を隠そう『遺産分割対策』というわけです。(執筆者:雄樹 佐藤)