この間、ロングステイアドバイザーとなり始めて先般東京で開催されたロングステイフェアに参加してみました。あいにくの雨に拘わらず1万人を超える方が来場し、近年の関心の高まりを肌で感じることができました。
出店するブースの数も徐々に増えて、かつ多様な業種が参加しているようで、旅行代理店はもちろんのこと、金融や不動産、そして北海道などの地方自治体も活性化の一つの手段としてこのロングステイに着目しているようです。
さて、ロングステイと言えばかつてはハワイやオーストラリアでしたが近年は現実的に可能なエリアとして東南アジア、それもマレーシアの人気が高く、8年連続でNo.1の希望ロングステイ先に選ばれています。
それゆえ出店ブースも大規模なスペースを取り、セミナーもたくさん開催されていたのですが…妙にセミナーのお客さんが少ないようであり、それに代わってキャンセル待ちが出るほど長蛇の列を作っていたのがフィリピン関係のセミナーでありました。
確かにマレーシアは今年の1月より外国人が購入できる最低価格を100万リンギットに引き上げたため、実需で買うにしろ、投資をするにしろちょっとお高くなってしまいました。さらにセランゴール州では今年の9月に200万リンギットと倍額に変更されたため、そのような制限がなく、まだまだ安価なフィリピンに関心を向ける方が多かったのかもしれません。
最低購入価格が引き上がられるということは、障壁が高くなると同時に、売却時において市場の参加者が限定されることを意味します。自分で生涯住むならいいですが、売却して利益を確定させることをねらう投資家にとっては、いわゆる「出口戦略」が立てづらくなり非常に困ります。
このような規制がマレーシア全土に広がってしまうおそれがセミナーの客足の鈍さに繋がってしまったのかもしれません。
しかし、事情通のお話しによると、「今回規制が強化されたセランゴール州は首都のクワラルンプールとは異なり、政治的にマレー人を保護する政策を打ち出す必要があったためこのような規制の強化が行われた。しかし、連邦制国家なので必ずしも他の州が追随するとは限らない」というお話しをされました。真偽のほどはわかりませんが、現地でビジネスをされている方のお話しなので非常に説得力があります。
このように不動産の投資には実は政治的要因が大きく関係し、それが政策や規制となって現れます。従って海外不動産を考えるには税法や為替以外にもその国の行政システムや政治の状態までホントはちゃんと把握したほうがいい投資ができるのかも知れません。
なんとなくマレーシアを嫌ってフィリピンへ関心を向ける方も、“なんとなく”ではなく明確な理由をもたないと、また流れ流れてしまうのかも知れません。また、このように考えると、今の日本は投資対象としてどのように映るのでしょうか? 政治が安定していると言えるのでしょうか? 一度日本にロングステイしている外国人に聞いてみたいものです。(執筆者:田井 能久)