国立社会保障人口問題研究所のデータによれば、平成24年に生活保護を受けた世帯でのうち半数の世帯が「世帯主の傷病」と「貯蓄の減少・喪失」でした。続いて「定年・失業」が理由の1つになっていました。最近、バッシングされることの多い生活保護ですが、多くは「仕事を怠けているから」受給しているわけではなく「やむを得ず」受給していることがわかります。
生活保護率は全国平均で約16%。地域によっては、30%超えているところもあります。結構多いと思いましたか? 決して他人ごとではありません。いざというとき社会のセイフティーネットを使うのは、悪いことではありません。併せて社会保険制度や免除制度についても確認してみましょう。

目次
貯金がない、病気でお金がかかる、これ貧困?
病気やケガで稼げなくなった、貯金が尽きていく…。保険も入っていなかった…どうしよう? そんな時まずどうしますか?
答えは、まず社会保険制度や免除制度を利用することです。
日本では強制保険である社会保険(健康保険、雇用保険、国民年金)が、病気、ケガ、失業など不測の事態をカバーしてくれることがあります。また、所得税や住民税なども免除や減免の制度があります。元気な時には税金や保険料を払っているのですから、是非活用しましょう。
健康保険の高額療養費はみんなの強い味方
病院の支払いが高額であれば、高額療養費を申請しましょう。会社員でも、自営業でも、主婦でも、学生でも、失業者でも…誰でもできます。
事前に入院などがわかっている場合は、限度額適用認定申請書を健保組合などに申請しておきましょう。年収÷12で約50万円以下(交通費込)の給与だと月約8万円の負担で済みます。無利息で貸し付けてくれる高額療養費貸付制度もあります。
国からの給付金、もらえるものはもらう!
自営業や主婦・学生などが稼げなくなって、障害が残れば障害年金や特別障碍者手当が支給されることがあります。配偶者が死亡したら遺族年金、離婚したら児童扶養手当があります、手続きはお早めに。
会社員が病気やケガなどで働けなくなった場合、会社は簡単に辞めないようにしましょう。業務外の病気やケガでも、連続3日以上働けない状態の場合、健康保険から傷病手当金が支給されるのです。傷病手当金はやむを得ず、会社を辞めざるを得なくなった場合でも退職後も支給されることがあります。
退職した場合、任意継続で健康保険を続けるか、国保にするか、選びます。扶養人数が多い時は任意継続(保険料が原則退職前の2倍)が有利なことが多いようです。国保には、失業による減免があるので、退職前に自治体のHP、または電話の問い合わせで計算してみましょう。
所得税、住民税の減免、国民年金保険料の免除制度などで負担を減らす!
収入がなくなり貯金が尽きた時に困るのは、税金や社会保険料の支払いです。特に住民税は稼いでいた前年の所得を基準に計算されるので、重くのしかかります。病気やケガ、失業、災害にあった…などやむを得ない理由の時は、減免されることがありますので、市区町村役場で相談してみましょう。
健康保険料が優先されることが多いと思うのですが、国民年金には保険料の免除制度があります。夫婦2人子供2人の家族で全額免除は前年の所得約162(年収約200)万円、1/4免除は前年所得約309(年収約400万)円の場合です。払えない場合でも滞納より免除された扱いの方が有利です。年金は老後だけではなく、若くても障害年金や遺族年金はあり得るのです。滞納せずに市区町村役場の年金課で相談してみましょう。
突然のリストラ… 収入はどうしよう?
会社員がリストラされた場合、雇用保険から失業給付が自己都合退職より優先して支給されます。病気やケガで退職し、今は働けない状態でも失業給付の権利はあり、給付をもらえる期間を3年間延長できます。住所地のハローワークに行きましょう。
生活保護、申請に行っても大丈夫?
日本弁護士連合会によれば、生活保護費を受けている99%が適正受給で、不正は1%未満、受給の資格があるのに申請しない人が80%もいるとのこと。
国からもらうべき手当をもらい、働ける状態なら働き給与をもらい、税金や国保料、国民年金の免除を申請しても、なお、生活が苦しいと感じるとき…。福祉事務所に相談に行くのもありです。福最低生活費と収入(手当や仕送り、給与など)の差額が生活保護として支給される可能性もあります。相談できる民間のネットワーク(あなたも使える生活保護[日本弁護士連合会] pdf)もあります。
借りるなら利息の低いところで
お金を借りたいときはまず、福祉事務所を訪ね、社会福祉協議会などの利息の低いところからお金を借りましょう。
親しい親戚の中に比較的裕福な人がいたら当たってみるのも手。「嫌われるかも…」と思うかもしれませんが、変なところで借金をして大変になるよりマシとも言えます。不測の事態をわかってもらえば、お金を貸すのに理解を示すかも知れません。
ネットで簡単、でも消費者金融には手を出さないで!
最近は、ネットで簡単に申し込みができ、即日融資してくれる消費者金融…。ヤミ金よりはマシですが、手軽な分金利が高いです。簡単に借りるのは避けましょう。
元気なうちに「貧困予防」を
日本人の保険加入率は90%、保険料月額平均は約3万5000円。こういう話になるといろいろ心配になり「保険に入ろうかな」と思ってしまうものですが、不測の事態を全て保険でカバーするのは現実的ではありません。確率のかなり低い出来事に対して保険料を払いすぎると、普段の生活を圧迫してしまうこともあるからです。
備えるのにお勧めは、車に乗る人は確率の高いと思われる自動車保険。人身傷害特約を付けると広くカバーされますが、保険料が跳ね上がり大変な時は、弁護士費用特約を代わりにつけましょう。別途ミニ保険で弁護士保険がありますが、そちらもお勧めです。
交通事故で被害者になった場合、主に相手の自動車保険を使います。相手が無保険車の場合、補償が充分受けられない可能性もありますし、相手側の保険会社から出し渋られる可能性もゼロではありません。弁護士費用を補てんしてくれれば、心強いですね。
持ち家の人は、地震保険を忘れずに。一部損でも給付金が支給されるので確率は高いです。確率は低いのですが保険料は安いので、自動車保険や火災保険に付帯して損害賠償保険も入っておくと、「万一の高額賠償請求」に備えられますね。
月々の貯金を殖やすというのはいい手段だと思います。貯金なら不測の事態と普段の生活と両方に対応ができます。使った残りを貯金するより、やはり財形や積立貯金など天引きが効果的です。元気なうちに「貧困を予防」する手立てをとっておくのが一番です。(執筆者:拝野 洋子)