「相続」から「もめごと」を連想される方も少なからずいらっしゃることかと思います。民法で「相続人」という地位はしっかり保障されているはずなのですが、法律通りにいかないケースも多くあります。
相続開始後なら尚更のこと、相続開始前でも自分に不利な相続にならないだろうかと不安を感じている方もいらっしゃるでしょう。そんな時にどうすればよいか解説します。
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目次
遺言書が作成された又は作成されたらしいという場合
生前贈与、特別受益をチェック!
自分はどのくらいの財産を引継げるのだろうか、他の相続人と比べて多いのか少ないのか…。遺言が作成されたとなると相続人としてはその内容が気になりますが、開封して中身を確認するわけにはいきません。つまり、相続開始まで待たなければならないのですが、その内容が自分にとって不利なものになっていそうだと思われる方は、遺留分のことを考慮しながら、生前贈与、特別受益を確認してみて下さい。
遺言書には遺言者の死亡時の財産の分割について書かれているわけですが、生前の贈与等について必ずしも考慮しているとは限りません。つまり生前に多くの財産の贈与を受けた上に更に遺言で多くの財産を相続するということもあります。この場合の遺留分を相続財産だけで計算するのか生前の分も考慮するのかによって大きく変わってきます。したがって、相続で不利を被る可能性のある方は、生前の贈与、特別受益についてその時に説明・証明できる材料を揃えておくと良いでしょう。
相続が開始され遺言書が存在する場合
先ず、遺言書の形式をチェックしよう!
遺言書があれば遺産分割はその遺言書に従うというのが基本的なルールです。遺言書があるわけですから、相続人同士又は相続人以外の分割は法定相続割合とはなっていない可能性が高いです。つまり、法定相続割合より多く貰う人と少なく貰う人がいるということです。少なく貰うこととなる人は面白くないでしょう。ただ面白くないと言うだけでは何も生まれません。
まず、この遺言書が有効なのかはしっかりチェックをして下さい。公正証書遺言書の場合不備があるケースはまれですが、自筆遺言書、秘密遺言書の場合は形式、内容に不備があるケースがあります。無効ということになれば、改めて遺産分割協議が行われることになります。
次に、遺留分の確認をしよう!
次に、遺留分について確認をして下さい。遺言書が自分にとって不利な内容であっても、被相続人の配偶者、子、直系尊属については最低限保障されている割合があります。その割合に満たない場合はその差額分を遺留分の減殺請求をして他の相続人から受け取ることができます。ただし、この手続きは自動的に行われるわけでではなく、減殺請求という手続きを踏まなければなりません。1年という時効もあります。
被相続人に負の遺産がある場合
負の財産を引継がないためには相続放棄は限定承認を!
相続財産はプラスの財産ばかりとは限りません。マイナスの財産、つまり債務も相続の対象となります。相続するプラスの財産の方がマイナスの財産より大きければ結果的にプラスになりますが、負債が多い場合には、
(2) 被相続人の債務がどの程度あるか不明であり、財産が残る可能性もある場合等に、相続人が相続によって得た財産の限度で被相続人の債務の負担を受け継ぐ限定承認
を選択すると良いでしょう。(1)の相続放棄、(2)の限定承認は共に相続の開始があったことを知ったときから3か月以内に家庭裁判所へその旨の申述をしなければなりません。葬儀等で2か月程度はあっという間に過ぎてしまいますので、3か月以内というのはかなり短い期間と考えておくべきでしょう。また、(2)の限定承認は相続人全員が共同して行う必要があります。
相続に係る様々な期限
とにかく期限は守ろう!
準確定申告は4か月
相続税の申告は10か月
遺留分減殺請求は1年
というように、相続に係る手続きには期限があります。これらに期限を十分に意識して事前の準備を進めておきましょう。(執筆者:本間 慶喜)