今年の正月に4夜にわたってNHKで放映された「ネクストワールド 私たちの未来」を皆さんはご覧になられたでしょうか。特に1月4日の第2回放送「寿命はどこまで延びるか」は実に衝撃的な内容でした。
現在一日5時間ずつ人間の寿命が延びており、30年後の2045年には平均寿命が100歳にまで到達すると科学者が予測しています。
これは再生医療や臓器再生という医療技術の進歩以外にも、「ヒトゲノム計画」完了による遺伝子解析により、様々な遺伝子プロダクツ(例えば、老化の遺伝子に直接働きかけ、20歳の状態に肌を若返らせる化粧品、肥満遺伝子に働きかけるダイエット食品、認知症に関係する遺伝子に働きかける健康補助食品、等)の登場により、アンチエイジング産業の飛躍的な技術イノベーションが勃興しつつあるようなのです。
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これは「アンチエイジング・イノベーション」と言っても過言ではないでしょう。
この未来予測は、国家として今後の経済や財政を考えるうえでも見逃し得ないことですが、個々人のライフスタイルにも大きな影響を与えるのは必至でしょう。
つまり、我々は100歳まで生きる時代、「寿命黄金時代」に突入したと言えます。
そんな時代が予測されているなか、現在の年金制度や健康保険制度は制度的に維持できるのか、また個人が加入している終身保険は通常103~110歳程度で死亡することを想定して保険会社が開発したものだが、その前提が崩れることになりはしないか。
逆に「アンチエイジング・イノベーション」により、介護保険制度自体が不要にならないだろうか。つまり年をとっても元気で若々しい男女が活躍する社会が出現しはしまいか。平均寿命と健康寿命が一致する社会であり、「老人」という言葉が死語になった社会である。
まるで夢物語、SFのような話であるが、NHKの番組はそんなことを想像させるほど衝撃的な内容であった。是非、機会があったら、皆さんもご覧になってください。(執筆者:伊藤 克己)