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まるで2つの株式市場があるみたい
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現在の日本株式市場には、性格の異なる2つのグループが混在しています。
日経新聞にも同じような内容が掲載されていましたが、次のように分けることができます。
「理屈が通らない銘柄」 と 「理屈が通る銘柄」
内需株と輸出関連株はわかりやすいと思いますが、理屈とは?
この理解は、「株式は他の運用資産と違います。」を知ることから始まります。
株式にはコア(核)の部分、そしてコアを取り巻く部分があることが、他の運用資産との違いです。コアの部分も大きくなったり小さくなったりしますが、これを取り巻く部分も大きくなったり縮んだりします。
コアの部分があり明確に数値で表されているため、コアを基準に、取り巻く部分が膨らむと割高。縮むと割安であることが簡単に判別できます。
コアの部分には企業の利益から導かれる「一株利益」が使われることもあり、企業の純資産から導かれる「一株純資産」が使われることもあります。
株式投資における理屈とは?
今回は企業の利益から見た理屈をご紹介します。
一株利益をコアとして、取り巻き部分が膨らむことで株価が形成されます。この膨らんだ部分は「PER」とよばれます。
株価=一株利益×PERです。PERが大きくなると割高、小さいと割安と判別できるため、投資家はPERの大きさを逐一チェックしながらバランスを取った運用をするのです。一定範囲の中でバランスの取れた売買が行われていれば、それは「理屈が通る銘柄」です。
そして、どう考えても割高なのに一定範囲に戻らない銘柄が「理屈が通らない銘柄」です。
現在、一般的に輸出関連株は理屈が通る状態で売買されていると言えます。しかし内需株の多くはまったく理屈が通らない状態となっています。
PERが平均的な18倍に近づいてきたからそろそろ警戒が…と言っている、外人や投信保有が多い輸出関連株。
大した利益も出していないのに、PERが30、40、50倍になろうとも買われ続けている内需株。まさに二極化しているのです。
ではなぜ、利益面から見た理屈が通らない銘柄が存在し続けるのでしょうか? さまざまな理由が考えられますが、私は次のように考えています。
・配当を考慮すると割高でない。
・株主優待が適正水準をゆがめている。
・割高さを意識しない、能天気な投資家が多い。
・チャート上で売りシグナルが出ていない。
・巨大な買い手がいる。(年金資金、ゆうちょ、日銀の緩和マネーなど)
明らかに割高と分かっているのに、値下がりしない理由はしっかりと存在しています。特に純資産や配当からの判断であるのならば、それはよく理解できます。
しかし、利益も期待できず、配当も少なく、純資産からも割高とされる真の理屈の通らない銘柄が高値となっている理由。一方の理屈が通っている輸出関連株がそれほど割高なところまで買われていない理由には頭を悩ませています。言うなれば、価値あるものが安く、価値のない見せかけのものが高くなっている理由が分からないのです。
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割高銘柄には注意!
今の株式市場はこんな状態ですが、内需株も国際基準を物差しとする投資家たちがまったく関与していないわけではありません。そのうちに見捨てられる可能性は大いにあります。
また、高値更新を続けている理屈の通らない銘柄も多くありますが、3月下旬に比べると下落し始めている銘柄も数多くあることは知っておくべきでしょう。
純資産からも割高、配当利回りも低い、成長期待も実績もない。こんな状態となっている真の理屈の通らない銘柄を支えているのが、株主優待や景気回復イメージに踊らされている能天気な個人投資家であるのならば、「株なんてやっぱり損するんだ。」、「株は怖い。二度と手をださないようにしよう。」などの嘆きが近々連呼されるような気がします。
※筆者が調べたところ、100以上の真の理屈の通らない銘柄が存在していると考えています。
理屈が通じない異常な状況が長く続くことはない。株式市場が絶好調な今だからこそ、そう考えるべきではないでしょうか。
緩和マネーを抱えた巨大な買い手がうごめいている中、そう簡単に全面安にはならないと思います。しかし、価値のない銘柄はそのうちに所定の位置(=低い株価)に収まる可能性が高いと考えています。
自分が保有している銘柄は割高なのか割高でないのか? 一度考えてみてはいかがでしょうか。株式市場全体ではバブルでないが、一部銘柄は明らかにバブル状態である。この認識が今求められます。(執筆者:山副 耕一)