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ふるさと納税フィーバー
いわゆる「ふるさと納税」について改正があり、だいぶ使い勝手がよくなります。ふるさと納税とは、ひとことで言うと、都道府県・市区町村に寄付をすると、寄付金の合計額から2,000円を控除した額の税金が戻ってくるという制度です。
2015年度からは、減税対象となる寄付の上限額が住民税の1割から2割に引き上げられ、一定の要件を満たせば確定申告が不要になります。
面倒な確定申告不要で、寄付をした自治体からはびっくりするほど豪華な地元の特産品や工芸品、中には金券や宿泊券などが送られてくることもあって、人気が高まっています。ふるさと納税でゲットできる商品の数々を検索できるサイトもたくさんあります。
1万円の寄付で、牛肉や海産物、米、地酒、果物などが送られて来たら嬉しいですよね。そもそも8,000円分は税金キャッシュバックがあるわけだし、2,000円の負担でこんな豪華な商品が手に入るなんて、何てお得という感覚です。サイトで検索して、限度額いっぱいまで寄付をして、各地の様々な商品をゲットすれば、お得度はさらに高まります。
ただ、これってなんか間違っているような気がしませんか?
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ふるさと納税の仕組み
一応、簡単にふるさと納税の仕組みをお話します。
話を単純にするために課税所得500万円で所得税率20%の神奈川県横浜市の人が、北海道に5万円の寄付をしたとします。
所得税では(5万円-2,000円)×20%=9,600円が還付されます。
住民税では所得税から引ききれなかった(5万円-2,000円)×80%=38,400円が還付されるので、合計48,000円、のキャッシュバックが受けられるというわけです。
これは、本来収めるはずの神奈川県や横浜市の住民税が安くなるので、結果的に北海道に税金を支払ったのと同じことになります。だからふるさと納税と呼ばれているわけですね。
ちなみに、寄付する自治体は自分の「ふるさと」である必要はなく、どこでもいいので、サイトで検索してお気に入りの豪華なお礼を送ってくれる自治体に寄付するというのでもいいわけです。
改正で使いやすく
改正についても触れておきます。2015年から2,000円を控除した全額が還付される寄付の上限額が、住民税の1割から2割に引き上げられました。ご自身の住民税がいくらかわかれば上限はわかりますね。住民税額が15万円の人は、これまで上限15,000だったのが30,000円に引き上げられるということです。
さらに、一定の要件を満たせば、確定申告が不要(ふるさと納税ワンストップ特例制)になります。
申告不要となるのは、もともと確定申告をしなくてもいい人、寄付先が5つまでの人です。サラリーマンでも株式、住宅、医療費等で申告が必要な場合は、今まで通り確定申告が必要となります。ふるさと納税ワンストップ特例制度が適用になる人は、寄付先の自治体がから居住する自治体に寄付金情報が直接通知されるので申告は不要。これでいっきに利用する人が増えるのではないかといわれています。
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ふるさと納税の本質
ただ、冷静に考えていただきたいのです。税金を払うことは単純に損することなのでしょうか。
実際に住んでいる市域で様々な行政サービスを受けているでしょう。その行政サービスのコストは、税金で賄われています。ということは、あなたが他の地域にふるさと納税すれば、それだけ地元の自治体の税収が減るということです。
税収が減れば行政サービスの質が落ちるかもしれない。ふるさと納税でブランド牛肉をゲットした、カニが送られてきた、高級いちごが食べられたと舞い上がる前に、その事実は認識する必要があるのでは。
各自治体がふるさと納税の品に工夫を凝らすのは、税収確保の面だけではなく、地域の特産物をアピールしたい、地域のいいところを知ってほしいという広報活動の面もあるでしょう。反面、乗り遅れると税収が減るかもしれないという危機感も見え隠れします。
忘れがちですが、ふるさと納税のいいところは、地域医療や保育施設の充実など寄付金の使い道を指定できることです。
通常、税金は徴収されるだけでそれがどのように使われているのかよく分からないところがあります。政治家が、どうでもいいようなことに無駄遣いしていると憤ることもしばしば。同じ税金を払うのなら、できるだけ自分の希望することに有効に使ってほしいという思いは誰にでもあるでしょう。特定の自治体に寄付をするのは、やはりその地域を応援したいという気持ちが基本ではないでしょうか。
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応援したい気持ちを大切に
私の出身は岩手県なのですが、東日本大震災のとき、いてもたってもいられず岩手県に寄付をしました。そんなにお金があるわけでもないし、大した金額でもないのですが、すこしでも役に立ててもらえたらという思いでした。
FPなので、当然ふるさと納税のことはわかっていましたが、申告しませんでした。あの時は、なんだか税金がどうとかどうでもいい気がして申告する気にもなれなかったのですね。まあ、利用できる制度は利用した方がいいと思いますが、なぜそこに寄付するのかは、一度考えていてもいいのでは。カタログショッピングのように、お得な商品を選ぶのとは、本質的に違うのですから。
株式投資をする場合にも、基本的には嫌いな会社の株は買いません。値上がりするだろうという読みはもちろんありますが、株主優待はたまたまであって、それ自体を目的に投資することはありません。お金をそこに振り向けるというのは、やはりどこかに応援したい気持ちがあるからです。いい会社だから、きっと有効に使ってくれるだろう。これからもいい製品や、いいサービスを提供してほしいという願いもあるのです。(執筆者:草薙 祐子)