意外に知られていないのですが、住宅ローンを組む際に、返済期間が短いと金利が低くなります。短い、とは20年以下の場合です。
ローンを組むなら金利が低い方がいいに決まっていますが、返済期間を短くすれば毎月返済額は増えるので、全ての方にいい方法とはいえません。返済期間を20年以下にしたほうがいい場合とダメな場合について。フラット35を例に解説します。
目次
利息はどのくらい安くなるのか?
まずはメリットの検証です。3000万円を35年で返済する場合と、20年で返済する場合を比較したのが以下の表です。(諸経費は考慮していません)
返済期間により金利の差はここでは0.27%としていますが、何と利息の差額は501万円です。ただ、毎月の支払額は4万9099円多くなります。
返済期間を短くした方がいいのはどんな人?
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500万円の利息削減効果は魅力的ですが、若い方に関してはあまりお勧めしません。
若い方は今後家族が増える可能性があるのでうかつに毎月返済額を増やさない方がいいうえに、35年後もまだ現役であったりするからです。
私が20年以下のローンをお勧めするのは40歳以上の人です。
例えば高齢出産が増え40歳前後で子供を授かり、40代半ばでマイホーム購入に至る、というご夫婦。特徴として、それまで働いていた妻が高齢出産のリスクを考えて退職しているというご家庭が多いです。
上記のケースでいうと、45歳の夫と同年代の妻(子育て主婦)、幼い子供という家庭で3000万円のローンを組むとします。35年ローンを組んだら完済時の夫の年齢は80歳です。
一昔前なら、65歳までの20年間コツコツ払い残りは退職金で一括返済すればいいというのが常識でした。しかし今後は社会情勢の変化により、年金だけをあてにすることはできません。退職金はその後の夫婦の生活を支える大事な資金であり、安易に一括返済すべきではありません。また、退職金が出るかどうか保障されないという現実も考慮する必要があります。
そういう方は、最初から20年の返済計画はかなり有効です。
毎月返済額が多くなりますが、「毎月返済できる金額でローンを借りた方がいい」と方向転換して考えましょう。他の多くの記事で伝えているように、「借りられる額」ではなく「返せる額」を借りるのが正しい住宅購入術です。
・適正額を借りることができる
・退職金を老後資金に回すことができる
そんなメリットがある「返済期間20年」ですが、注意点もあります。ローンをゆっくり返済する利点といってもいいかもしれません。
夫が高齢ということは、健康リスクも高まります。
例えば返済19年目で夫が団体信用生命保険(以下、団信)に該当する病気になったとしたらどうでしょう?
20年以下のローンならば、既にローンはほとんど返済しきっているので団信が適用されるメリットは少ないです。
一方35年ローンの場合は、まだローンの残額がかなりあるので団信の適用は非常に助かるでしょう。更に、毎月支払額が少ない分、蓄えがあり治療費も十分確保できている可能性が高いです。
このように早く返せばそれでいいわけではありませんが、返済期間が80歳までというのは無理があると言わざる得ません。デメリットも考慮したうえで、退職金をあてにしなくてむす返済計画を立てましょう。
返済プランは人それぞれ
一般的に、住宅ローンの返済方法について硬直した考えをお持ちの方が多いです。
「最初は35年で住宅ローン、退職金で一括返済」、「余裕があったら繰り上げ返済」等の常識に縛られている方が多いのですが、住宅ローンはもっと柔軟です。ご自身のライフスタイルや家庭状況に合ったローン契約で、より良い返済プランを立ててください。
この記事が住宅ローン返済計画の一助になれば幸いです。(執筆者:横山 晴美)