日産自動車は、カルロス・ゴーン社長の2015年3月期の役員報酬が10億3500万円だったことを明らかにしました。前期の9億9500万円から4000万円増えたことになります。
また、ソフトバンクが去年9月から経営に参画した副社長のニケシュ・アローラ氏に対して支払った報酬は、去年9月~今年3月まで累計で165億5600万円に上るということも明らかになりました。
165億円もらえれば、一体1カ月あたりにいくら使えるのか?
毎月13.75億円使える! ということはなんと、毎日約4500万円使えることになります!! …なんていう妄想は置いておいて、現実的に“役立つ”話をしていきましょう。
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目次
税務上のポイント
こうした役員報酬、決定する際の税務上のポイントはどこにあるのでしょうか?
役員報酬というのはいわば社長の一存で決めることができてしまうため、無制限に役員報酬を認めてしまうと、役員報酬額つまり費用を引き上げて自社の税金をゼロにしたりといった、脱税や利益操作が可能となってしまいますよね?
役員報酬額をあまりにも自由にきめられてしまうのではマズい! ということで、法人税法は、「役員報酬の決め方についての決まり」として、次の3つ、を定めています。
1. 毎月同じ額にしよう!
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専門用語では
「定期同額給与」といいます。(法人税法34条1項1号)
つまり、「毎月同じ100万円」を役員に報酬として支払えば、税務上費用として認められるということです。
逆に、先月は売上が好調だったから100万円の役員報酬にしたけど、今月はいまいちだったなぁ…じゃぁ今月は50万円にしよう。などということはできません。
とはいえ、期中に業績が急速に悪化し、どうしても役員の報酬を下げなければ、会社の経営が圧迫されるという状況であれば、きちんと株主総会議事録を残したうえで役員報酬を減額して、その減額した金額を決算日まで毎月支払えば、税務上費用として認めてもらえます。
ただしこれはあくまでも、法人の経営状況が著しく悪化したこと、が要件となりますので、やはり基本的には1度決めた役員報酬の金額は1年間は変えれない! と認識しておくべきでしょう。
2. 事前に税務署に届け出よう!
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専門用語では
「事前確定届出給与」といいます。(法人税法34条1項2号)
つまり、事前に税務署に「25日に100万円を支払います」、という内容を届け出ておいて、その届出の通りに役員報酬の支払と記帳が行われれば、税務上費用として認められるということです。
例えば、25日に役員に100万円支払うと税務署に届け出たにもかかわらず、会社の資金繰りが悪化し、月末の30日にしか100万円を払えなくなったとします。この場合、会社が100万円支払ったとしても、25日に支払っていない限り税務上費用としては認められません。あくまでもきちんと届け出た支給日において、毎月支払をしなければ税務上は認めてもらえませんので、注意が必要ですね。
3. 利益に連動した額にしよう!
専門用語では「利益連動給与」といいます。(法人税法34条1項3号)
これは有価証券報告書を出す上場企業のみに許される規定ですが、あらかじめ役員報酬の算定基礎となる指標等を有価証券報告書に記載しておき、算定基礎に基づき役員に支払った場合に、算入を認めるという制度です。
世の中全員の目にさらされるであろう有価証券報告書に、「役員報酬の総支給額は、平成27年3月期の当社営業利益の0.1%とする(ただし1億円を上限)。」とか書いておくのです。そうすることで、この通りに算定された役員報酬であれば、税務上費用として認められることになります。
まとめ
(1) 毎月同じ金額を1年間支給すること!
(2) 年度途中での金額の変更を避けること!
(万一、業績悪化で報酬をやむを得ず減額する場合はきちんと株主総会議事録を残すこと)
何も考えずに多めに役員報酬1億円!などと決めたはいいけれども、後々やっぱり払えなくなって役員報酬を減らすハメになるのは、役員報酬が税法上費用として認めてもらいない可能性があるためダメです。
役員報酬の金額を決めるためには、やはり、あえて1年間の厳しめの売上予測を立てておいて、それに基づき現実的に払えるだけの額にする、ということが無難ですよね。
役員報酬として年間で低く見積もっても〇〇円なら確保できるから、じゃぁ1か月あたりは12等分して〇〇円にしよう、という決め方がよいと思います。(執筆者:植田 有祐)