例えば一家の大黒柱が亡くなった時、深い悲しみに襲われると同時に、生計を支えていた収入が無くなるのですから「さあ、これからどうやって生活をしていこう。」と頭を抱えてしまうこともあるかもしれません。
収入の多少は生活の安定に直結します。ご家族が亡くなった時に幾らかでも社会保険から受け取ることのできるお金がありますので、今回はご家族等の近親者が亡くなった時に取るべき社会保険の手続をお知らせします。
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目次
葬祭料(葬祭費)
健康保険に加入していた方もしくは扶養に入っていた方が、私傷病(業務上や通勤上の事由が原因でない病気や怪我等)で亡くなった時には、埋葬料もしくは埋葬費の名目で一定額を受け取ることができます。ただし亡くなった日から2年以内に申請しないと時効によって権利が消滅しますからご注意下さい。
健康保険に加入していた場合には金5万円。市区町村の国民健康保険に加入していた場合には、市区町村の基準によりますが金1万円~金7万円程度です。
(2) 手続
亡くなった方の健康保険証、住民票、死亡診断書、支給申請書、印鑑などが必要です。加入していた健康保険組合又はけんぽ協会、国民健康保険に加入していた場合には市区町村の担当課へお問い合わせください。
遺族年金
国民年金から支給される「遺族基礎年金」・「寡婦年金」・「死亡一時金」と、厚生年金から支給される「遺族厚生年金」があります。(今年10月から共済年金は厚生年金に統合されるため、国民年金と厚生年金のみについてお話します。)
亡くなった方が、どの年金制度に加入していたかによって受け取ることのできる遺族年金が異なります。また年金にも時効がありますので速やかに手続を取ることが必要です。
国民年金からの支給
1. 遺族基礎年金
自営業等で国民年金に加入中の方、国民年金の老齢年金の納付期間等を満たした方などが、18歳到達年度の3月31日までにある子又は20歳未満の障害のある子を遺して亡くなった時に、これらの子がいる配偶者又は子本人に対して国民年金から遺族基礎年金が支払われます。
イメージとしては、高校卒業前のお子様を遺してお亡くなりになった場合の養育費としての年金です。
子が1人いる配偶者の額 年間 金100万4,600円 (※子供の人数によって額が加算されます。)
2. 寡婦年金
自営業等で国民年金に加入中の夫が国民年金保険料を25年以上納めたものの、生前に年金を受け取ることなく亡くなった場合に支給される、いわゆる「掛け捨て防止」のための年金です。受け取ることができるのは10年以上継続して婚姻関係にあり、生計維持関係にあった妻です。
夫が保険料納付期間に応じて受け取ることのできた老齢年金の4分の3相当額
3. 死亡一時金
自営業等で国民年金に36か月以上保険料を納めた方が、生前に年金を受け取ることなく亡くなった場合に支給されます。受け取ることができるのは生計を同じくしていた遺族です。
前述の遺族基礎年金や寡婦年金とは異なり一時金です。
保険料を納めた月数に応じて、金12万円から金32万円までの6段階に分かれています。また額の加算(金8,500円)が行われることもあります。
また遺族基礎年金・寡婦年金・死亡一時金に共通する手続として、年金請求書、年金手帳、戸籍謄本、住民票、配偶者と子の収入額が確認できる書類(課税・非課税証明書、在学証明書など)、死亡診断書などが必要です。手続は住所地の市区町村役場で行います。
厚生年金の遺族厚生年金
サラリーマン等で、厚生年金に加入する方などが亡くなった時には遺族厚生年金が亡くなった方に生計を維持されていた遺族へ支給されます。
遺族基礎年金のように「一律に〇〇円」というのではなく、亡くなった方の平均標準報酬月額(簡単に言ってしまうと、「給料や賞与の平均額」)によって異なります。目安としては亡くなった方が受け取るべきであった老齢年金額の4分の3程度の額とお考え下さい。また一定の要件に該当する場合には額の加算があります。
(2)手続
前述の遺族基礎年金と同様に、年金請求書・年金手帳・戸籍謄本・住民票・年金を請求する方の収入額が確認できる書類(課税・非課税証明書など)・死亡診断書などが必要です。「年金事務所」または「街角の年金相談センター」で手続をします。
以上、ご家族や近親者が亡くなった時に是非覚えておいていただきたい社会保険の手続です。実際に皆さんが手続を取られる際には、市区町村役場の担当課や年金事務所等に事前にご確認の上、手続を進めてください。(執筆者:岡村 ひろ子)