マネーの達人の読者の皆様から次のような質問をお受けしました。
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ご質問いただいたご家族はご主人が60歳代でお子さんが一人だそうです。
詳しいご事情はわかりませんが、ご質問をいただいた方はどんなご家族なんでしょう? きっとこれからの相続について何か不安なことがおありなのだと思います。
ご質問を頂いたご家族はどんなご家族でどんな事で今悩んでいらっしゃるのか、少し私なりに想像してみました。(私の勝手な想像ですので実際の質問をしていただいた方とは全く関係がありません。)
65歳の夫は会社員を退職しこれからは年金生活です。会社員時代の蓄え(預貯金や株など)もあるので夫婦二人の生活に問題はありません。
自宅は30年前に購入した建物と土地。名義は夫妻で2分の1つづ登記されています。住宅ローンは既に完済しています。
子供の長男は既に独立をしていて遠方に暮らしています。孫は2人。長男家族は仕事の関係で将来も実家には戻ってくる予定はありません。
夫婦二人の将来の老後は子供には頼れないので、高齢の夫婦だけで生活が難しくなれば、施設に入所することもだろう、と考えています。
というようなご家族かもしれませんね。
今は預貯金や株といった金融資産もあるので、当面の生活は問題ないですよね。
目次
「不動産の名義」が運命の分かれ道になることも
10年経てば夫が75歳、妻が72歳。日本人の平均寿命が男女ともに80歳以上だとはいっても、いつまで夫婦二人で元気に自立して暮らしていけるか、そして最大の心配事は夫婦のどちらかが「病気になったら」、「認知症になったら」どうなるのだろうか? ではないでしょうか。
最近、私の事務所でご相談が多いのが、まさにこういったケースのご相談が多いんです。
先日、こんなご相談がありました。
自宅は夫の所有でした。夫は元気だけれども妻が最近認知症になってしまい夫妻だけでは生活に支障が出始めたのをきっかけで、二人で施設に入居しようとなりました。そこで、早急に夫名義の自宅を売却し、売却代金で施設に入居することになりました。
このご家族が幸いにも早急に自宅を売却できたのは、認知症になった妻の名義が不動産に入っていなかったからなのです。
もし、妻の名義が少しでも不動産に入っていれば、妻は認知症のため不動産を素早く売却することはできません。認知症になっている場合、成年後見人をつけないと売買契約を締結できません。成年後見人の申立には時間もかかるうえ、居住用不動産を売却する場合は家庭裁判所の許可も事前に取っておく必要もあります。
もし認知症になった妻の名義が不動産に入っていれば、これほど早く不動産を売却はできなかったはずです。
一方、こういうご相談もありました。
父と母で2分の1ずつの共有名義の実家。父が亡くなりました。幸いにも相続税はかかりませんでした。これは、実家の土地名義が父だけであれば相続税がかかりましたがが、母も不動産の持分を持っていたので、父の遺産の総額は結果的に父の不動産持分と他の資産を合算しても相続税がかからない遺産額になったからです。
父母の共有名義であったが故に相続税がかからなかったケースです。
将来の相続。一番悩んでしまうのが不動産の処分
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子が2名以上いれば、不動産を相続したい者、不動産をお金に換えて分配を望む者、と子供の不動産に対する考え方は色々です。
子が一人だけであっても、子が同居していればいいですが、遠方に暮らしていて実家に帰ってくる予定がなければ両親がともに他界した後、不動産は一体どうなるのだろうか、と心配される方も多いでしょう。
最近では、そのことを親としてしっかりと見据えて、親であるご自分たちが亡くなった後、不動産を巡って子供達が相続争いにならないように、子供達に迷惑をかけないように、遺言書を書かれる方もいらっしゃいます。
たとえば、
といったような
清算型遺言書を書かれる方も増えてきました。
「不動産を子供たちにのこす」という考えも随分と変わってきていますね。
平成29年「遺言控除」の新制度
今年の7月に発表された「遺言控除」の制度。注目すべき新制度です。
平成29年度税制改正での実施が目指されています。
不動産があるが故に起こってしまう相続争いや高額の相続税。遺産の分配について相続人達の折り合いがつかず、不動産処分が進まず地方の空家が増加する問題が、この「遺言控除」の制度によって大きく進展するかもしれません。
相続対策の正解は?
さて、ご質問をいただいた方に戻ります。ご質問を頂いた方の真のお悩みは何なのかは私には判りません。
不動産の名義は、単独? 共有? のどちらが良いのか、と正解を出すことも出来ません。
なぜなら、ご家族の構成や夫や妻の現在の健康状態、そしてこれからの人生のライフプラン(自宅で余生を過ごしたいのか、不動産を売って介護施設に入る予定なのか)、そして子がいるのかいないのか、子供に遺産を継がせたいのか、色々な環境によって、そして思いによってそのご家族にとって今考えられる最適な相続対策が違うからです。
平成27年1月以降に相続税が改正されたことを皮切りに、今後、相続や遺言の法律も大きく変わろうとしています。
ご自分の、ご家族の状況に合わせて法律をしっかりと理解しながら、ご自分のこれからの人生と将来の相続を、じっくりと考えていただきたいと思います。良い解決策が見つかることを祈っています。(執筆者:国本 美津子)