10月に入ると皆様のお手元にも、「所得税の生命保険料控除証明」が届くかと思います。このお知らせを機に保険の見直しや新規加入を考えている方も多いと思います。そこで保険の基礎知識をおさらいしたいと思います。
目次
保険料を構成する3つの要素

私たちが支払う保険料は、
と
付加保険料によって構成されています。言い方を変えると、純保険料は
予定死亡率(医療保険は予定発生率)と
予定利率、付加保険料は
予定事業費率、で構成されています。
つまり保険料は、予定死亡率(医療保険は予定発生率)、予定利率、予定事業費率の3つの要素で決定するのです。
なお、「率」がついているのは算出の際には、額ではなく比率で計算されるからです。
付加保険料(予定事業費)は保険会社の売り上げ
付加保険料は保険会社の売り上げで、会社の利益や、保険外交員(セールスマン、セールスレディ)の給与などの経費も含まれます。ネット販売の保険が安いのはこの事業費が低く抑えられているからです。
また、保険会社ごとだけでなく、保険種類によっても付加保険料は違います。外貨で運用する保険は事業費率が高めに設定されているようです。付加保険料は、保険金額や支払保険料に比例して算出されるのが一般的です。
予定死亡率は各社あまり差がない

純保険料はまず予定死亡率によって計算された保険料から、保険会社各社が預かったお金を運用する予定利率を割り引いて計算されます。
予定死亡率とは、たとえば、60歳男性の死亡率が1%で、60歳男性100人の保険加入者がそれぞれ100万円の保険に加入していた場合、その年に支払われる保険金は100人×1%=1名の100万円となります。100万円を100人で分担するので、その年の保険料は1人当たり1万円となります。
予定死亡率は、「生保標準生命表」を基礎率として使用しているため(同じ数字を基に計算するため)、保険会社によってあまり差が出ません。医療保険に関しては、給付条件が複雑な上、支払事由が生じても契約が消滅しないため(1回限りとは限らない)、発生率は保険会社によって異なります。
予定利率は運用資金にだけ適用される

予定利率とは保険会社が預かった資金を「年何%で運用しますよ」と約束した利率です。そういった意味では予定利率と予定利回りは同じです。ですが
保険の場合、支払った保険料の全額を運用するわけではありません。養老保険や終身保険のような満期金や解約返戻金のある保険の場合、保険料は死亡保障分の保険料と積立金分の保険料からの合算となります。
死亡保障分の保険料が運用に回されないのはもちろんの事、積み立て分の保険料全額運用に回されるのではなく、保険会社の経費を差し引いた後の金額が予定利率で運用されます。この点が預入金の全額が運用に回される預貯金と違います。
支払保険料からみると、予定利率と予定利回りは違うのです。
やたらと外貨建ての保険を勧める 保険会社がありますが、経費率の高い保険は、予定利率が高くても、運用に回る額が減ってしまうため、あまり運用期間が短いと、実質利回りは円建ての保険より低くなる可能性もあります。その結果、無用に為替リスク(円高や円安で受取金額が変わる)だけを負わされる事に成りかねません。
経費率の高い保険は、保険外務員の給与も高いので積極的に勧めているだけかもしれません。もし貯蓄目的で保険に加入するのであれば、そのお金を必要とする時期の解約返戻金、満期保険金の率を確認し比較してください。(執筆者:田島 稔之)