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生活保護制度とは、国が国民の最低限度の生活を維持するための公的な制度です。さまざまな事情で生活に困窮する人は国内にも数多く存在します。生活保護制度はそのような人たちが生活保護制度を利用することで、最低限度の生活を保障すると同時に自立を助長する目的があるのです。
生活保護受給者の多くは保険料を納めることができません。では、保険料を納めることができない生活保護受給者の方は要介護状態になった時に介護保険を受けることができないのか?
結論は「利用できる」です。
今回は生活保護受給者の方が介護保険を受けるにあたっての制度を簡潔に説明したいと思います。
目次
生活保護には8つの扶助がある。
まず、説明するのが生活保護制度における扶助の内容です。生活保護には8つの扶助があり、保護受給者の方は必要な扶助を必要な分だけ支給され生活しているのです。では、その8つの扶助とはどのようなものなのか、以下に記述します。
・医療扶助 ・出産扶助 ・生業扶助 ・葬祭扶助
扶助の内容は上記のようになります。それぞれの生活スタイルに合わせてどの扶助が必要であるか行政が判断し、保護受給者に支給されているのです。
介護保険の被保険者の定義
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生活保護受給者が介護保険を利用するのにはそれぞれ決まりがあります。
まず、介護保険の被保険者には2通りあります。
第2号被保険者…40歳~64歳未満で尚且つ医療保険加入者
このように、介護保険の被保険者には定義があります。保護受給者に関しては、介護保険の第1号被保険者と第2号被保険者でそれぞれ、生活保護の受ける扶助内容が変わってくるのです。
生活保護受給者が介護保険を利用した場合(第1号被保険者・第2号被保険者)
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まず、介護保険における第2号被保険者は医療保険から介護保険費が特別徴収される仕組みになっています。なので「医療保険加入者=第2号被保険者」になるわけですが、保険料を納められない生活保護受給者の人は、第2号被保険者になりえないのです。
理屈からすると、このような人が要介護状態になった場合、保険料を納めていないわけですので全額自己負担になると思われがちですが、このような人が生活保護を受給していた場合、生活保護費の中の「介護扶助費」という予算のなかで賄われるのです。
施設介護サービスや居宅介護サービスを利用した際の費用は利用者負担ではなく原則、現物給付として生活保護費から支給されるのです。
一方で、65歳以上の人は医療保険を支払っていない人でも全員が介護保険の第1号被保険者となります。
なので、介護保険における第1号被保険者の方で生活保護を受給している人が介護保険を利用した場合なのですが、少し複雑です。基本的に介護保険を利用条件として保険料を支払う義務がありますが、生活保護受給者の場合は保険料が「生活扶助費」から支給されるのです。正確に言うと、生活扶助費の中に介護保険料が加算される形になるのです。
そして、こうした人が要介護状態になった場合に介護保険サービスを利用した時に支払う1割負担は、生活保護の介護扶助から支払われることになるのです。
まとめると
介護サービス費の1割負担 → 生活保護の介護扶助から
それぞれ支給されるということになるのです。
まとめ
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上記でも記述したように、生活保護受給者が要介護状態になった時は介護保険のサービスを利用できるのです。このように本当に必要な人にとっては大変ありがたいこの生活保護制度なのですが、近年では不正受給者もいることから生活保護に向けられる世間の目は非常に冷たいものになっています。
がしかし、人が人として尊厳ある生き方をするために必要な費用であれば、当然国として支えるのが当然の義務です。
不正受給に関しては許しがたい事実ですが、困っている人のためにある制度なので、しっかりと活用してもらいたいものですね。(執筆者:西村 馨)