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株価上昇を受けて
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先日の報道では、「アベノミクス相場と呼ばれる日本株の上昇が始まってから、約3年が過ぎ、この間に日経平均株価は2倍強、個別では5倍以上の銘柄も続出」とありました。
例えば、セイコーエプソンの8.8倍、アルプス電気8.6倍、東洋ゴム7倍、富士重工6.5倍などといったところです。
セイコーエプソンは大容量インクタンクを備えたプリンターが東南アジアでヒット。アルプス電気は米アップルのスマートフォン向けの部品需要が増加するなど、円安の追い風も受けて随分と上昇したものですね。
これだけ上場株式の価格が上昇すると、人によっては今年の株式売買の結果が相当の「利益」になった方もいるでしょう。
このように上場株式等の譲渡にあたり「利益」が出ていれば、その譲渡所得に対し、現行で20.315%(復興特別所得税含む)の税率で課税されます。
多くの人が選択している特定口座(源泉徴収あり)では、既にその税率分が源泉徴収されているはずです。一方、特定口座(源泉徴収なし)や一般口座の方の場合は、確定申告によってその分を納税することになります。
もし含み損を抱えているなら…
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もちろん、利益が出たのですから、その分に対する税金は納めるのが当たり前なのですが、ここで考えたいことが一つあります。
それは、「すでに保有している株式などで、いわゆる「塩漬け」的な「含み損」を抱えているものがあるか?」ということです。
仮に含み損を抱えているものがあったとすれば、利益を出した同一年に売却損を計上することで「損益通算」が可能になり、(特定口座源泉徴収なし、一般口座、異なる金融機関を利用しての場合等は申告の必要ありますが)税金が戻ってくる、あるいは課税所得を軽減できるということです。
例えば、1年間にこれまでの売買で300万円の利益が出ていたとすると、これに対しては現行20.315%の譲渡税が課せられます。
一方で、保有している株式などでちょうど300万円の含み損を抱えている銘柄を売却したとすれば、(当たり前のことですが)1年間の譲渡益が0円になり、税金がかからないということです。(上記の例はぴったり300万円の損益ですが、利益より売却損が小さければ税金の減額となり、大きければ申告によって損失の繰り越しも出来ます)
売りっぱなしというのも…
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このように含み損を抱えている銘柄を売却して税金面の工夫をする際、もう一つ考えたいことがあります。
それは、目先の譲渡所得を軽減する目的はあるにせよ、「長年保有してきた銘柄を安値で叩き売る、売りっぱなしにするのはいかがなものか?」ということです。
銘柄によっては有益な株主優待や配当金があるものもあり、その権利をみすみす捨てるのもどうなのか?……あるいは、目先の節税的な目的で売却したはいいけど、売ったとたんに暴騰! などというケースも考えられなくありません。
ということで、(もちろん相場観などにもよりますが)“一度売却した銘柄を買い戻しておく”ということも一考に値すると思います。
買い戻したはいいけれど…
さあ! ここでさらに一つ考えたいことがあります。
それは、一度「損」を出すために安い価格で売った後、その安い値段で同一銘柄を買い戻した場合、今度はその銘柄の取得価格が安くなり、それをいずれ売却する際に大幅な譲渡所得になるケースも想定されるということです。(場合によっては元々の買値まで来なくても利益とみなされ課税されることもあるでしょう)
NISA活用術
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そこで、NISAの登場です。
もし安い価格で売却した後、同じ銘柄を買い戻したい場合に「NISA口座」を利用するのはいかがでしょうか?
つまり、一度売却した銘柄に何らかの魅力を感じている場合、「NISA口座」を使えば、少額投資非課税制度の特徴を活かし、買い戻した銘柄がいくら上昇しようとも非課税になりますので、この戦略はある意味有効だと考えます。
ただし、NISAの枠は来年から120万円に増えるとは言え、限度額があることには注意が必要ですし、一度売った銘柄を買い戻す場合に「仮装売買」や「相場操縦」等といった指摘を受けないためにも、また同一年内の損益通算は「受け渡しベース」になるため、念のため取引先の金融機関等に相談するようにしてからが良いと思います。(執筆者:阿部 重利)