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夫の定年をきっかけに離婚する夫婦が年々増えているようです。
20年以上連れ添った夫婦が離婚することを熟年離婚と言いますが、
と言います。
特に1990年代から2015年にかけて、それまでの2万件台から7万件近くに増えています。この時期に熟年離婚が急増した原因は、団塊世代の夫が定年退職の時期を迎えたことにあるようです。
目次
妻の不満と「年金分割制度」
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団塊の世代は高度成長期の時代で、夫は外で働き妻は家庭を守ると言ったパターンがほとんどでした。
子育てや親の介護を一手に引き受けてきた妻の蓄積したストレスが、夫の定年をきっかけに爆発し、妻の方から離婚を切り出すケースが増えています。
加えて、2007年から婚姻期間中に収めた夫の年金を夫婦で分割する「年金分割制度」ができてから熟年離婚が急増したと言われています。
2007年4月には、「合意分割」で妻の取り分は協議して取り決められましたが、翌年2008年4月からは、夫の同意がなくても2分の1が分割されるようになりました。そのことがまた、熟年離婚に拍車をかけたようです。
*国民年金は対象外です
妻が第3号被保険者(サラリーマンの夫を持つ専業主婦)だった場合は、夫の厚生年金及び共済年金は分割されますが、国民年金については分割の対象とはなりません。
財産分与について
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財産分与とは婚姻中に築き上げた財産の清算です。家、車、家具、預貯金その他、退職金、厚生年金などが対象となりますが、
一度も働いたことのない専業主婦も請求できます。
熟年離婚の場合は、ほとんど子どもが独立しているため、親権や養育費などでのトラブルは少ないようで、財産分割や年金分割が問題となるようです。
熟年離婚の場合のほとんどが協議離婚になりますが、協議離婚に際しても取り決めたことは書面に残しておくことが大事です。慰謝料が発生する場合は、浮気などの証拠が必要です。一般的な「性格の不一致」だけなら慰謝料は発生しません。
夫婦共倒れの危険性も
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夫の年金額が厚生年金や企業年金と国民年金などを合わせて20万円、妻の年金が6万円で合わせて26万円で悠々自適で暮らしていたとしても、夫の厚生年金を分割すると、単純計算だと一人当たり11万円から13万円ぐらいになるわけです。
持ち家があった場合は売却してお金を等分に分けることもできますが、賃貸住宅の場合はそうもいきません。一人で住むには広すぎる場合は、二人ともが住み替えることになります。
新しく賃貸する場合は敷金や礼金が必要な上、都心では家賃が10万円近くも必要となることになります。悲しいかな、二人では生活できても一人では生活できなくなるのが現状なのです。
勢いにまかせた離婚はちょっと待って!
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耐え難いDVや浮気といった理由もなく、長年の不満が原因というだけなら、夫婦間に少し距離を置いてみましょう
。
妻の本音が「亭主元気で留守がいいなら」夫の本音も「妻は元気で留守がいい」かもしれません。それぞれがある程度自由に自分のペースで行動するようにしてみるのはどうでしょうか。
熟年離婚で貧困世帯を2世帯作るよりも、1世帯で衣食住には困らない普通の暮らしを維持していく方法を選ぶのもアリです。気心の知れた同居人と割り切り、「夫婦共寝」から「夫婦別寝」に切り替えて、友達夫婦として良好な関係を築いていく方法もあります。
元々、夫婦は他人です。しかし、親子の血縁関係よりも愛情や信頼で結ばれた夫婦の絆は強いとも言われます。その絆がなくなった時、離婚も選択肢のひとつですが、熟年離婚は将来的なことも見据えてから行動に移すようにしましょう。(執筆者:志水 恵津子)