以前、年度末でも間に合う節税方法ということで5つの方法を紹介させていただきました。その続編として今回は年度末終了後、つまり決算終了後でも間に合う節税の方法について紹介したいと思います。
目次
1. 未払金、未払費用の確認

節税の方法というよりは経費の計上が漏れていないかどうかの確認です。決算終了日までに支払事由が発生しているが未払となっているものについては、未払金や未払費用として漏れなく経費計上してください。
「いつ引き渡しを受けて事業のために使い始めたか」
が判断基準になります。次のようなものは意外と抜けてしまいがちです。
(1) 社会保険料
社会保険料は1月遅れで預金口座から引き落とされます。例えば3月分については4月末日に預金口座から引き落とされます。また決算末日が土日や祝日の場合は2ヵ月分が未払いということになります。
(2) 給料
給料の締日が末日以外である場合、締日から末日までの期間分については未払計上することができます。例えば給料締日が20日の場合、21日から末日までに相当する給料の金額については未払計上することができます。
(3) 水道光熱費や通信費など
電気代や水道代、電話代は請求対象期間と料金支払日のタイムラグが生じやすい費用です。使用期間と支払日を確認すると、未払計上できるものが意外と多くあります。
(4) 請求金額が確定していない修繕費など
建物の修繕工事等で、決算終了日までに工事は終了しているが請求額が確定していないという場合があります。決算終了後、申告期限までに請求額が確定した場合はその金額を未払計上することができます。
また申告期限までに確定しない場合でも、合理的な見積金額を工事施工業者から提示してもらえば、その金額を未払計上することができます。
2. 経理処理によって前倒し計上できる経費の確認

経費の中には、経理処理によって費用計上のタイミングを調整できるものがあります。どうしても経費が欲しい場合、前倒し計上が可能な経費として次のようなものがあります。
税法上は継続適用を要件としないものばかりですので、利益の金額に応じて年度によって経理処理を変えるということも可能です。
ただし、会計上の原則と違った処理になることもあり、また経理処理の頻繁は好ましいものではありません。監査対象の法人や銀行からの融資を受けている法人については十分留意してください。
(1) 消費税
税込経理をしている場合、決算で確定する消費税については未払計上するかどうかは税法上任意となっています。利益が出過ぎた年だけ未払計上するということも認められています。
(2) 減価償却資産の取得
取得価額10万円以上の備品等は、原則として減価償却資産として耐用年数に応じて費用化していきます。
つまり、購入した年度に全額を経費にすることはできません。ですが、次の2つについては経理処理によって費用計上のタイミングを早めることができます。
イ.30万円未満の減価償却資産
中小企業者(資本金額1億円以下の法人等)は、取得価額30万円未満の減価償却資産については特例により取得した年度に全額経費にすることができます。ただし年間300万円までという限度額があります。
ロ.一括償却資産
大企業、中小企業に関わらず10万円以上20万円未満の減価償却資産については、一括償却資産として3年間で均等償却することができます。限度額はありません。
耐用年数が長い減価償却資産については、一括償却資産として処理することで費用計上のタイミングを早めることができます。
(3) 固定資産税などの税金
固定資産税や自動車税などは確定申告をすることなく税額が決まります。このような税金の課税の仕方を「賦課課税方式」といいます。
賦課課税方式の税金は「賦課決定日(納税通知書が届いた日)」、「納期開始日」、「実際納付した日」のいずれかのタイミングで経費にすることが認められています。
つまり決算日までに未納となっている税額を未払計上するかどうかは任意ですので、利益の状況に応じて経理処理を変えることができます。
まとめ
会計期間終了後に可能な節税というのは非常に限られています。今回紹介した方法も、結局は費用計上のタイミングを早めるだけのものです。効果的な節税とは言えません。
年度が終了すれば、また新たな年度が始まります。来年度の決算に向けて、経営計画と節税について早くから考えておくことが大切です。(執筆者:高垣 英紀)