前回(といっても昨年の秋くらいになりますが)は、結婚期間がそこそこあって、子どもも成人している、あるいはそれに近い熟年離婚の方を主に念頭に置いてお話しました。
結婚期間が短くて、子どもも未成年の場合
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今回は、比較的結婚期間が短くて、未成年の子どもがいる夫婦を前提にお話します。
前回、男性からの離婚申し入れの理由の一つに、男性の不倫(浮気)が挙げられるということに少し触れました。
この場合は、離婚の原因を作り出した、「有責配偶者」からの離婚請求となるため、妻が話し合いで離婚に応じないとき、裁判にまで持ち越すと離婚が認められるためのハードルが高くなります。
(1) 夫婦の別居が双方の年齢・同居期間と比べ相当長期間に及ぶこと
(2) 未成熟の子どもが存在しないこと
(3) 有責でない配偶者が離婚で精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状態におかれるなど、離婚請求を認めるのが著しく社会正義に反するような特段の事情がないこと
を満たすのが必要とされています。特に未成年の子どもがいる場合、離婚に至るまで難しいこともあります。
また、仮に離婚で話が進むことになっても、未成年の子どもがいる場合問題になってくるのが、養育費です。
養育費については、「養育費算定表」という、家庭裁判所での調停や裁判実務で利用される表をベースに考えていくのが一般です。
養育費算定表では、公立の学校の教育費を基準にしているため、私立学校へ通学する場合、あるいは塾や習い事の費用をカバーしきれない金額になることが一般です。
そのため、こういった私立学校の教育費や塾・習い事の費用をめぐって、夫婦がどれだけ負担するかで争いになることが結構あります。
さらに、最近は大学や専門学校への進学率が高くなっているため、養育費の支払いを子どもが20歳になるまででなく、大学・専門学校卒業の年の3月まで、とすることも増えてきたように思います。
そうなったとき、大学や専門学校入学のときの入学金や授業料の負担についても問題になってくることが多いです。
ここ最近は経済の動きが目まぐるしく、今好調な会社でも、数年後にはどうなっているか分からない世の中です。
収入が減り、あるいは転職や失業で当初決めた養育費が払えなくなったときは、再度相手と養育費の金額の話をし、場合によっては家庭裁判所の調停や審判手続きによる必要も出てくるでしょう。
離婚後の面会交流について
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また、ここ最近は「イクメン」というように、男性が子育てに関心を持つようになってきました。
そのため、夫が子どもの親権者になることを希望したり、あるいは離婚後も面会交流にこだわることが増えてきました。
面会交流については、子どもの成長にとって最もよいのはどういう形で行う場合か、をよく考えて調整することが大事です。
夫婦の話し合いでの調整が難しければ、やはり家庭裁判所の調停や審判手続きで行うことになります。
夫婦で直接面会交流に関する連絡や、子どもの受け渡しをすることに抵抗があるときは、民間の面会交流支援の機関を利用することも一つです。
費用がかかりますが、接触に心理的な負担がある場合(子どもをみている妻が抵抗を示すことが多いと思います)、スムーズに子どもと面会ができるようにするため利用してみるとよいでしょう。
親権については、これまでは子どもをみている親(通常母親のことが多いでしょう)の面倒をみる状況に特に問題がなければ、現状維持でその親が親権を獲得するのが一般でした。
しかし、子どもをみている親(妻)より、夫の方が柔軟な面会交流の条件を提示したことなどを理由に、子どもと別居中の夫に親権獲得を認めた、という判決がつい最近現れました。
今後、子どもの親権についても、面会交流への態度と併せて判断するケースが出てくることになりうるでしょう。
未成年の子どもがいる夫婦の離婚では、通常子どもをみている妻が親権をとり、夫は養育費も支払う一方、子どもに会うのは制限される、という状況は過去のものになりつつあります。
いずれにしても、未成年の子どもがいる場合は、子どもにとって精神的にも、経済的にも負担にならない形で離婚の話を進める必要があるでしょう。(執筆者:片島 由賀)