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新年度から国民年金の保険料が値上げ
新年度が始まる前後に、新聞やテレビなどを見ていると、新年度から変わることについての特集が、頻繁に行なわれております。
例えば国民年金は新年度から、保険料が670円値上げされ、月額1万6,260円になります。
これを見て国民年金の加入者である自営業者などは、昨年度も値上げしたのに、また値上げするのかと、怒りを感じたかもしれません。
こういった方が心を落ち着けるような話をしますと、平成16年に小泉内閣によって法改正が行なわれ、国民年金の保険料は毎年4月になると、値上げされることになりました。
これを受け平成17年4月から、国民年金の保険料は段階的に値上げされておりますが、無制限に続いていくわけではなく、今のところ保険料の値上げは、平成29年4月で終了する予定になっております。
つまりあと1年の辛抱となり、現在の安倍内閣が更に値上げを実施するというのなら、選挙で国民に信を問う必要があると思うのです。
ところで新聞やテレビなどで、こういった特集を見ていて、大事なものが抜けていると気が付きました。
それは平成28年度から、厚生年金保険に加入していた男性の場合、特別支給の老齢厚生年金の支給開始年齢が、61歳から62歳に引上げされ、無年金の期間が1年増えるというものです。
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1日違いで生じる約100万円の差
厚生年金保険の加入期間が、原則25年以上ある方が65歳に達すると、国民年金から「老齢基礎年金」、またその上乗せとして厚生年金保険から、「老齢厚生年金」が支給されます。
このうちの老齢厚生年金はかつて、60歳から支給されておりましたが、平成6年と12年に法改正が行なわれ、65歳に引上げされました。
ただ既得権を保護する観点などから、いきなり65歳にするのではなく、長い年月をかけて少しずつ支給開始年齢を、60歳から65歳に近付けているのです。
そのため現在でもまだ、60歳から65歳になるまでの間に、老齢厚生年金を受給できる方がいるのです。
この60歳から65歳になるまでの間に支給される老齢厚生年金は、65歳になると支給される老齢厚生年金と区別するため、「特別支給の老齢厚生年金」と呼ばれております。
厚生年金保険に加入していた男性の場合、平成27年度までは61歳以前に、特別支給の老齢厚生年金の受給権を取得し、その年齢から受給できました。
しかし平成28年度からは、62歳以降にならないと、特別支給の老齢厚生年金の受給権を取得できなくなるのです。
このような改正の影響を受けるは、昭和30年4月2日以降に生まれた男性になり、次のように生年月日が若くなるほど、支給開始年齢は65歳に近付いていきます。
なお法律上は誕生日の前日に、1歳年を取ることになっているため、昭和30年4月1日に生まれた方は、前日の3月31日、つまり平成27年度内に61歳になるので、その年齢から特別支給の老齢厚生年金を受給できるのです。
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厚生年金保険に加入していた女性の場合は次のように、男性より5年遅れで引上げが実施されているので、60歳から65歳になるまでの間に、初めて無年金の期間が生じるのは、昭和33年4月2日以降に生まれた方からになります。
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厚生労働省が発表している、「平成26年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、特別支給の老齢厚生年金(基礎及び定額なし)の受給権者に関する平均年金月額は、平成26年度末で8万1,229円になり、年額に換算すると97万4,748円になります。(詳細:平成16年度社会保険事業の概要)
つまり平成27年度と28年度を境にして、約100万円がもらえる方と、もらえない方が生じるのですから、新聞やテレビはこの大きな変化を、もっと特集すべきだと思うのです。
もし何かしらの事情があり、どうしても61歳のうちに退職したいけれども、無年金になるのは困るという場合、本来は65歳になると支給される老齢基礎年金を、繰上げ受給するという方法が考えられます。
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諸外国でも実施される支給開始年齢の引上げ
厚生年金保険に加入していた男性は、昭和36年4月2日以降生まれの方から、また女性は昭和41年4月2日以降生まれの方から、経過措置がなくなり、上記のように老齢厚生年金の支給開始年齢が、完全に65歳になります。
今のところ支給開始年齢の引上げは、これで終了になりますので、遅くとも65歳になれば、老齢基礎年金や老齢厚生年金といった老齢年金を受給できます。
ただ老齢年金の支給開始年齢を更に引上げするという話は、数年前から様々な場所で議論されており、いつ現実のものになっても、おかしくはない状況だと思うのです。
例えば厚生労働大臣の諮問機関である社会保障審議会では、「継続的に検討すべき事項」として、支給開始年齢の引上げが取り上げられておりました。
また社会保障審議会の「支給開始年齢について」という資料には、老齢年金の支給開始年齢に関する、次のような諸外国の状況が掲載されておりました。(詳細:平成16年年金制度改正「支給開始年齢について」)
66歳(2027年までに67歳に引上げ)
【ドイツ】
65歳(2012年から2029年までに67歳に引上げ)
【イギリス】
男性65歳、女性60歳(女性は2020年までに65歳に引上げ、その後は男女共に2024年から2046年にかけて、65歳から68歳に引上げ)
以上のようになりますが、日本より平均寿命が短い、こういった諸外国の取り組みを見ると、67歳~68歳程度への引上げは、十分にありえる話だと思うのです。(執筆者:木村 公司)