目次
はじめに
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マイナス金利の影響を受け、住宅ローンの金利がさらに下がってきています。
変動金利は0.6%前後、固定金利でも1%を割るなどこれから、お家を買う方にとっては追い風ですね。
とは言っても、マンションや一軒家の購入費は高額となります。
人生の中で“1番大きな買い物”となる方が多いことでしょう。
貯蓄や収入だけで購入するのは中々難しい現代です。
そこで、住宅資金を準備するにあたり、活用できそうな「住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」制度についてご紹介いたします。
「住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」とは
平成27年1月1日から平成31年6月30日までの間に、父母や祖父母などの直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた受贈者が、贈与を受けた年の翌年3月15日までにその住宅取得等資金を自己の居住の用に供する家屋の新築若しくは取得又はその増改築等の対価に充てて新築若しくは取得又は増改築等をし、その家屋を同日までに自己の居住の用に供したとき又は同日後遅滞なく自己の居住の用に供することが確実であると見込まれるときには、住宅取得等資金のうち一定金額について贈与税が非課税となります。(国税庁HPより)
本来は年間110万円を超えると親からの資金援助にも贈与税が課せられるのですが、住宅の購入に関する費用であれば範囲内で非課税となる制度なのです。
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お金をもらう側は、贈与税を支払うことなく、資金援助を受けることができ、また、お金をあげる側(両親・祖父母)は税金を気にすることなく子供や孫にお金(資産)を渡せるというメリットがあります。
しかし、メリットばかりではありません。気を付けなくてはならない点があります。
気を付けるべき点
ご両親から贈与を受ける場合、受贈者(資金を受け取る側)にご兄弟がいないか? という点です。
どなたか一人が資産の贈与を受けていると、他のご兄弟が不満を感じるのは明らかです。
また、将来的に相続が発生する場合、生前に贈与された資産についても考慮されます。
贈与の有無や金額に差があり兄弟間で不平等が生じると相続が『争続』になってしまうというケースがあるからです。
そうならない為に、他のご兄弟には、同等の資産を渡す準備が必要となります。
現金、株、保険など様々ですが、できるだけ法定相続割合に近い資産分配ができるよう心掛けなくてはなりません。
法定相続分=民法で決められた取り分のことです
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*子供が数名いる場合は、子供の取り分を均等に割ることになります。
具体例
要望:父は長男の住宅購入の資金(500万円)を援助してあげたい
【問題】
(2) 長男と同等の金額(1人500万円相当)を長女、次男へ渡すだけの資産がない
*実家は母が居住する為、所有財産は現金・株のみ
対策
長男のみに500万円を贈与してしまうと、将来の相続時にもめる可能性がある為、事前に「法定相続割合」に準じた資産分配ができるよう準備しておく。
<対策案>
*売却時の価格により金額が確定できない点と贈与税の準備が必要な点に注意
新たに生命保険に加入することで、相続資産を準備する⇒契約者:父 被保険者:父 受取人:次男
死亡保障(500万円)の生命保険に加入
このように、保有資産や、相続発生時に受け取ることのできる資産を使って他のご兄弟にも平等に分けるなどの対策が考えられます。
おわりに
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これまで年間110万円(非課税)を気にして少しずつ贈与していた方にとってまとめた資産を贈与できる本制度はメリットも多いかと思います。
これから家族を育む世代にとっては、家の購入という大きな買い物を後押ししてくれる嬉しい制度とも言えます。
このように私たちの生活に役立つ制度は、是非活用してほしいと思うのですが、そこには気を付けなくてはならない点も必ずあります。
贈与の時点だけでなく、その後の相続も考慮しなくてはいけません。
事前に対策をたて、マイナスの要素をクリアすることが重要です。
ご家族で相談し、分からないことや不安なことは専門家へ相談をしながら、是非活用して欲しいと思います。(執筆者:藤井 亜也)