いよいよ伊勢志摩サミットが迫ってきていますが、これを目処に発表される日本の景気対策が市場では注目されています。
この経済対策の中身を大きく左右する材料の1つに、5月18日の1-3月期の実質国内総生産(GDP)の速報値が挙げられていました。
この結果がようやく出たわけですが、その数字は市場予想を大きく上回る、なんとも意外なものになりました。
今回はこのときの相場を通して、よくあるクセのようなものをトレーダーの視点から見ていこうと思います。
目次
実質GDPを受けての日経平均株価の動き
5月18日に発表されたGDPは、前期比で+0.4%、年率換算すると+1.7%という結果でした。市場予想が前期比で+0.1%、年率換算すると+0.3%だった数字を見るとけっこうな強い結果です。
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このGDPの結果を受けて、CME日経平均先物は1万6,700円近くまでいったんは100円ほど上昇する動きを見せますが、この上昇が限界となると、一気に1万6,500円手前まで200円近く急反落する動きとなります。
そして、この下落の勢いが限界になると、今度は300円近くもの強い上昇を見せ1万6,800円にタッチしています。(この後、もう一度、強い下落が起こっていますが、これは別の要因が大きいので今回は省略します。)
上げて、下げて、また上げるという、なんとも激しい上下を短い時間に繰り返すという相場。この背景にはどういった市場心理が絡んでいたのでしょうか?
市場が期待していたのは悪い数字だった!
最初の上昇の反応は、GDPの結果を受けた素直なものなので特に説明は不要だと思います。指標結果が良かったので上昇したという、ごく当たり前の現象ですね。
問題なのは次の急反落なんですが、この背景には、市場が期待している日本の景気対策とGDPの間にあるねじれ関係がありました。
具体的に言うと、GDPが悪かったほうがより強い景気対策が打たれる可能性が高まるということです。GDPがあまり良すぎると、景気対策を打つ理由がなくなってしまいますからね。
そういう意味では、市場はGDPがむしろ悪い結果になることのほうを、期待していたのかもしれません。その市場の期待が裏切られてしまったことで、期待はずれの下げという展開につながってしまった形です。
指標の結果自体よりも、その指標に対して持っている市場の期待が優先されるということですね。
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「実質GDPは数字ほどは良くない結果」という解釈
次に問題になるのが、急反落した後に、今度はそれをさらに上回る大きな上昇を見せたところです。この動きの背景には、景気対策への期待感が消えなかったということがあります。
いったんはGDPの結果によってこの期待が小さくなって下げていたんですが、結局はその期待が消えきることはなかったということですね。
この期待が消えなかった理由は、いろいろな解説の仕方がされています。例えば、その理由の1つが「うるう年による影響」です。
今年はうるう年で2月がいつもより1日多かったので、その分だけGDPが増えたというんです。
1四半期が100日弱であることを考えると、たしかに1日の影響は無視できないというのは事実でしょう。
これを考慮に入れると、今回の結果は数字に見えるほどは良くないという結論になります。数字が良くないと解釈できるのであれば、期待が消えないことも理解ができますよね。
そして、消えなかった期待によって、再び強い上昇が起こったというわけです。
結局は市場が期待する方向へ動いていく
こういう理由付けを見ていると、分かったような分からないような、なんだか釈然としない気持ちになりませんか?
うるう年って言うけれど、その影響があることは指標発表前から分かっていたことで、市場予想だってそれを織り込んだう数字のはずです。
そして、その市場予想を大きく上回ったということは、市場が見込んでいたより日本経済はだいぶマシな状態だったということは間違いない事実のはず。
だとすれば、景気対策への道が遠のいたからもうダメだ、というシナリオになってもよさそうですよね。
ですが、こういう場合は大抵、そういうシナリオにはならないように思います。つまり、どんな結果が出ていたとしても、今回のケースでは景気対策に期待するという市場のシナリオは消えることはなかっただろうということです。
今回は、景気対策に対して市場が期待しているという大きな流れがありました。
こういう大きな流れがある場合は、たとえマイナス材料が出たとしても、何かと理由がつけられて無効化されてしまいがちです。逆にプラス材料が出たとすれば、それは強く材料視されて相場が動いていきます。
あらゆる材料は市場が解釈したいように解釈されてしまいやすいんです。
結局のところ、市場の期待の方向、大きな流れに相場は引っ張られていってしまうケースが多いんです。これはよくある相場のクセみたいなものなので、ぜひ意識してみてほしいと思います。
市場が期待している方向を意識しよう
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1つの経済指標の発表にすぎませんでしたが、今回はよくある相場のクセを見ることができたおもしろい相場だったと思います。
何か大きなイベントを節目にして、市場全体がそれに向けて期待を作りながら相場の方向感を作っていくという流れ。こういった市場の雰囲気を意識しながら相場を見ていると、新しい発見がいろいろ出てくるかもしれませんよ。(執筆者:貝田 凡太)