安倍晋三首相が来年4月予定の消費税率10%への引き上げを2019年10月まで延期する方針を示しました。
現時点では延期が決定したわけではありませんが、このニュースを聞いたとき、正直ビックリしたというのが素直な印象です。
上げるものと思っていましたし、経済はそれを前提で動き出していたからです。
これが正式に決定となるかどうかはわかりませんが、今回は増税延期が株価に与える影響について書いていきます。
目次
家庭への影響
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まず、増税延期と言っても、言い換えれば今の状況が続くということです。
そのため直接的な変化は特別に感じないかもしれませんが、増税した場合と比べての変化を書いていきます。
消費税が上がらないことで、一家庭あたり年間数万円以上の納税額上乗せがなくなることで、家計負担が実質的に減ります。
これが消費に回るか貯蓄に回るかで判断も分かれますが、家計にとっては増税はマイナスでしかありません。
株価と為替への影響
消費税増税後の株価と為替の推移について、過去3度の事例を取り上げてみます。
1989年 3%の消費税が導入
バブルの最終局面でしたが、消費税導入後、日経平均株価は大納会にかけてさらに上がっています。
1ドル130円程度でしたが、約1年で160円まで円安が進行しました。
1997年 5%に増税
こちらは1989年と違い右肩下がりの途中で起きた出来事ですが、導入直後は日経平均株価が数か月に渡り上昇しています。
120円程度だったドル円が、1年半後に150円近くまで円安となりました。
2014年4月 8%に増税
2014年3月末の日経平均株価は1万4,827円、その後2015年5月に2万円を超えましたが、現在は1万7,000円前後です。
2014年4月の為替は101~103円台でしたが、2015年には120円台になりました。
過去3度の事例を取り上げてみましたが、消費税が導入されたと決まっても株価が急に下落する要因とはなりませんでした。
むしろ、増税後は株価が上昇しています。
為替についても現在は110円台。この辺りは変動が日々ありますが、円安となりました。
まとめ
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過去の増税は3回とも株高、円安となりました。この理由は色々あるのですが、主に物価の影響が大きいです。
・ 半強制的に物価が上昇
・ 物価が上昇すると基本的には円安要因
(この点について詳しい理論は購買力平価説という理論があります。購買力平価説とは「国内インフレ率の上昇、あるいは外国インフレ率の相対的な低下は、自国通貨の減価をもたらす」という理論です。)
そして日経平均株価を構成する主力銘柄は輸出関連銘柄が多いため、必然的に株価も上昇というシナリオが見えてきます。
今回の増税延期により株価はマイナスの影響が出ると思われるかもしれませんが、そんなことはありません。
増税後のマイナス影響として、駆け込み需要の反動減がなくなるため、自動車や不動産など耐久消費財を扱う企業は業績の急激な落ち込みがなくなります。
増税は財政が健全化する一方、急激な景気悪化という怖い面もあります。
増税タイミングはすごく難しいのですが、個人的には、すごい決断をされたなと思いました。(執筆者:坂本 彰)