原則65歳から老齢基礎年金と、その上乗せとなる老齢厚生年金を受給するには、国民年金や厚生年金保険の保険料を納付した期間、保険料の納付の免除を受けた期間などを併せて、原則25年以上必要になります。
この原則25年は「受給資格期間」と呼ばれており、今後はこの受給資格期間が、原則10年に短縮される予定です。
ただ老齢基礎年金や老齢厚生年金の金額は、保険料の納付済期間や、免除期間などの月数を元に算出されます。
そのため受給資格期間が短縮されると、無年金の方は減りますが、低年金の方は増える可能性があるのです。
そのため受給資格期間の短縮と同時に、老齢基礎年金、障害基礎年金、遺族基礎年金を受給できる、一定の低所得者を対象に、年金の不足をカバーするため、月額5,000円程度の「年金生活者支援給付金」が支給される予定です。
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目次
再延期された「受給資格期間の短縮」と「年金生活者支援給付金」
このふたつの改正は、消費税率が8%から10%に引き上げされる、平成27年10月から実施される予定でした。
しかし消費税率の引き上げが、平成29年4月に延期されたため、これらの実施も延期されたのです。
また皆さんもご存知のように、消費税率の引き上げは、平成31年10月に再延期されたため、これらの実施も再延期になりました。
先日新聞を読んでいたら、受給資格期間の短縮により、年金を受給できる予定だった方が、市役所や年金事務所などに対して、苦情を寄せているという記事が掲載されておりました。
こういった方は国民年金の「任意加入制度」や「後納制度」を活用し、未納になっている期間の保険料を納付すれば、受給資格期間の短縮が実施される前に、年金を受給できるようになります。
また保険料の納付に加えて、次のように遡って免除を受ければ、より年金を受給しやすくなると思うのです。
遡って免除を受けられる期間は2年前までに延長へ
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国民年金の保険料の免除のうち、学生納付特例以外の全額免除、4分の3免除、半額免除、4分の1免除、納付猶予は、7月から翌年の6月までを、免除のサイクル(始期と終期)にしております。
どうして年度単位(4月から翌年の3月)ではないのかというと、この中のいずれの免除を受けられるかは、原則として前年の所得によって決まり、またすべての市区町村において、前年の所得の証明が可能になるのは、7月以降になるためです。
このように免除のサイクルは、7月から翌年の6月までになるので、例えば平成28年10月に免除申請をした場合、遡って免除を受けられるのは平成28年7月まででした。
しかし法改正が実施され、平成26年4月からは、遡って免除を受けられる期間が直近の7月までではなく、保険料の徴収権が時効により消滅していない2年前までに延長されたのです。
ただ、前の免除サイクルである平成27年7月から平成28年6月までの免除が受けられるかは平成26年中の所得によって判断されます。
そのため現在は無職で収入がなくても、その年に一定以上の収入があれば遡って「免除」を受けられない場合があります。
一部の免除は減額された保険料を納付する
国民年金の保険料の全額免除、4分の3免除、半額免除、4分の1免除、納付猶予のうち、全額免除と納付猶予については、保険料を納付しなくても「免除」を受けた月数は、受給資格期間に加えることができます。
しかし4分の3免除、半額免除、4分の1免除など、一部の免除については、平成28年度額で次のような金額になる、減額された保険料を納付しないと「免除」を受けた月数は受給資格期間に加えることができません。
・ 半額免除:8,130円
・ 4分の1免除:1万2,200円
つまり免除申請が認められ「国民年金保険料免除・納付猶予申請承認通知書」が送付されても、後日に送付される納付書でこの金額となる減額された保険料を納付しないと「未納」と変わりがないのです。
ところで平成28年7月以降は納付猶予の対象者が、従来の30歳未満から50歳未満に拡大されるのでより免除を受けやすくなります。
ただ納付猶予を受けた月数は受給資格期間に加えることができても、後で保険料を納付しない限り年金額には全く反映されませんので、できれば他の免除を受けた方が良いと思うのです。
なお納付猶予と同じように、減額された保険料を納付する必要のない全額免除は、後で保険料を納付しなくても保険料を全額納付した場合の2分の1(平成21年3月分までは3分の1)として、年金額に反映されます。
今回の記事のまとめ
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国民年金の免除のサイクルは上記のように、7月から翌年の6月までになっておりますので、現在は免除申請を行うか否かを決めるのに、ちょうど良い時期だと思います。
ねんきん定期便などを開いて、過去2年以内に「未納」と記載された期間がある方が、免除申請を行う場合は、ついでに前サイクルや前々サイクルの免除申請も一緒に行うのです。
そうなると前サイクルや、前々サイクル分の申請書類も提出する必要があり、多少は手続きが面倒になりますが、面倒だといって手続きを遅らせると「未納」を帳消しにするチャンスを失います。
また4分の3免除、半額免除、4分の1免除などの、一部の免除が認められた方は、減額された保険料を納付しないと「未納」と変わりがありませんので、この点には注意する必要があります。(執筆者:木村 公司)