来年度から介護離職への対策が進みそうですが、「介護をしていることを会社や上司に説明して直ぐに休ませてもらえるのか?」 期待と不安で心が揺れ動いている人は少なくないと思います。
「夫婦共稼ぎ世帯」は今や定番のライフスタイルですが、仕事を切り上げて介護をする時間を作ると、家計の収入が減りかねず介護を担うのも至難の業といえます。
仕事と介護を両立するためには制度ができたとしても、職場と家族の協力が必要不可欠なのです。今回は、介護がしやすい暮らし方について考えていきます。
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目次
親とは疎遠状態 住まい環境改善で家族関係をはぐくむ
就業規則は大幅に緩和され、職場の理解度は増す可能性はありますが、親と子の距離感を埋めていくのは意外と難しいものです。
親元から離れて一人暮らしが長いケースでは、気が付いた時には「他人行儀」になってしまっていたということも…。
離れて暮らすと仕方がないことなのかもしれません。疎遠状態の方は、まずは互いの暮らしが分かるぐらいの生活圏に居住することをご提案いたします。
別々のライフスタイルを歩んでいた「親世帯」と「子世帯」が互いに尊重するには、近づ離れずの距離感を保つのもひとつの方法です。
暮らす距離感を近づけるだけで安心感がうまれる
居住地が遠すぎると必然的に疎遠なる傾向が強く現れる場合があります。実は距離が無意識的に疎遠を招いてしまっているのです。
いろいろ調べていくと、親世代と子世代のプライバシーを確保するには「2.4㎞程度」離れて暮らすほうがちょうどよい距離感という方が多いことが分かりました。
国土交通省の調査でも、親子世帯が別々に暮らす近居の定義として「日常的に往来できる範囲に居住を目指すもの」とあります。
同居には抵抗感が強い方でも、居住場所を歩み寄ることは、それほどハードルが高い問題ではないように思います。親と子の程よい距離感は、心の安定感とリンクしています。
災害時や緊急時に双方の安否が確認できるのも「近居」のいいところです。安心感を得るには、お互いの住まいが離れ過ぎないことが大切なのです。
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徒歩30分以内の圏内が親子のメリットが大きい
介護と仕事を両立していくにも「親世帯と子世帯には適度な距離感」を持つことがポイントです。
あなたは介護離職と聞いてどんな光景を思い浮かべるでしょうか?
「毎日の食事や片付け」、「掃除・洗濯」、「着替え・トイレの介助」自分たちの手で何とかしていかなければならないと想像してしまうのではないでしょうか。
そんな想像していたあなたは大変です。もしかすると共倒れする可能性が高いかもしれません!
家賃の負担を抑えるために同居を決断するお子さんも多いのですが、自らすべての介護を引き受けていたのでは精神的にも金銭的にも破たんする恐れが高いといえるのです。
ご近所家族のいいところは必要以上に介護をしなくとも責められないことです。離れているからこその介護が続けられることができるともいえます。
最近のシルバー事情では、ご夫婦で同じ有料老人ホームに住んでいても、フロア別暮らされる方が多いと聞きます。
施設責任者の方にお話を聞くと、同じフロア内で生活すると互いに干渉しがちになり介護疲れの心配があるといいます。程よい距離感を保つことが「介護しやすい暮らしのあり方」のようです。
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最後に
徒歩30分圏内というのは、頻繁に往来するには面倒だと感じる距離感ですが、子世代にとっては共働きがしやすい環境ともいえるでしょう。
微妙な距離感があるからこそ、互いの干渉を抑えることにもなります。介護は干渉しないとできないと思われがちですか、家族がすべてを担うのは難しい時代です。
介護離職すれば介護には集中できますが、その後の生活を立て直すことは容易なことではありません。仮に同居していたとしても必要以上に手助けするのは止めたほうがいい。
トイレ介助やお風呂介助などの肉体労働は、介護のプロにすべてお任せするように決めてください。介護費用(平均300万円程度)については、親の預貯金や資産から払ってもらえるように話し合っておくことも重要です。
遺産について話し合うのは言い出しにくいものですが、介護費用については相談しておくことは不自然ではないでしよう。(執筆者:村井 一則)