住民税の税額や所得をもとに、福祉制度の給付金等が左右されるのですが、所得に関しては制度ごとに判定する所得が異なります。また世帯員の所得を合算して判定することもあります。
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目次
基準となる所得について
基準となる所得がいくつもありますので、区別できるように理解しておきましょう。
「合計所得金額」、「総所得金額」、「総所得金額等」の違い
所得税や住民税の所得を区分すると、下記の10種類あります。
・配当所得
・不動産所得
・事業所得
・給与所得
・退職所得
・山林所得
・譲渡所得
・一時所得
・雑所得
この10種類の所得を合算したものが「合計所得金額」になりますが、下記の所得に関しては2分の1をかけた数値を合算します。
・一時所得
ここから繰越控除(例えば過去3年分の上場株式等の譲渡損失)を控除した後の金額が「総所得金額等」になります。
なお「総所得金額等」と「総所得金額」は異なり、総所得金額は総合課税の所得のみを合計したものになります。山林所得・退職所得や、分離課税にあたる譲渡所得・配当所得・雑所得は含まれません。
また都民住宅の住居基準のように、総所得金額から総合課税の譲渡所得を除くような独自の算出基準を定めているところもあります。
所得控除後の所得で判定するものもの
さらに総所得金額から医療費控除・生命保険料控除・社会保険料控除・扶養控除などの所得控除を差し引いて、課税総所得が求まります。
所得税の場合は課税総所得をもとに総合課税の税率が決まり、住民税の場合は原則10%の税率をかけて、総合課税の税額が算出されます。
ただし「確定申告によって自分の受ける社会保障はどう変わってくるのか(1)」で「控除後所得」(これは所得税法等で定義された用語では無く便宜的に使用しています)としているもので判定する制度に関しては、「合計所得金額」か「総所得金額等」から所得控除を差し引くものが多いのです。
さらにどの所得控除を入れるかが制度毎に異なりますので下記にまとめました。
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※1 控除後所得の算出では控除されることはないが、後述のように扶養親族等の数に応じて、判定基準の所得が扶養控除相当額だけ大きくなります。
※2 正確には「社会保険料等相当額」とされている定額控除
その他の注意点
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国民健康保険料や公営住宅の入居基準のように、個々人の所得でなく世帯全員の所得を足し合わせて判定するものもあります。
また多くの所得制限の判定においては、扶養親族等の数もしくは家族数が多くなると、判定基準の所得が大きくなります。従って親族が税法上の扶養にあてはまるのかを確認し、当てはまる人は全員扶養親族として申告しておくことは重要になります。
有利に福祉制度を利用するために、確定申告の際に対策できることを、続く(3)~対策~で解説します。(執筆者:石谷 彰彦)