目次
裁判所で民間の良識を反映させる仕事、調停委員
ファイナンシャルプランナーの藤村紀美子さんは、「最近は、調停委員など法律関係の仕事が楽しくて、FPの仕事より、つい法律関係の仕事を優先させてしまいます」と、笑う。
調停委員とは、非常勤の国家公務員で、調停に民間の良識を反映させるため、社会生活上の豊富な知識や経験と専門的な知識を持つ人の中から選ばれる仕事。
藤村さんは、現在、東京簡易裁判所で調停委員と司法委員を、東京家庭裁判所で参与員をしている。

あなたが「お金の心地いい側面」を感じた時の話を聞かせて下さい!
借地の値上げに疑問を持ち、朝日カルチャー教室に
―法律は、大学から学ばれていたのですか?
大学では、文学部でドイツ文学を学びました。その後、結婚して子どもを産み、家を建てた土地が借地で。毎年、借地代を一方的に値上げされていたんです。
「値上げって、こんなに勝手にできるものなの?」と疑問に思って、朝日カルチャー教室の借地借家法入門に通うことにしました。
―それはおいくつの時に?
30歳前後、下の子が2歳くらいの時です。
菊本治男さんという有名な弁護士さんが2週間に1度教えて下さる講座でした。半年通ったのですが、「法律って、面白い。どうしても勉強したい!」という気持ちになり、中央大学の法学部の通信制に 学士入学しました。
3度の飯より法律を学ぶことが面白い
―専業主婦が法律を学ぶ?
法律は人間を扱う学問だから、とにかく面白くて。どんな趣味より法律が面白いという感じでした。
本格的に勉強を始めてみると、わからないことばかり。夜の勉強会に参加したり、スクーリングに通ったり。それがドキドキするほど嬉しかったですね。
―お子さんの世話はどなたが?
同じ敷地内に義母が住んでいましたし、母も協力してくれました。上の子は幼稚園にあがっていましたしね。
―学費の工面はどうされていたのですか?
通信制ですから、学費は1年間で3万円ほどだったと記憶しています。費用負担としては、「趣味でピアノを習うといったことよりも安い」と感じていました。

司法試験を目指し弁護士の予備校に
―法律の勉強は、「趣味」という位置づけだったのですか?
その後、司法試験を目指し、司法試験の予備校に通いました。予備校は年間の授業料が20万円~30万円、足掛け10年間で100万円~150万円 かかりましたが、足かけ10年通いました。
その間、子どもの中学受験があって2度中断。一度勉強を中断すると、取り戻すのが大変で。3歩進んで2歩下がるといったことを10年続けていたわけです。
でも、娘二人とも志望校に合格しましたから、それは、それで良かったと思っています。
―足かけ10年勉強。すごいですね・・。
当時は、法律の勉強をストップするのが、とにかくイヤでしたから。「趣味でもいいから、法律の勉強を続けていたい」と、思っていました。
でも、ある時、夫から「本当は、社会に出て働きたいのではないの?」と言われて、「社会に参加したい。趣味では、何だかつまらない」と、思い至りました。
―そこからは、どうされたんですか?
司法試験の勉強はどうしたら合格できるのか分からなくなり、次にもう少し易しい税理士 試験の勉強を5~6年しました。でも、同じ法律の勉強でも、税理士試験の勉強は私にとっては、面白くないものでした。
その後、FP試験の勉強をし、1年でCFPに合格。合格後、主人のアメリカ赴任で、約8年間カリフォルニアに滞在しました。
司法試験10年の勉強が無駄ではなかった
―「主婦」と「やりたいこと」の間で、気が遠くなるような時間を過ごされたんですね
でも、今、調停委員など法律関係の仕事を得て、手ごたえを感じています。常識を考慮しながら、法律を根拠にして世の中の揉め事を解決していくのは、すごく楽しいです。
問題が解決して、喜んでもらえるのが本当に嬉しい。
30代から始めた10年の司法試験の勉強が、30年以上経って、今、やりたいことに結びついています。お金もエネルギーもかけたことが、60代になって花開いた感じです。だから、今、すごく満足しています。
以上。(執筆者:楢戸 ひかる)