自己負担の引き上げを盛り込んだ介護保険法の改正案が、2017年5月26日の参院本会議において、自民党、公明党、日本維新の会などの賛成多数で可決され、成立しました。
これにより2018年8月から、介護保険の自己負担は3割に引き上げされます。
ただ3割に引き上げされるのは、
・ 夫婦世帯では年収が463万円以上
ある、「現役世代並み所得者」に限定される予定です。
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目次
介護保険の自己負担は、2段階を経て3段階へ
介護保険の自己負担はもともと、収入にかかわらず1割だったのですが、2015年8月から年金収入が280万円以上ある方は、2割に引き上げされました。
つまり2015年8月から2段階になり、また2018年8月からは3段階になる予定で、これを整理すると次の表のようになります。
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3割負担の対象になる方は、今後は政令で決められる
自己負担の引き上げに不安を感じる方は、ねんきん定期便などを見て、自分の年金額を調べてみるのが良いのですが、年金収入が280万円以上ある方は、少数派ではないかと思うのです。
ただ法改正が実施されたため、今後は3割負担の対象になる方を、政令(内閣が制定する命令)で決められるようになりました。
つまり国会での審議が必要ないので、3割負担の対象者を拡大するための手続きは、簡素化されたのです。
また介護保険の自己負担は、わずか3年で2段階から3段階に変わるという、かなりのハイペースだったので、3割負担の対象になる方は、意外と早く拡大されそうな気がします。
自己負担限度額を超えた部分は、高額療養費として払い戻しされる
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健康保険や国民健康保険などの医療保険の加入者が、病院や診療所の窓口で支払う医療費の自己負担は、現在は2~3割になっておりますが、特に入院の場合には、そんなに負担をする必要はありません。
その理由
1か月(1日から月末まで)に支払った自己負担が、一定額(自己負担限度額)を超えた場合には、その超えた部分が「高額療養費」として払い戻しされるからです。
例えば70歳未満で、年収が約370~770万円に該当する方の、1か月あたりの自己負担限度額は、
になります。
例えば医療費に100万円がかかった場合
が、1か月あたりの自己負担限度額となり、病院や診療所の窓口での支払額が、これを超えている時は、超えた部分が高額療養費として払い戻しされます。
医療保険の高額療養費と同様の制度である「高額介護サービス費」
介護保険にも「高額介護サービス費」という、医療保険の高額療養費と同じような制度があり、1か月(1日から月末まで)あたりの自己負担限度額は、次の表のようになっております。
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「一般」の区分に該当する方の自己負担限度額
現在は3万7,200円になっておりますが、赤字で記載されているように、2017年8月から4万4,400 円に引き上げされます。
ただ介護保険の自己負担が、1割に該当する方のみで構成される世帯については、3年間の時限措置として、44万6,400円(3万7,200円×12か月)という年間上限額が設定されるので、年間でみると当面は引き上げされません。
高額療養費や高額介護サービス費の、対象外になる費用がある
保険適用外の医療費、入院時の居住費や食費、差額ベッド代などは、高額療養費の対象外になります。
これと同じように高額介護サービス費でも、次のような費用は対象外になります。
・介護保険施設での居住費や食費など、介護保険の対象にならないサービスの利用者負担
・住宅改修費や福祉用具購入費の、1~3割の自己負担分
・要介護状態区分別の支給限度額を超えて、事業者などからサービスの提供を受けた場合の利用者負担
2年の時効期間が経過する前に、申請手続きをする必要がある
高額療養費として払い戻しを受けるには、保険者(例えば協会けんぽなら「全国健康保険協会」)に対する、申請が必要になります。
また「診療を受けた月の翌月1日から2年」という、時効期間が定められているので、この期間内に申請する必要があるのです。
これと同じように高額介護サービス費も、市区町村に対して申請する必要があります。
また高額介護サービス費も高額療養費と同じように、「介護サービスを利用した月の翌月1日から2年」という、時効期間が定められているので、この期間内に申請する必要があるのです。
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医療保険と介護保険を横断する「高額介護合算療養費」
このように医療保険の高額療養費と、介護保険の高額介護サービス費は、似たような制度でありながら、それぞれが担当する分野が決まっているため、棲み分けができております。
しかし医療保険の自己負担と、介護保険の自己負担を合算して、それが一定額を超えた場合に払い戻しされる、両者を横断するような制度があり、これは「高額介護合算療養費」と呼ばれております。
これも自己負担が軽減される、お得な制度ではないかと思うのですが、3種類の似たような制度の特徴を覚えておくのは、とても大変なことです。
そこで
ということだけを、頭の中に入れておき、制度の詳細については必要になった時に、改めて調べれば良いと思います。(執筆者:木村 公司)